「中央」──。
反魔物勢を大々的に掲げる、リンが住む国の隣の地方都市。
地方ではあるが、その歴史背景や流通量から付いた俗称。
その街の中央部に庁舎がある。
リンはそこで受付をしていた。
「──そう、幹事長。事前に書簡を送っているから、確認してくれ」
リンとアレクは、やけに豪華な待合室へと案内される。
「ねえ、リン」
「何だ?」
アレクは何かの呪符で抜けなくされた愛剣を持ちながら尋ねる。
「何かすごく嫌な予感がするよ」
「だろうな、お前さんにとっちゃあ見たくないものだらけだろうさ」
どういう事かはわからないが、
あまり気持ちの良い物ではなさそうだとアレクは感じる。
しばらく待った頃、秘書に入室するよう促され、執務室の中へ入った。
「・・っぐ!」
強烈な吐き気を覚えるアレク。
そこには、同族の痴態が収められた絵画や立像、
反魔物精神溢れる悪趣味な収集品が所狭しと並んでいた。
「久し振りだなリン!元気そうで何よりだ!」
声の方向を向くと、そこには机に半分ほど埋まった
これまた悪趣味ないでたちの醜男が下品な笑いをあげている。
「・・また太ったな、ローファー幹事長」
ローファーと呼ばれた男はぶひゃぶひゃと笑うと、
引き出しの中から葉巻を取り出し火をつけた。
ぶはぁ、と紫煙を撒きながらリンに問いかける。
「・・それで?今回の取引は何だ?」
「国境沿いの水害は聞いたか?村が幾つか沈んで、街も半分流された」
おう、とローファー。
「治水工事を好条件で引き受けようかと思ってな、
わざわざ書簡を送ってみた訳だ」
「おいおい、何で水害を聞いた日よりも前に水害の書簡が届くんだ?
・・またお前は何か企んでいるな?」
水害の報告をした早馬よりも、
それに対する工事の話があがるなんて事はまず考えにくい。
前もって水害が起きることを予測しない限り、不可能に近い。
「やっぱりばれたか」
サラリ軽くと白状するリン、一層大きな声で笑うローファー。
「リン・・私、ここ・・気持ち悪い・・」
真っ青な顔でリンに訴えるアレク。
ローファーはやっとアレクの存在に気付く。
「どうしたんだリン、その娘はお前のコレか?」
「どうしてそうなる?──彼女は俺の護衛役だ。アレクシスという。
・・アレク、挨拶くらいは出来るか?」
リンに促されて、何とか表面だけでも取り繕うアレク。
「アレクシス・バジリスと申します」
「そうかい・・ん?アレクちゃんは魔物娘かい!?」
首にかけられたネックレスを差し、ローファーが問う。
「ローファー、いくらお前の注文でも彼女は商品にはできんぞ」
「リン!?」
アレクがリンに向き直る。それはどういうつもりなのだ、と。
「まぁまぁアレクちゃん、落ち着けよ」
「・・ちゃん付けは止めて頂けないか、ローファー幹事長?」
精一杯の不快感をあらわにしたアレク。しかしローファーは動じない。
「私ゃね、魔物娘が大好きなのさ。
特に性によがり狂った魔物娘はね。
君もそういうのがお好みかい、アレクちゃん?」
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