「私、そんな物を扱っていたんだ・・」
「勉強不足と知識不足、それと交渉下手だからな。精進しとけ」
改めてまじまじと茶を見つめるアレク。
三杯目を飲み干したリンが、窓の木戸を閉め扉に錠を施す。
「よしアレク、もう解いてもいいぞ」
アレクがネックレスを外すと、途端にいつものリザードマンの姿に戻る。
「人間てさ、尻尾が無いのによくバランス取れるよね?」
「二本の足で安定させる術を覚えているからな。
その代わりに瞬発力を捨てたらしいがな」
へぇ、と納得するアレク。
「嘘だけど」と付け足すリン。
「また私をからかったな!」
「何でもかんでも鵜呑みにするからだ・・って、枕を投げるな枕を!」
リンの抗議も空しく、顔面に枕が直撃する。
「リンの馬鹿ッ!もう知らない!」
「もがもが・・」
アレクが燭台のランプをふうと消すと、部屋の中は文字通り暗闇になる。
「明日は早いの?」
「もがもがもが」
ああもう、力いっぱい投げたからなとぼやきながら
見事にめり込んだ枕を引き剥がす。
「ぶはっ、殺す気か?」
闇に目が慣れていないリンは明後日の方向に向かって叫ぶ。
「リン、こっち」
アレクがリンの顔を引き寄せ、唇を重ね・・
ご っ つ ん
鈍い音と、額を抱えて悶えるアレク。
同じく額から煙を出しながら、リンが吐き捨てた。
「そういうのはな、冗談でもするなや」
「リン・・空気読めなさ過ぎ」
アレクはリンに好意を抱いている。
それはリンも知っている。
こんな場面でもなければ、大胆になんてなれないと
アレクは一世一代の大博打に出たのだが──。
「おふざけはここまでだ、寝とこうぜ」
さっさと布団に潜ってしまったリン。
一つしかないベッドとはいえ、クイーンサイズはある。
その端に丸まってリンが寝ているので
残りは充分に空きがある。
・・しかし、ベッドが一つしかないのだから
やっぱり、あんな事やこんな事もしたいわけで──
アレクの頭の中身がぼんっ、と音を立てて湯気が出る。
──その晩、とうとうアレクは一睡もできなかった。
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