「何を言い出すかと思えば、土砂?
土くれでゴーレムでも作ろうというのか?
それに喧嘩とは穏やかでないな?」
既に怒りを通り越しているドロシー。
「土くれでゴーレムですか?
・・それも面白いかと思いますが、それでは卿が面白くない。
──違いますか?」
ふん、と鼻で笑うドロシーではあるが、
過去幾度と無く付き合ってきたリンの商売で
得はしても損はしていない。
何より、「愉快痛快」というオマケつきだ。
「・・いくらだ?」
待ってましたといわんばかりのリン。
「金貨1枚」
これにはたまらず大爆笑するドロシー。
大見得を切っておいて金貨1枚分の土砂と喧嘩とはいかがなものか。
「リン、お前はいつも私を楽しませてくれるがな、
今回は何をするつもりなんだ?」
「卿が資金を提供して土砂を集めた・・この名目が必要です」
「よかろう、私はお前に資金を提供し、土砂を集めさせた。
・・これで良いな?」
「御意」
北の山地、ミトライユ。
その中腹にリンがいた。
「と、いう訳でここからこれだけ切り出して欲しい」
「へぇ、ヴァンパイアのお嬢様は何をしたいんだろうね?」
ミノタウロスのクラレンスは頭に疑問符を浮かべながら首をかしげる。
「あたしにしてみりゃあ、いい運動なんだけどさ」
「・・クレア、お前さんの脳筋思考にはついていけんよ」
クレアはため息交じりのリンから図面を貰うと、
脇に置いていた大きなツルハシを肩に担ぐ。
「で、期日はいつまで?」
「週末までにこの区間が完成すればいい」
「あいよッ」
鼻歌交じりに出て行くクレアの背中を見送りながら、
リンも引き払う準備に取り掛かる。
週末。ひどい雨の中、ドロシーは自室で書類整理をしていた。
「羊皮紙が湿気て気持ち悪いな・・止むを得ん、火を入れるか」
暖炉の傍まで来て、ふと外を見る。
気のせいかと思い視線を暖炉に戻すも、
今見た景色が今朝見たそれと違う事に気付く。
雨や時間のせいではない。もっと根本的な、
本来ある筈の物がそこに無い。
「──リンめ、やってくれる」
あの忌々しい川が、そっくり消えていた。
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