──裏通り、リンの店。
「リン、私にはライザという娘が死んだようには思えない」
アレクがリンに問い詰める。
リンはカウンターの席で新聞を読みながら
「お前も見ただろ、あの火事。あれで助かるのは引田天功くらいだ」
「ヒキダ・・?何?」
またリンの不思議語録が出たとアレク。
しかし、お構い無しに話を続けるリン。
「大型の宿屋が納屋も倉庫も含め全焼、
隣家の被害が少なかったのが幸いなこの火事で
どうして宿泊客が逃げ延びられるよ?」
アルシ亭の火事は凄まじいものだったと、野次馬達は口を揃える。
助かったのは出口付近にいた受付嬢とロビーにいた数名の客、
それから2階の窓から飛び降りた客。
焼死体も上がらないほどまっさらに焼け落ちたその跡地には、
文字通り雑草一つ残っていない。
「原因は客の寝タバコか何からしいな」
「寝タバコってそんなに危ないの?」
煙草をよく知らないアレク。リンは渋い顔をする。
「魔法使いがファイヤーボール生成したまま眠ってみろ。
・・どうなるよ?」
あまりにも単純すぎる例え話にアレクの目が点になってしまう。
「・・そういうもの?」
「そういうもの、だ」
他にも色々な憶測が飛び交っているが、
概ね不審火か宿泊客の火の不始末で片が付いてしまうだろう。
この土地にだって、反魔物勢がいるのだから。
「ところでアレク」
不意によばれたアレクは驚き、リンの方を向くので精一杯だった。
「お前さん、喧嘩は得意か?」
「え?」
「喧嘩だよ、喧嘩」
徒手空拳という意味なら故郷を出る時に一通りは学んだが、
どうやら意味合いが少し違うようだ。
「突然の殴り合いとか程度なら、そこらの男には負けないぞ」
リザードマンとしての戦闘力なら、掛け値無しに優秀な戦力だ。
しかしリンは乾いた笑いをしながら続ける。
「目の前の相手をぶちのめすだけが喧嘩じゃないよな。
そいつを操っている奴、それでオイシイ思いをしている奴。
そこまでぶちのめして、喧嘩だろ」
「全員タコ殴りにすればいいのか?どこにいるんだ?」
キラキラと目を輝かせるアレク。こいつはアブない。
「これから隣国に喧嘩を売ろうと──
ん、違うな、喧嘩を買おうと思ってな」
リンの考えていることはわからないよと、アレクがぼやく。
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