小鬼と色気

「・・お前ねぇ」
「リン・・駄目?」
頬を染めながら上目遣いでリンを見る。
リンがこのテに引っかからないと頭で判っていても、
魔物の本能は言うことをきかない。
ライザから見て、リンが好みのタイプというのもある。
「ライザ・・お前ねぇ」
言いかけるリンの唇に、ライザの唇が重なる・・瞬間。

「やめとけっつの」
無慈悲に膝蹴りでライザの顎を下から叩き上げる。
悶どりうってのたうち回るライザ。とどめの冷水。
「ちょっと商売がしくじったくらいで体使ってんじゃねぇよ、
体を使っていいのはそれを本職にする連中だけで充分だろうが」
もう一回冷水をぶっ掛ける。
その冷たさと痛みに震えながら、ライザは泣く。

「うぅう、うう・・」
「お前さんの商人としてのプライドはどうした?
意地は?矜持は?全部積荷と一緒に燃え尽きたか?」
人が変わったように冷徹な態度のリン。
「でも・・この先、どうしたらいいのか・・」
「金か?モノか?信用か?
金が無いなら働けよ。モノが無いなら作れよ。
信用が無いなら立て直せよ。
行商やってんだったら、新天地でリセットすれば良いだけだろうが?」

もちろん、それがどういうことかリンだってわかりきっている。
金も物も一番大事な信用も無い行商人の第一歩が
どれだけ大変なものか。
「ライザ、お前さんは俺にいつも啖呵を切っていたよな。
『商人が損をした時は勉強代だ』ってな・・?
いい勉強代だと思わないか?」

「だけど、それじゃあ・・高すぎるよォ・・」
涙なのか鼻水なのかわからないほど
ぐちゃぐちゃになった顔で言い返すライザ。
「本当に、死ぬつもりで誘ったけど・・駄目だったし」
「ほぉ、死んだつもりか」
待っていましたといわんばかりのリン。

「じゃあお前さんはさっきの火事で死んだ。
で、今のお前さんは新しいゴブリンのライザだ・・そうだろ?」
あまりにも無茶苦茶な理論を振りかざすリンに、ライザが言い返す。
「何それ・・ひどすぎ」
「お前さんのその面よりかマシだ」
水浸しになった床を拭きながら、リンは追い討ちをかける。
「もう一回体を暖め直してこい、今度は色仕掛けはすんなよ?」

そうするよ、と言ったライザは濡れた服のまま風呂場へと行く。
「やれやれ、これだから女は」
新しく茶を淹れ直し、ライザ用に別の寝巻きを見繕う。
「流行の服は、お嫌いですか?・・ってな」
10/07/01 03:42更新 / 市川 真夜

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