「──スライム種族が着込む時は四肢を飛び道具にする事も可能であり、
その威力は近接格闘で充分な脅威となり得る・・と」
鼻に詰め物をしたリンが報告書を纏める。
仮に木偶人形に憑依する様式のアンデッド種族では、
到底出来ない機構だろう。
「ワイヤーか何かで回収出来るようにしたら、その後も不便にならないな」
「・・私としてはそういう想定外の使い方は控えて欲しいのだけど?
でも、どうせなら金属で手首まで保護したいわ。でも値段が・・」
手直しが終わったと言うヘレネも交えての協議となっていた。
いつの世も、技術屋と商人が絡むと危険な物しか生まれない。
翌日、三名はクイーン・スライムの洞窟へ納品に赴き、
見事大口の発注を取り付けた。
「スライムが固形の体を手に入れるって、夢だったのよ」
とはクイーンスライムのエレノアのコメントである。
完成した木偶人形は綺麗なドレスを纏っており、
一見それが人形とスライムであると見分けるのが困難になる程だ。
体を手に入れたエレノアが立ち上がる。
ぎこちないかなと思うのもつかの間、その場で華麗にステップを刻む。
「きゃあ!見て見て!こんなに飛び跳ねるのが素敵なことなんて!」
どうやらご満足いただけたようで、何よりだ。
・・
最近、ある洞窟の難度が劇的に上がったと聞く。
安易な気持ちで侵入した冒険者達が、
まず間違いなく顔面に拳が埋まり
気絶した所を「お持ち帰り」されるという噂だ。
「あそこはスライム系しかいなかったはずだろう?」
「いや・・どうやら強力な助っ人がいるって話だぜ・・」
「助っ人を呼ぶ位大きなヤマがあるって事か・・!」
「馬ッ鹿!声がデケぇ・・」
腕に覚えのある冒険者達といえど一撃か──
未完成ではあっても、自分も喰らったあの一発は確かに
一撃必殺の名に相応しい。
エレノアからはかなりの報酬を貰ったし、
木偶人形の整備保全はヘレネが請け負った。
スライム達は旦那が出来る。
産めよ増やせよ、栄えよ。
──世は事も無し。
また一人祝杯にと、リンは静かに茶をすする。
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