どこまでも青く、深く広がる雲ひとつ無い空。
風になびく草原の間を縫うように整地された、簡素な道路。
時々聞こえてくる小鳥の囀りと、草原を撫でる風のおとくらいしかしないのどかな場所である。
ピクニックやお昼寝には絶好であるだろう草原に、
今日は似つかわしく無い逃走劇が繰り広げられているのだった。
「はぁ…はぁ…ッ!…くっそ、なんで、どうしてこんな事にッ!?」
「うおらあああぁぁああああッ!待ちやがれメインディッシュウウウウウウッ!」
一部の旅人や行商等の荷物を運ぶ荷馬車くらいしか通らない簡素な道路を、
一人の銀髪の少年と、運動では無く発情によって鼻息を荒く、赤ら顔になった亜麻色の長髪のミノタウロスが、派手な土煙を巻き起こしながら駆け抜けていく。
発情したミノタロウロスは、大きな蹄や元々の身体能力もあるだろうが、
極限まで姿勢を低くし少年を追う姿は鉄砲玉のようにも見える速さである。
しかし一方の少年も、黒衣の旅装で様々な装備を身につけているのにもかかわらず、
地面スレスレまで体を倒して風の如く疾走している。
事の始まりは非常に簡単かつ単純な事であった。
それは数分前、道路の傍の草原で少年が鼻歌を歌いながら歩いているときであった。
「今日は昼頃に天気が悪くなるかと思ったけれど、風の流れが変わったお陰で雨雲が流れて助かった。この調子なら夕方頃には街に着けるかな…?」
少年の名はシェイラファ。
出生云々は全く明らかになっていないが、自称傭兵の我流の魔術や剣術を扱う魔剣士である。
立ち寄った街や国で、行商隊の護衛、魔物の討伐の依頼等を少しづつこなすことで地道に路銀を稼いで来たため、自分の腕にはそれなりの自信を持っている。
oO(ただ夕方頃は宿が無くなりやすいんだよね。それに着いたら着いたで出来るだけ早く何か依頼を受けないと、路銀を食いつぶしかねない…)
若干お人よしな所がある彼は、この前立ち寄った街で浮浪者に金を恵んだら、
それに食いついて同じように金を求める他の浮浪者に、金をあらかたくれてしまったのだ。
おかげで今は路銀が悲しい事になっている。少し彼は切羽詰まっていた。
旅人にとって金は本当に命の次に大事な物である、それに思考を奪われていた少年は気付かなかった、自分の進路に倒れていた、裸の男に。
「…まぁ、向こうに着けばどうにかnうおわぁッ!?」
目の前に裸で倒れていた男に躓いた少年はバランスを崩し、大きく前のめりに転んでしまう。
鈍った思考に突然の事態に少年の反応は追いつかず、草原に顔面を叩きつける事になるはずだった。…が、顔面の落下地点は草には似つかわしく無い、肉の上であった。
「…あれ、痛くない…?」
咄嗟に目を瞑ってしまった少年が感じた肉の感触。
大きくむちむちした柔らかい、かといって手応えが無いわけでもない絶妙なバランスを誇る中々よろしい物である。
少し匂いを嗅いでみると、日の光をたっぷり吸った草の匂いでは無く、
いかにも生き物らしい獣臭い匂いを感じ取った。
「…なんだ、コレ?」
少年がそう呟き、両手で自身の体を起こしてみると、
そこに寝転がっていたのは裸のミノタウロスの女であった。
亜麻色のボサボサの頭髪を持つ頭部から雄々しく生える2本の角、そして牛耳。赤胴色の肌に筋肉で引き締まった身体に似つかわしくない丸出しの乳、大きな蹄を持つ牛の下半身に尻尾。
数多に存在する魔物娘の中でも凶暴な種に入る危険な魔物であった。
「…これ、ミノタウロスッ!?まさかこんな所に出るだなんて…じゃあ、今僕が躓いたのは…?」
いくら男性の精を食らう魔物娘とて、何時でも裸な訳ではない。
彼女たちが裸になるのは主に『食事』の時である。
魔物娘にとって激しく身体を使う食事と言えば、性行為に他ならない。
そして今此処にいるミノタウロスが裸という事は、男性を襲ったということなのだ。
少年が恐る恐る躓いた足元を見ると、真っ裸の華奢な体つきの男が横たわっている。傍にズタズタにされた衣服が転がっていることからミノタウロスに襲われたのは明白、若干白目を向いて時折痙攣する男の姿は凄まじい憐みを感じさせる。
ミノタウロスへ振り返ると、獣毛に覆われた股間からは白濁した液体が漏れだしている。彼女が目を覚ませば次は少年の番だろう。
「…き、気付かれないようにしないとまずい…干物にされてたまるか…!」
一応娼館で女を抱いた経験はあるものの、こんな野原で襲われたのではこれから旅を続けられるかも怪しい。気付かれないように立ち上がろうとしたその矢先であった。
「…ッ…ん…あ…」
「…こんなのって、アリ…?」
女性のような、ほんの少しの甘さが入った声と共に、
眠っていたハズのミノタウロスの身体がピクンと脈動し
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録