再会

ギギギギィ

俺を閉じ込める重い鉄の扉が開く音がした。ああ開かないでくれ。入ってこないでくれ。
それは最早俺を閉じ込める物ではなく、地獄の到来を告げる警鐘となっていた。
後ろから悪魔が近づいてくる。きっとまた気色悪い満面の笑みを浮かべているのだろう。
そいつは頑強な鎖に繋がれた俺の腕を掴み、そのまま注射針を突き刺した。

自分の中に何かが入ってくる。それは俺の体の中を甘い感覚と共に駆けずり回る。体に触れる空気すら快感だ。それらに耐えられず、体が快楽に震える。
そして脳に直接語りかけてくる。とても甘く、心地いい言葉で。俺を堕とそうと。

ここで身を任せたら、どれほど気持ちがいいのだろう。どれほど楽になれるだろう。

しかし俺は耐え続ける。脳に響く声に耳を塞ぐ。身体中を襲う快感に歯をくいしばって抗う。堕ちてはいけない。堕ちたら奴等の思うツボだ。

あらゆるモノを失った自分の中で、絶対にこの場だけは譲れない。奴等の思い通りには決してさせない。

そんな俺を掴み上げ、汚れた悪魔は笑いながら俺に赤黒く腫れ滾った獣慾を突き立てた。

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カツン カツン

一人の男が、もう一人の男に付いて暗い少し錆び付いた階段を降りていた。
先を進む男は錆び付いた階段とは場違いに、それなりに小綺麗で整った装いをしていた。だが後続の男は、整った服装だけでなく、端正な顔立ちと漆のような黒い艶のある髪が目立ち、何処と無く高貴な印象を与える雰囲気を醸し出しており、それ以上に場違いだった。
二人が向かう階下からは甘い香りが漂い、嬌声が響いて来ている。
階段を降りると、そこには広い廊下を挟んで牢屋が両側にズラリと並ぶ部屋があった。
牢屋の中には、様々な少女が閉じ込められていた。
泣いているもの、牢屋の隅で体を丸め俯いているもの、こちらを見て声をかけてくるもの、全く無関心に虚空を見つめているもの。
しかし、その全員が、とても魅力的で可愛らしい姿をしているのだった。

「プレフ様。どうぞお選び下さい。必ずや貴方様のお気に召される"品"がございますでしょう。」

ここまで案内をして来た方の男が恭しく告げる。

プレフと呼ばれた男は、牢屋の中の少女を端から足早に見始めた。
しかし、部屋を一周したところで彼は何かを考えている様子で、更にもう一度見て回った。
その後も何度か見て回った後、彼は案内の男に目的の"品"は無かった事を告げた。
「左様でございますか。」
と、二人の男が踵を返し階段を登ろうとした時、

「ぁぁぁあ…!!」

廊下の突き当たり、鉄の扉の奥のさらに奥から苦痛の叫びが響いて来た。
「今の声は?」
「…大変申し訳ございません。その、只今"変換"中の奴隷がおりまして。内の職員の方には強く言っておきます。」
「そこに連れて行ってくれ」
「…は?」
「その場所に私を連れて行ってはくれないか」


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とある教団国家の貴族の一つ "だった" プレフ家の若年主人「プレフ=レスク」は奴隷収容取引所に来ていた。

ここは名目上は少女の奴隷商売をしている施設であったが、実はそこにいる少女達は元は少年だった。

"強制アルプ化"

それは男性がインキュバス化の際に受ける魔力を、サキュバスの魔力と数種類の魔力を混ぜ合わせた特殊な魔力と置き換えることで、インキュバス化のベクトルを変更し代わりにアルプ化を引き起こすという技術だった。
魔物娘との戦闘では、必ず彼女らから発せられる魔力を少なからず受ける。それは成人男性にとっては微量なもので、魔物化を引き起こすほどの量が蓄積される前ならば、教団の適切な処置によって取り除く事もできる。
しかし、若くして戦場に赴ける程の稀有な戦闘の才能を持った少年兵達は、魔力に対する抵抗が成熟しておらず、その微量な魔力でも遠征などで教団の処置を受けないでいると、たった一週間ほどでインキュバス化を引き起こしてしまう。
その事に教団が気付くまでに、多くの少年兵がインキュバスと化し、共に戦うべき教団の仲間から追われる事となった。
インキュバスと化した男性は教団にとっては殺すべき敵であった。
魔物と戦っていた元少年兵達は魔物側に付くことも出来ず、行き場を失った。
それに目を付けたのが奴隷商人たちだった。
彼らは元少年兵達に、「人間に戻れる」という甘言を囁く事によって、多くの元少年兵を騙し、捕らえ、強制アルプ化を施し、扱いやすいアルプの少女となった元少年兵達を親魔物派の国の顧客に売り捌いた。
元男の魔物、アルプを求める顧客は多かった。

プレフ=レスクはそんな強制アルプ化奴隷取引所に、ある少年兵を探しに来ていた。強制アルプ化を施す取
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