ウサギとカメ
昔々、ある草原にワーラビット達が住む集落がありました。そして、その集落では海和尚という種族の子供が1人、ワーラビットに混ざって暮らしていました。
海和尚は本来、ジパングという遠い国の海で暮らしている魔物娘なのですが、その海和尚は幼い頃に両親とはぐれ、どういうわけか故郷から遠く離れたこの国にある草原の近くを流れる川に迷い込んでいたのです。
ワーラビットは子供の海和尚を自分達の種族と同じように育て、特にこの海和尚より少し年上のあるワーラビットの子供は、海和尚を自分の妹のようにかわいがりました。
しかし、ワーラビットのお姉さんは、夫となる男性を求めて野山や人里を駆け回る年齢になると、この妹分の事が心配になってきました。
大きな甲羅を背負った海和尚は、陸地を速く走る事ができません。それでも頑張って男の人を捕まえようとする気概を見せてくれればとお姉さんは考えるのですが、海和尚は魅力的な男の人を見かけても、ワーラビットとは違ってその目には飢えた獣の眼差しが宿る様子が無いのです。
ある日、お姉さんは海和尚に発破をかけるために、この妹分に勝負を提案しました。
「これからどっちが先に男の人を捕まえるか競争しよう。夫にしろとまでは言わない。取り押さえるだけで充分だ」
そう言うが早いか、ワーラビットのお姉さんは1番近い人里に向かって走り出しました。海和尚もがんばって後ろを付いていこうとしますが、その差はどんどん開き、ワーラビットの後姿が見えなくなると、近くの草むらに座り込んでしまいました。
「私がお姉ちゃんに足の速さで勝てるわけないのに。足が速いのってそんなに偉いの? 私はそんなに焦って男の人を探すより、原っぱでゆっくり甲羅干ししていたいよ」
海和尚は仰向けに寝転がると、そのまま眠りこけてしまいました。本来亀の甲羅干しはうつ伏せで行うものですが、ワーラビットに育てられたこの海和尚はそれをよく理解しておらず、誤って仰向けで甲羅干しを行う癖があるのです。重い甲羅のせいで1度倒れると起き上がるのが難しく、股を隠すような物は身に付けていないにも関わらず、大胆にも脚を大きく広げ、胸を隠す前掛けも風にはためいてその下の胸がちらちらと見える無防備な姿勢です。それどころか、自分がここで無防備に寝ているぞと周囲に知らせるような大きないびきまでかき始めました。
夕方。ワーラビットのお姉さんはぶつぶつと文句を言いながら戻ってきました。男の人を1人も捕まえる事ができなかったからです。
お姉さんが向かった場所では、だいぶ前からすぐ近くにワーラビットの集落があるため、男性達もワーラビットの習性をよく知っていました。そのためお姉さんが友好的な態度で近づいていっても、みんな一目散に逃げだしてしまうのです。
しかし、お姉さんにとって自分が男性を捕まえる事は、今回の主目的ではありません。それ以上に、海和尚が付いてきてくれなかった事はお姉さんをよりがっかりさせました。
最初から、本当に競争するつもりなんて無かったのです。時間がかかってでも海和尚が人里までちゃんと来てくれたなら、男の人を捕まえるコツを教えたり、なんだったら自分もその手伝いをしてあげようとワーラビットのお姉さんは考えていました。
「まさかあの娘があんなに腑抜けだったなんて。こんな調子じゃ、いつまでたっても夫を捕まえる事なんてできやしないぞ」
その時、ワーラビットのお姉さんは道の側にある草むらが何やら騒がしい事に気づきました。
「俺が悪かった。謝る。だから頼む、離してくれ!」
「やーだー。ヌくのはいいけど抜いちゃやー」
なんと、仰向けに寝転がった海和尚が屈強そうな男の人をその脚でしっかりと捕まえていたのです。
実はワーラビットのお姉さんが戻ってくる少し前、海和尚が眠っている近くの道を1人の猟師が通りかかりました。大きないびきに気づいてその方向へと足を進めた猟師は、大胆にもこちらを誘惑するような格好で眠る海和尚の姿に惹かれ、気が付くとズボンを脱いで彼女に覆いかぶさっていたのです。しかしその時、海和尚が目を覚ましました。猟師は慌てて腰を引こうとしますが、おマンコからおちんちんが完全に抜けて行く感触を本能的に嫌がった海和尚は、寝ぼけ眼のまま脚で猟師の腰をがっちり捕まえたのでした。
しかも猟師の周りには、海和尚の優しい性格を知る草原や川の魔物娘や大人のワーラビット達がいつの間にか集まり、「逃げるな卑怯者!」「襲うんだったら責任取って結婚しろ!」等と大声でヤジを飛ばす始末で、とても逃げられる状況ではありません。
こうして、海和尚はワーラビットのお姉さんが提案した勝負に鮮やかに勝利し、それどころか夫を得る事ができたのでした。
・編者あとがき
このお話は「他の種族の者を自分
[3]
次へ
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想