昔々、ある所に奥さんも子供もいない粉ひき屋の男がおりました。この粉ひき屋は3人の若い男達を雇っていたのですが、ある時その3人に言いました。
「私もだいぶ年だし、粉ひき屋の仕事もきつくなってきた。そろそろお前たちの誰かにこの水車小屋を引き継がせようと思う。これから3人で旅に出て、それぞれ1頭ずつ馬を連れて帰って来なさい。そのうち最も立派な馬を連れて帰ってきた奴に水車小屋を任せる事にするよ」
そんなわけで3人は旅に出る事になりましたが、そのうち年上の2人は少しでも自分が選ばれる可能性を増やしたいと考え、年下のハンスをなんとか出し抜いて置き去りにしようと企みます。彼らがとある山の中にある洞窟に差し掛かった時、いちばん年上の若者はハンスに言いました。
「まだ夕方だが、暗くなってから山の中をむやみに歩き回るのは危ない。今日はここで野宿して、3人が交代で周囲を見張る事にしよう」
その言葉を信じたハンスは洞窟の中で眠ってしまい、あとの2人の若者は彼を置き去りにしてどこかへと立ち去ってしまいました。
翌朝、ようやく騙されたことに気付いたハンスは途方に暮れました。
「こんな所で一人ぼっちで置き去りにされて、どうやって馬を手に入れろというんだ」
そしてハンスが森の中をさ迷い歩いていると、ぶち模様のあるケット・シーが彼の前に現れ、こう告げました。
「私がおまえの願いを叶(かニャ)えてやるニャ」
ハンスは呆れたように言います。
「俺が欲しい物が何かも知らないくせに」
「いい馬が欲しいんでしょ、ハンス」
驚きに目を見開いたハンスに、ケット・シーは続けて言いました。
「その代わり、おまえには私の召使いとして働く栄誉を与えよう」
(どうせ他に行く当てがあるわけでもなし、この猫の言う事が本当か試してみるのもいいかもしれないな)
そう思ったハンスはケット・シーに付いていく事にしました。
ハンスがぶち猫のケット・シーの後についていくと、森の中に立派なお城があり、このぶち猫によく似たケット・シーとその夫らしき男性がいました。
「お父様お母様。今日からこいつを私専用の召使いにするニャ」
ぶち猫のケット・シーのお嬢様は、そう言ってハンスを自分の両親に紹介します。すると、父親は涙ぐみながら言いました。
「娘よ。ついにこの日が来たんだなあ」
そして母親のケット・シーは尻尾を立てて嬉しそうに言います。
「今日はお祝いね。盛大に宴を開きましょう」
(たかだか召使い1人雇うぐらいで大げさだなあ)
ハンスが不思議そうに見守る中、お城の大広間では豪勢な料理が並べられ、ワーキャットの音楽隊がチェロやバイオリンにトランペットを演奏していきます。
食事が終わると、今度は舞踏会が開かれました。ケット・シーやワーキャットだけでなくジパングに住むネコマタや不思議の国に住むチェシャ猫までもが、音楽隊の奏でる曲に合わせて夫とダンスを踊ります。それは人間が躍るダンスとは大きくかけ離れていました。
猫の魔物娘の夫たちがそれぞれに猫じゃらしを手にして立ち、妻の頭の上で振ります。猫の魔物娘達はそれを追いかけてぴょんぴょんと飛び跳ね、気持ちが昂ってくると顔を興奮で真っ赤にしながら身を乗り出し、身体を夫に擦りつけていきます。そして更に興奮が高まってくると、夫を押し倒してその場で交尾を始めるのです。
「なんだ、これ」
ハンスは人間の常識とはかけ離れた目の前の光景に呆然としながらも、刺激的な光景に顔を真っ赤にし、ズボンを盛り上がらせています。そんなハンスに対し、ケット・シーのお嬢様は平然とした様子で言いました。
「ふぁー。眠くなってきたニャ。ハンス、私は寝るから着替えを手伝うニャ」
それから、ハンスは何人かのワーキャットのメイドさん達と一緒に、ケット・シーのお嬢様の寝室に向かいます。この日から、夜にはワーキャットのメイドさん達が着替えさせる前にケット・シーのお嬢様の靴を脱がせ、朝にはメイドさん達に着替えさせてもらったお嬢様に靴を履かせるのがハンスの役目になりました。
ケット・シーのお嬢様は毎晩寝る前になると、ベッドの上に座って片足を持ち上げます。ハンスがその前に跪き、差し出された足から靴を脱がせようとすると、ちょうどケット・シーの足と足の間の部分が目に入りそうになります。ケット・シーのお嬢様は服を着なくても充分温かいモフモフした毛皮に覆われているため、ズボンやショーツのようなものを履いておらず、ハンスにとっては気が気ではありません。ケット・シーのお嬢様はそんなハンスの様子をニヤニヤと眺めながら、脚の間が見えそうで見えない絶妙な動きをしたりするのでした。
宴の時だけでなく、普段の生活でもケット・シーのお屋敷の様子は人間の住むお屋敷のそれとは大きく異なっていました。
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