昔々、ある所に若い2人の兄弟が両親と一緒に暮らしておりました。
弟は料理を作る事が好きでよく母親の炊事を手伝っておりましたが、兄と父親は「料理なんて男がすることじゃない」と言い張り、毎日食事の後も他の誰かが片づけるまで食器をそのまま放置している有様でした。
ある日、弟は包丁を研ぐために井戸に近づいたときに、うっかりつまずいて包丁を井戸の中に落としてしまいました。
「どうしよう。誕生日にお母さんからもらった大事な包丁なのに」
慌てふためいてもどうしようもありません。弟は仕方なく井戸を降りていきました。
そして気が付くと、弟は美しい草原のど真ん中に立っておりました。井戸の底へ降りていたはずなのに空には太陽が輝き、足元にはきれいな花が咲いています。不思議に思いながら草原をしばらく歩いていた弟は、パンを焼く大きなかまどの前に差し掛かりました。かまどの前ではエプロンを付けた小さな妖精さんが何やら慌てふためいています。
「どうしようどうしよう。このままではかまどのパンが焦げちまう。でも私の小さな身体では、このかまどは開けられない」
弟は妖精さんがかまどから焼きたてのパンを取り出すのを手伝ってあげました。
そしてまたしばらく歩いていくと、さっきの妖精さんが今度はリンゴの木の下で何やら慌てているのが見えました。
「どうしようどうしよう。このままではリンゴが落ちて割れてしまう。でも私の小さな身体では、落ちる前にこのリンゴの実を全部下ろせない」
弟は妖精さんがリンゴの木にたくさんなっている実を収穫するのを手伝ってあげました。
そしてまたしばらく歩いていくと、小さな家にたどり着きました。弟がその家の前まで来ると、玄関が開いて中から立派な髭を生やした大男が出てきました。それを見た弟は思わず立ちすくんでしまいましたが、大男は弟に優しく声をかけました。
「さっきは妻が世話になったね。お礼にごちそうしてあげよう」
大男は遠くの国で宮廷料理人として高い評判を得ていたのですが、リャナンシーの奥さんと結婚し、今は夫婦で異空間にこもって見た目に美しく味もおいしい料理の研究を続けているのでした。それが偶然にも井戸の底に繋がっていたのです。
大男が作ってくれた料理はとても素晴らしく、それに感動した弟は思わず呟きました。
「僕も家族の皆にこういう料理を作ってあげたいな」
「ほう。君も料理を作るのか。それならしばらくここにいて私達夫婦を手伝ってくれるなら、君のおうちでも作れそうな料理をいくつか教えてあげよう」
こうして弟はしばらくの間リャナンシーのおばさんとその旦那さんの所に留まり、料理の手伝いをして過ごしました。そうして料理の腕を上げた弟が帰る約束の日になると、旦那さんは弟が井戸の底に落とした包丁をいつの間にか研いでいてくれて、それを返してくれました。包丁を受け取った弟が辺りを見回すと、彼は元の井戸の前に立っていました。
井戸の底の世界で何日も過ごしていたはずですが、弟が家に戻って確かめてみると、不思議な事にそこでは1日も経っていませんでした。
さて。そんな不思議な出来事があった数日後。彼らの家に貴族のご婦人がやってきて、馬車馬を休ませたいのでひと晩泊めてもらいたいと言ってきました。
そのご婦人がヴァンパイアだと気付いた兄は、ちょうど台所で夕飯の支度をしていてこの事を知らなかった弟の所に行き、こう告げます。
「いきなりだが、お客さんをひと晩泊める事になった。お客さんはにんにくが大好物だそうだから、何か酒に合いそうなものを作ってさしあげてくれ」
当然嘘です。兄は弟がヴァンパイアのご婦人からこっぴどく怒られればいいと考えていたのでした。
そして弟がお酒のおつまみにと作った揚げにんにくを――これはリャナンシーのおばさんの旦那さんに教わった料理でした――ヴァンパイアのご婦人がひと口かじった時、彼女の目が急に血走り、文字通り目の色が変わりました。
「このつまみを作ったのは誰だあっ!」
ヴァンパイアのご婦人が叫ぶと、兄はそれ来たとばかりに弟を台所から引っ張ってきます。ご婦人は弟の姿を見ると、彼にいきなりとびかかりました。首筋に牙を突き立て、あふれ出した血を啜ります。弟の身体にたちまちすさまじい快感が走り、おちんちんが勢いよくズボンを押し上げました。
「ふーっ、ふーっ」
ヴァンパイアのご婦人は獣のように荒い鼻息を出し、弟のズボンが盛り上がっているのを見下ろすと、彼を脇に抱えて自分に用意された寝室へと走っていきました。
そして彼女は弟をベッドの上に放り出し、彼のズボンをずりおろします。そしてその腰に跨ると、相手が人間である事にも構わずに勢いよく犯していきました。
「まさか、にんにくで、私にも、あんなにおいしく、感じる料理を作れる奴が
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