ある大きな森の中に、3歳くらいのとても小さな女の子がいました。その服装はとてもみすぼらしく、肌も髪もボロボロで、この子の家族らしき者も見当たりません。ただはぐれてしまっただけならまだいい方で、死んでしまったか、この子を育てられなくなって森の中に置き去りにしてしまったのかもしれません。そんな状態では女の子も普通ならばすぐに死んでしまう事でしょうが、とても運のいい事に、ある聖女様が女の子のいる場所を偶然通りかかりました。
「かわいそうに。私の住むところに連れて行って、私があなたのお母さんとして面倒を見てあげましょう」
そして聖女様は天界にあるお城に女の子を連れて行きました。お城での生活はまさに夢のようで、食事は砂糖菓子と甘いミルク。毎日金色に輝くドレスを着せてもらえる上に、可愛らしい天使さん達が遊んでくれました。
そうして聖女様に拾われた少女が13歳になったある日、聖女様は少女を呼んでこう言いました。
「私の娘よ。私は長い間旅に出なくてはなりません。だからこのお城に13枚ある特別な扉の鍵をあなたに預けましょう。そのうち12の扉は中にある物を好きなだけ見て貰ってかまいません。しかし、この最後の小さな鍵の扉だけは、決して開けてはなりませんよ。そうしないとあなたに大変な不幸が訪れるでしょう」
少女は聖女様の言いつけに従うと約束しました。
そして聖女様が旅に出ていなくなると、少女は遊び友達の天使さん達と一緒に、12の扉を開けてその中を見て回りました。どの部屋の中もとても美しい上にとても広く、少女は天使さん達と一緒に走り回って楽しく遊びます。しかし、やがてそれにも飽きてくると、少女は最後の小さい鍵の扉の向こうに何があるのか気になってきました。
「この小さい鍵の扉の向こうがどうなっているか、誰か知らない?」
少女が天使さん達に聞いてみると、みんな揃って首を横に振りました。
「もしかして、開けてみる気じゃないでしょうね? だめよ。そんな事をしたらあなたに大変な不幸が訪れるって、聖女様が言っていたのを忘れたの?」
その場で最もお姉さんの天使さんが少女に釘を刺しましたが、少女の心の中では、開けてはいけない扉を開けてみたいという気持ちが日に日に強くなっていきました。
そんなある日、偶然にも天使さん達全員がそれぞれの用事で出払って、少女がお城の中で1人だけになりました。
(今こっそりあの扉を開けてみても、誰も気づかないんじゃないかしら)
少女の心の中でそんな囁きが聞こえます。気が付けば少女は小さな鍵を手に最後の扉に向かい、鍵穴に鍵を差し込んでいました。
少女が扉を開けてみると、中はとても狭く、小さなテーブルの上に1冊の大きな本が載せられているだけでした。テーブルに近づいてよく見ると、その本は表紙に金箔が張られています。少女は本に何が書かれているのかが気になり、金箔の張られた表紙をそっとめくってみました。
「――はっ! 私は何を?」
それからしばらく経ち、少女は小さな鍵の扉の前の床で目を覚ましました。目の前の部屋の中で起きた出来事を思い出そうとしますが、どういうわけか思い出そうとすると頭が痛くなってよく思い出せません。その時、聖女様がお城に帰ってきて、大声で少女を呼び、少女に預けた鍵束を返すように言いました。
聖女様は鍵束を受け取ると、少女に聞きます。
「13番目の扉は開けていないでしょうね?」
「はい。開けていません」
「本当に?」
聖女様はやけにねっとりとした声で聞きながら、少女の胸に右手を当てました。少女は約束を破った事に気付かれないかとドキドキしていたので、その音がばれるのではないかと気が気ではありません。それだけではなく、聖女様に胸を触られた時、なぜか少女の服の下で胸の先がいつになく敏感になっていました。本人にもよく解らない不思議なゾクゾクとしたむず痒い感じが少女の身体を走り、喉の奥で「んっ」と変な声が漏れてしまいます。
そんな少女の反応に気付いてか気付かずにか、聖女様は再び続けます。
「もう1度聞くけど、本当に13番目の扉は開けていないでしょうね?」
「はい。開けていません」
少女が再び同じ答えを繰り返すと、聖女様は今度は少女の手を取りました。すると、本の表紙に張られていた金箔が指先に付いていました。
「最後にもう1度だけ聞くわ。本当に13番目の扉は開けていないでしょうね?」
「はい。開けていません」
すると、聖女様はいつになく冷たい声で言い放ちました。
「あなたはもう、このお城に住み続ける事はできませんよ」
そこで、少女はふっと気を失ってしまいました。
少女が再び目を覚ますと、そこは真っ暗な森の中でした。自分が取り返しのつかない事をしてしまったと気付いた少女は、大声を上げて泣き出しそう
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