図鑑世界童話全集「金太郎」

 昔々、足柄山という山で1人のウシオニが金太郎という息子と一緒に暮らしておりました。金太郎はウシオニの本当の子供ではなく、ウシオニが山の中を歩いている時に拾った人間の赤ん坊で、この男の子の本当の親が誰なのか知る者はいませんでした。それでも、ウシオニは金太郎に自分の糸で作った前掛けを着せて、本当の我が子のように大切に育てておりました。
 ジパングに住む妖の中でも力自慢な種族であるウシオニは足柄山の森の中で木こりとして木を切って暮らしており、金太郎も物心が付くと大きなまさかりを担いでウシオニのお母さんの仕事を手伝っておりました。その力は人間の子供とは思えないほどに凄まじく、金太郎を知る山の大人達の中には彼が人間と神の間に生まれてきた子供だったのが天界から落ちてきたのではないか、などと噂する者さえおりました。

 ある日、金太郎が山の中を歩いておりますと、妖の子供達の楽しそうな声が聞こえてきました。
「はっけよーい、のこったっ!」
 声のする方に行ってみますと兎の妖(編注:これはワーラビットの事だと考えられます)や刑部狸、河童など色々な妖の子供達が集まって相撲を取っておりました。それを見た金太郎も思わず声を掛けます。
「うさぎがんばれ! 狸も負けるな!」
 そしていつの間にか自分も妖達に混ざって土俵に上がります。金太郎の凄まじい力には妖の子供も敵わず、皆あっさりと投げ飛ばされてしまいました。すると、金太郎が投げ飛ばした妖達よりも体の大きい熊の妖(編注:こちらはグリズリーの事でしょう)がやってきました。
「お、なんだか見ない顔がいるなあ」
「熊さん、こいつとんでもなく強いよ」
「大丈夫だよ。いくらなんでも熊さんなら負けないよ」
 金太郎と熊の妖は他の妖の子供達にせがまれ、土俵の上で向かい合いました。兎が行司役をします。
「はっけよーい、のこったっ!」
 他の子供達が言うだけあって熊の妖はさっきまでの相手よりひと際強く、最初は金太郎を投げ飛ばしてしまうかに見えました。しかし、金太郎はそれをぐっと持ちこたえると、熊をあっさりと投げ返してしまいました。
「すごーい。まさか熊さんにも勝っちゃうなんて」
「あんた本当に強いなあ。あんたと毎日相撲を取ったら、あたしも強くなれるかなあ」
 この日から、金太郎は山に住む妖の子供達と一緒に遊びまわるようになりました。

 それからしばらく経った夏の日の事。足柄山を激しい嵐が襲いました。ようやく嵐が過ぎ去り、金太郎が仲間たちと一緒に山の中に出てみると、川の方から声が聞こえてきました。
「おーい、誰か助けてー」
 声のする方に行ってみると、大雨で増水した川の中州に兎が取り残されておりました。川はどんどん勢いを増しており、このままでは中州も水の中に沈んで兎が流されてしまいます。
「待ってろ! 今助ける!」
 そう言うと金太郎は自慢のまさかりで岸辺の木を切り倒し、中州との間に橋を架けます。兎はこの橋を伝って中州から無事に抜け出すことができました。
「ありがとう金太郎さん」
「金太郎すごーい。力が強いだけじゃなく、優しくて知恵もあるんだなあ」
 兎と熊が金太郎をほめたたえます。
「おいらがすごいんじゃない。おっかあが木こりの技を教えてくれたおかげだよ」
 金太郎は照れ臭そうに言いました。




 長い月日が経ち、金太郎も15歳になりました。その顔や身体には髭や毛が生え始め、体付きもがっちりした大人の体格に変わってきており、妖の子供達も胸や尻がふっくらとしたふくよかな体型に変わってきました。
 しかし、彼は相変わらず裸にウシオニのお母さんが作ってくれた前掛けだけを付けた格好で、妖達と野山を駆け回っておりました。これでは妖達に襲われてしまいそうな気がしますが、そうならないのにはちゃんと理由がありました。
 今日も金太郎は地面に円を描いただけの簡単な土俵で、熊と相撲を取っています。
「金太郎さん頑張れー」
「熊さんも負けるなー」
「そおりゃっ!」
 金太郎の掛け声と共に熊が勢いよく宙を舞い、土俵の上に仰向けで倒れました。行司役の河童が声を張り上げます。
「金太郎の勝ちー」
「あー。また金太郎さんが勝ったかー」
 しかし、これで終わりではありません。いつからか金太郎と熊が相撲を取る時には、他の相手と取り組む時には無い特別な「続き」ができていました。金太郎は仰向けに倒れた熊を更に上から腕ずくで抑えつけ、熊の脚を持ち上げて大きく開きます。熊の顔がほんのりと赤く染まり、開かれたお股からは雄を誘う雌の獣(けだもの)の匂いがむわりと広がって、熊がいつも舐めている花の妖の蜜と同じくらいとろりとした物が垂れてきました。雄の子種を受け入れる準備ができた証です。
 金太郎は自分の前掛けを捲り上げると、相手の意思を確認する間もなく、かちか
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP
[0]投票 [*]感想
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33