俺の名前は柳川一樹。これと言った特徴もない、何処にでもいる平凡な人間。
頭はよくもなければ悪くもない。小・中・高・大と卒業しているが大学の成績は悪く、卒業できたのは奇跡に近い。現在はアルバイトをしながら奨学金を返済している為、中々お金が増えないのが現状だ。地元就職を希望しているが百年に一度の就職難に直面した為、仕事が決まらず大変な日々を送っている。
そんな中、唯一の楽しみが寝る事だ。寝れば現実世界から切り離され、なんぴとにも干渉されないからである。しかし、夜が訪れてくるよう否応に朝も訪れてくる。これは仕方のない事だ。
だが、そんな俺にも寝る事以外に趣味がある為、退屈はしてない。
そんな俺の日課が自宅から歩いて十分くらいの山中にある古い社へ行く事。
今はもう古くなって誰も居ないし、使われていないが、そこは不思議な事に別世界のような神秘的な雰囲気がある。
「今日も行くか」
俺は黒いハイカットシューズを履き、自宅を出た。
今日は青い半袖シャツの上から白と青を織り交ぜた様な半袖の上着を羽織り、ジーンズを履いている。そろっと秋の季節だが、まだまだ半袖で行ける。
石畳の階段を降りると道路に出る。俺の自宅は歩いて五分の所に川がある。暫らく歩いていると橋が見えた。橋を渡ると次に見えたのは左右に別れた道。俺の目的地は左の坂道の先にある為、左を選ぶ。暫らく、その坂道を登ると何件か家が並んでいる。そこを過ぎ、右に曲がれば細い道がある。目的の場所はもうすぐだ。そこを進んでいくと左に整備されていない場所を見つけた。俺はためらう事無く、その整備されていない道を進む。人が殆ど訪れないから何も手入れが行なわれていない。
「相変わらず、ここは静かだな」
俺は、その先にある石の階段を上る。
人工的に造られたものではない為、少し歩きにくいが気にしない。
暫らく上ると小さな鳥居が見え、俺は、それを潜り抜ける。
潜り抜けた先、数段の石階段を上り切ると目的地に到着した。
目の前にあるのは木製の古い社。三角の様な屋根に四角の本体。
俺は手を合わせ、瞳を瞑り、お参りをする。
お参りを終わらせた俺は何を思ったのか一言…。
「ああ…異世界に行きたい」
―その願い…叶えよう―
「えっ」
声が聞こえた。
きょろきょろ、と辺りを見渡すが誰もいない。
「気のせいか?」
しかし、突然、古い社がまばゆく光る。
「な、なんだ!?うわぁ」
俺は光の中に引き込まれた。
私の名前は飯綱(イヅナ)。本名は鳴神桜華(なるがみおうか)。
出身は親魔物派の王国都市国家ライブラ。
私は二年前に消息の途絶えた両親を捜す旅をしている。
旅の相棒は意思を持った一振りの妖刀『夜桜』。
“彼女”は元々、父の刀だけど旅立つ間際、私に『夜桜』を託した。
理由は定かではないけど、きっと私を気遣っての事だと思う。
両親が行方不明になったのは私が十七歳の頃。
父は国王で母は王妃だけど、王族との直接的なつながりは全くない。
聞く所によると両親は元国王様と元王妃様から推薦を受けて王の座に付いた。
異例のことだった。だけど国民の人々は何も不平不満はなく皆が賛同した。
それから父と母は二人の時間を大切にしながら東西南北に居を構える集落や部族達と交流を深め、自ら城下町の視察や治安維持の役割等を行ない、色々な事を務めた。また父は時間を割いて私に剣術を伝授してくれたし、母は私に炎熱魔法を教えてくれた。だけど父の血が色濃く残った為、魔法の類より寧ろ剣術の腕が伸びた。
「この辺りで見たっていうけど本当なのかな」
―情報によればその筈よ―
落ち着いた艶やかな女性の声が響く。
現在、私は森の中を捜索している。
「本当に居るのかな…」
―知らないわよ―
傍から見れば危ない人と思われがちだけど違う。
独り言ではなく『夜桜』と対話をしている。
その時、私のぴょこんっと尖った耳がぴくぴくっと動く。
「ねぇ、何か声が聞こえない?」
―声?―
「うん」
「…………」
―確かに聞こえるわね…けたたましい耳障りな声が―
「誰かが盗賊に襲われているのかな?」
―こんな辺鄙な場所で?―
「辺鄙な場所だからじゃない?」
―そうかもね…この辺りの治安は未だ悪いって噂だから…―
「行ってみよう」
―けど気をつけなさいね?―
「分かってる」
私は『夜桜』が抜けるよう構えたまま声の場所へ向かった。
最初に見た景色は多くの木が立ち並ぶ森林だった。
森林と言っても深い森の中では無い。俺は辺りを見渡す。
鳥の鳴き声や風に吹かれた葉っぱのざわめきが聞こえる。
見上げれば緑の葉っぱが生い茂り、空を覆っている。
「どこだ…ここ?」
全く知らない森だ。
「俺の居た場所じゃないよな…てか、こんな森の中じゃな
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