後編

「此処が越後城…」

現在、俺とクノ一部隊は越後城の裏門付近の林で待機中だ。
また此処へ来る途中、俺が乗っていた馬は小川のほとりで待機させている。

「情報では城の地下牢に蒼緋様が幽閉されている筈です」
「よしっ、蒼緋さんを助け出すぞ」

俺は号令をかけ、城に潜入するべく行動を起こす。
と、今にも林から飛び出しそうな俺を四人のクノ一部隊は制止した。

「お待ちください、その格好で行く気ですか?」
「そうだけど?」
「目立ち過ぎます」
「問題無いだろ」
「この作戦は絶対に失敗が許されないのですよ?」
「それは充分に理解しているが…」
「でしたらもう少し目立たない服装をしてください」
「んなこと言われても他に着替えが無いし…」

クノ一部隊に服装の事を注意された俺はどうする事も出来ない。
確かに今の服装はワイシャツにズボンと、この世界で言えば面妖な格好だ。
しかし、地下牢まで何も無いと言う事はまずあり得ないだろう。
必ず教団の連中が幾人か城の中で待機してる筈だ。

「それに…この格好の方が動きやすいし」
「ですが」
「着慣れない格好をする方がよっぽど作戦に支障がでるだろ?」
「……わかりました」

此処で言い合っても埒が明かないと悟ったクノ一部隊。

「そんな顔するなよ、綺麗な顔が台無しだぞ」

俺の言葉にクノ一部隊が覆面の奥で頬を赤らめた様な気がした。
まぁ何はともあれ若干不服の彼女達もどうにか納得してくれたようだ。
再び俺は越後城の裏門で待機している教団に視線を移す。
現在、教団の殆どの勢力が遠征に出ている為、城の中は手薄だ。

「この機会を逃してはなりません」
「私達は地下牢に幽閉されている蒼緋様を助けます」
「救世主殿は本丸へ向かってください」
「私達もすぐに向かいます」
「了解だ…これより越後城と蒼緋さんを奪取する、行くぞ」

俺達は林の中から素早く躍り出た。

「なっ!?」
「こいつ等、何処から!?」
「悪いな」

反撃の隙を与えず俺は教団の後ろに回り込み後頭部を手刀で強打する。
此処は人間の急所の一つであり最悪の場合、死に至る。

「お?」
「如何しましたか?」

気絶させた教団を縛っている途中、ある事に気付いた。

「この白いローブ…使えないか?」

言うや否や俺は教団の着てたローブを手に取る。
そしてワイシャツの上からそのままローブを羽織った。
俺の姿は何処からどう見ても教団にしか見えない。

「なんと…」
「んじゃ、本丸で落ち合おう」

俺は裏門から堂々と、クノ一部隊は気付かれないように潜入する。
元々彼女達は隠密行動を得意とする為、こんな事しなくてもいいんだけどな。
まぁ念には念を入れる…仮に見つかった場合、俺は対処できない。

潜入した越後城の中は意外と広く非常に複雑な造りになっている。
あの後、クノ一部隊と別れた俺は本丸に向かう為、城の廊下を歩いている。
歩きながら城の所々を見れば今も天に昇りそうな龍の絵が描かれている。
そう言えば、この城…何処となく東洋の龍をモチーフにしている気がする。
だが全てが同じと言うわけではない…平たく言えば鍾乳洞の様な造りだ。
まぁ実際の鍾乳洞内部と全く形状が違うけどな。
俺はクノ一部隊が調べ上げた城の見取り図を頭に思い浮かべながら歩く。

「(何かおかしいな)」

俺は妙な違和感を覚えながら城の廊下を歩き続ける。
先程、裏門から城へ潜入した際、俺は一度も警護の教団に逢ってない。
別に鉢合わせをしたいわけじゃないが何か引っかかる。
幾ら城の内部が手薄とは言え、これほど警護に逢わないものなのか?

「(まるで気配が感じられない…)」

千代姫さんやクノ一部隊の話を聞く限り、彼等は海を渡った大陸で最も主流の西洋魔法を扱う西洋魔術師というものらしい。彼等の使う西洋魔法は基本的に万物を司る四大元素…風・火・水・土を操り、それに加えて白魔法や黒魔法等を使う。そしてその中でも厳しい修行を積んだ者が失われた超古代魔法を扱えると言う。

「(何の苦もなく本丸に到着するが、かえって気味が悪いな)」

奏功してる内に本丸に到着したが辺りに気配が感じられない。
もしかしたら隠ぺい魔法か何かで気配を隠しているのだろうか?
俺は此処の世界の住人ではない為、"魔力の流れ"が分からない。
もしこれが腕の立つ武術家や武芸者なら"気の流れ"で分かる。
だが今此処で考えても仕方ない…俺は意を決して本丸の障子戸を開く。

「何者だ!」

そこに居たのは大きな十字架の刺繍を入れた白いローブを着た人物。
彼は樫の木で作った杖を持ち、突然の来訪者に驚愕している。

「お前が首領だな」
「そうだ…見慣れぬ格好をした奴が来たな」
「ちょっと故あってな…」
「まぁ良い…貴様も青き清浄なる世界を邪魔する親魔物派の勢力か?」


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