夜が明けた。
俺の胸にはケサランパサランの少女が抱かれていた。相変わらず良い匂いで、不思議と胸の奥が温かくなる。
お陰で此処最近の中で一番気持ちよい目覚めだった。
「あははー♪」
彼女は一足早く目が覚めていたらしく、俺が起きたのを真ん丸な瞳で見付けた後、無邪気に笑った。
俺も笑い返す……が、彼女の顔に昨晩の俺の劣情が未だ糸を引いているのを目の当たりにすると、一気に申し訳ない気持ちで一杯になった。
「ぎとぎとするー」
少女の言う通り、それは乾いて肌や髪に貼り付いてしまっていた。脇の所にもたっぷりと精液が残ってしまっている。
「洗おうか」
「あらうー。あははー♪」
彼女は自分が寝ている間に何をされていたのかも気にする様子はなく、そう返事した。
少女の体を一目から隠しながらシャワールームに駆け込む。
少女の裸体に水を掛けてやると、笑いながら「ちべたい、あははー♪」って言った。手で擦って精液の痕を落としながら、少女の柔らかさに心奪われる自分が居るのに気付く。首を振って邪念を振り落としてから、緑の髪をわしわしと洗った。
「……」
ふと、少女の膣内を洗う必要性が頭をよぎったが、取り敢えず股の部分を擦ってやるだけにとどめた。
「ふいてー、わはー♪」
シャワー室から出ると、ばんざいしてそうせがむ少女。濡れた体をタオルで拭き取ってやると、綺麗さっぱりした様子で元気よくまた「あははー♪」と笑った。
しかし、魔物とは言えほぼ全裸の少女をこのまま船内をうろつかせると色んな意味で危ない。自分の事はさて置いて、誰かに悪戯されるかもしれない。
其処で俺は少女を部屋に連れ戻すと、タンスの奥から俺が子供の頃着ていた服を引っ張り出した。
「これ着ろ」
その中で少女にも似合う様な、というより無難な白いシャツを着せてやる。だが彼女には少し大きいので、裾を括って胸が隠れるようにだけしてやる。下半身は綿で包まれているので隠す必要はないだろう。
「ふくー。おきがえー、わははー♪」
「はいはい」
着替えが終わると、ケサランパサランは気ままに宙を浮き始めた。
「驚いた。船長が言ってた通り、お前、飛べるんだな」
羽も無いのに。そう言うと少女は「ふわふわー」とか言うだけで部屋の中を飛び回る。壁にぶつかりそうになると綿の部分で撥ね返り、「あははー」と笑う。
……楽しいのだろうか。
相変わらず重力を無視して飛び回る少女。ふと呼び名が見当たらない事に気付く。
「そう言えばお前、名前は?」
尋ねると、ケサランパサランは宙で一回転した。
「なまえ? ……ふわふわ!」
「それはお前の頭の中じゃないのか」
「わはー」
相変わらずマイペースに飛び回るケサランパサラン。
「まぁ、毛玉でいいか」
別になんでもなし。少女は「けだま、けだま〜♪」と連呼している。
斯くして少女は晴れて「毛玉」と命名された。
―――――
「よし、毛玉。朝飯食いに行くぞ」
「ごはん?」
「ごはん」
「わはー」
毛玉を連れて食堂に赴く俺。働く男の一日はきちんと食事をとる事から始まるのだろう。この時間帯は船内で働く仲間達の殆んどが一堂に会するのである。
その仲間達の注目は当然、俺の連れている毛玉に向けられるのであった。
「なんだオメェ、随分と仲がいいじゃねぇか」
「うっせぇよ」
同僚に茶化されながら席に着き、飯にがっつく。空の飯は基本長持ちする燻製が多いが、それでも肉は御馳走だ。
ふと毛玉を見ると、目の前に置かれた干し肉をまじまじと見詰めているだけで手を伸ばそうとはしなかった。
「食わないのか」
「ん〜。ごはん、もうたべた」
「何食ったんだ」
「おにーさんのおちんぽ汁♪」
俺から半径5m以内に居る仲間達が一斉に食ってるものを噴き出した。
―――――
朝っぱらから不幸な事故があったものの、俺は元気です。
旅の人に尋ねて判ったが、ケサランパサランは精液が餌なのだそうだ。あの形と言えど、やはりサキュバスか。
「お前あんな所であんな事いうなよ……」
「おっちんっぽじっるじっる♪」
「歌うんじゃねぇ」
毛玉のほっぺたを引っ張る。よく伸びた。
それと、旅の人からこう注意された。
『ケサランパサランの毛玉には幻覚作用があって、彼女達はそれを粉末状にして振り撒く事があります。基本的に吸って害はないですが、念の為、人前に出る時は注意して下さい』
成程と思った。だから俺は毛玉の香りを嗅いで思考が吹っ飛んだりしたんだ。
全く、俺はなんて厄介なものを拾ったのか。お陰で俺は変態扱いだ。
『 でも、彼女達は幸福を呼ぶといいます。大事にしてあげて下さい』
「……」
幸福を呼ぶ、か。
今の俺は幸福なんだろうか。
よく判らなかった。
「わはー」
け
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