【ジェイルバード】
物心ついた時。それは他者の命を初めて奪った時だ。
僕の世界は血塗れた歓喜により広がった。手にはナイフが濡れて光る。目の前に横たわる汚らしい肉の塊は、不釣り合いに綺麗な赤い花を脳天に咲かせていた。
後ろから、檻の外から人の声が聞こえる。
「あれが今回の器か」
「ええ、凄まじい魔力を秘めています。恐らく魔王に匹敵するかと」
「ふふふ、良いモノを手に入れた。……いいか、奴に自我が芽生える事などあってはならん。歯向かわれたら厄介だ。飽くまで我らの忠実な犬とせよ」
その時の僕には、この胸の痛みの意味が判らなかった。
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