あなたは寒さに身を震わせた。
もう暦も12月なので寒いのは当たり前だが、あなたの場合は少し孤独という点で町行く人との寒さの種類が少し違った。道行く人々は身を寄せ合い腕を組み、白い息を2つに重ねているが、あなたの吐く息に重なるものはなかった。
あなたのため息は白く染まり、何に重なることもなく消えていった。
クリスマスイブである今日を恨めしく思いながら、貴方は仕事を終えて自宅へと帰る途中だった。手に下げた袋には、せめて少しでもクリスマスを楽しんでやろうと買ったチキンの照り焼きが入っていたが、あなたはその重さをかえってわびしく感じた。
あなたは空を見上げ、1つの白い息を吐きながら自棄気味に『サンタさんでも神様でもいいから彼女を下さい』と心の中で願った。あなたは何も知らなかった幼き日の思い出に縋るように願う自分を嘲笑って、星空から視線を戻してあなたの現実に戻った。
「あ、あの……っ」
はずだった。
あなたの目の前には先ほどまで影も形もなかった少女が立っていた。更にあなたが驚いたのは少女の姿だ。息が白くなるほど寒いというのに薄着、もはや下着姿と言っていい姿だ。褐色の肌を晒す扇情的な姿の筈だが、突然の異常事態にあなたの脳裏には疑問符しか浮かばない。
「初めまして、私の旦那様……
#9825;」
いきなりそう言った少女は、まるで恋人に寄り添うようにあなたに身を寄せた。あなたは少女の行動に更に驚いたが、周囲のざわめきに気がつき、ひとまず上着を着せてその場を離れることにした。
◆
「はむ……ん! おいひいれふ!」
あなたは目の前でチキンを頬張る少女を横目に今日何度目かのため息を吐いたが、その息は白くはなかった。半裸の少女を連れてどこに行けるはずもなく、結局あなたは自分の部屋に少女を迎え入れるしかなかった。
まったく状況が理解できないまま、チキンを少女に取られてしまった。美味しそうに肉を頬張る少女はメイレと名乗った。神の使いだとかフーリーという天使だとか、にわかには信じられないことばかり少女は口にした。あなたは詐欺か美人局を疑ったが、それにしてはメイレの言動はあまりに突飛すぎるのでその可能性は低いと結論付けた。
メイレがあなたの視線に気がつき、唇にソースをつけたまま微笑んだ。裏のない純朴な少女の笑顔にあなたは見惚れてしまった。最後に感じたのはいつだったか思い出せもしない、学生の時のような鼓動の高鳴りを、あなたは感じた。
あなたは改めて彼女を見た。年の頃は義務教育が終わったくらいだろうか。褐色の肌は健康的というよりか神秘的な印象をあなたに与えた。桃色の髪はふわふわと柔らかそうで、彼女が動くたびにふわりと揺れて、新鮮な果物のような甘く清らかな香りがあなたの鼻腔に入り込む。
薄い衣服の下にある彼女の体をあなたは意識してしまう。ハート型に開いた部分から除く乳房はふっくらと豊満で、下着を着けていないのか乳首がほんのりと浮き出てしまっている。神秘的な褐色の腹はきゅっと引き締まり、若い張りと女性らしい肉感が同居していた。
そしてその下、女性の秘部を隠す下着は、薄く小さくたよりなく、股関節が見えてしまっている。布が小さいせいか彼女にぴったり張り付くようになっていて、彼女の割れ目の筋がはっきりと見えてしまっている。
あなたは彼女の体をまじまじと見ている自分に気がつき、ごまかすように彼女の目的がなんなのか質問した。メイレはチキンを置いて唇のソースを舐め取り、
「んぐ……そうでした! 私はあなたと結婚するために来たのです!」
突拍子も無い言葉だった。
だが、あなたはなぜかその言葉が素直に自分の中に入り込んでくるような感覚に陥った。あなたは自分自身の感情に戸惑っていた。彼女の言動や姿は普段のあなたならば絶対に怪しんで近寄りもしなかっただろう。
今のあなたは、事情があったにせよなぜか警戒もせず彼女を家に上げてしまっていた。それは少女の純朴な雰囲気にのまれたせいなのか、それともあなたは彼女の言葉に淡い期待を抱いているせいなのか。
「本当はもっと早く来たかったのですが、今日は特別な日と聞いて……」
メイレは照れ臭そうに笑ってあなたの正面に座った。すると、あなたの手にメイレの手が触れた。彼女の小さな手があなたの手にそっと触れ、指先をふにふにとつまんだ。あなたは少女の柔らかい指が自分の指をつまむ感触に、指先からじわじわ手のひらが暖まっていくのを感じた。
ふにふに、ぷにぷにとあなたの手の大きさを確かめるようにメイレの褐色の指が、あなたの指先から関節へ、指の根本へ、緊張で汗ばんだ手のひらへ。そして少女の小さく柔らかな指がゆっくりと5本同時にあなたの指の間に入り込んだ。すぅ、とメイレは息
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