ウサギのお嫁さん

 草原の真ん中に、倒れている人が見えた。

 どこか具合が悪いのかもしれない。ただ寝てるだけにしても、もうお昼も過ぎた。今日は陽があって暖かいけど、冬の日に外で寝ていては風邪をひいてしまうかもしれない。ぼくはあわてて駆け寄りながら、「大丈夫ですか」と声をかけた。すると、ぴょこんと大きな耳が持ち上がって、ぼくのほうを向いた。大きな獣の耳に白くてふわふわの毛が生えた足、緑色のさらさらとした髪の毛――魔物娘だ。姿から察するにウサギの魔物娘だろうか。人間だと思っていたぼくはびっくりして立ち止まってしまった。魔物娘のほうも驚いたのか、きょとんとした顔のまま固まっていた。

 魔物娘、人々を堕落させ破滅させる憎むべき存在。そう教えられてきた。辺境の村で何度か見かけたことはあったけれど、こうして面と向かい合うのは初めてだった。どうしたらいいんだ。退治するにもぼくは今小さなナイフくらいしか持ってない。魔物娘は人間より身体能力が高いと聞く。なんの訓練もしてないただの旅人のぼくが叶うのだろうか。穏やかな陽が射す草原の真ん中で、ぼくは身動きできずに魔物娘と見つめあっていた。

 どうしようかと迷っているうちに、魔物娘はにこりと微笑んだ。
 不意に向けられた笑みに、かわいい、なんて思ってしまった。

「あらあら、こんにちは! 人間の男の子がどうしたの?何か探し物?道にでも迷った?それとも私を退治しにきたの?」

 ウサギの魔物娘は、笑顔になるとぺらぺらと早口で喋った。その気配に敵意はなく、むしろ好意的でさえあるように感じられた。すぐにでも襲い掛かられてしまうと思っていたぼくは、そんなことを言われるとは思っていなかったので、少し慌てた。そして急いで首を振って否定しながら、おずおずと答えた。

「ぼくは、ここを通りかかっただけで……」
「あら? でもなんでわざわざ私のトコに?」
「たっ、倒れているのかと思って」

 緊張でまともに動かない頭は、馬鹿正直な言葉を紡いでしまう。

「わあ! 心配して助けに来てくれたのね! なんていいこなの!いいこ、いいこ!」

 ウサギの魔物娘は嬉しそうな顔をして立ち上がり、近づいてきてぼくの頭を撫でてきた。その手はとても温かくて、なでなでされると不思議と落ち着くような気持ちになった。

「えっ、あのっ、えっ……」
「ふふ、いいこいいこ
#9825;」
「あぅ……」

 そのときになって初めて気づいたのだけれど、ウサギの魔物娘はすごく美人だった。長いまつげに大きな瞳、すらりと伸びた鼻筋にぷるんとした唇……こんな綺麗なお姉さん、町でもそうは見かけない。そんな人に頭を優しく撫でられて、ぼくは恥ずかしくなってうつむいてしまった。すると、またお姉さんの声が聞こえてきた。

「あれれ?照れてるのかな? かわいい
#9825; 私はコニーヨ! コニーでいいわ! あなたの名前は?」
「えっと……ノルです、旅人で……」

 名前を言うときだけちょっと緊張して言いよどんでしまった。ぼくの名前を聞いたお姉さんはうんうんとうなずくと、ぼくの頭を撫でている手とは反対の手で、今度はぼくの手を取ってゆらゆらぶんぶん振り回し始めた。いきなり手を握られて、ぼくはびっくりしてしまった。だけど、手を子供みたいにぶんぶん揺さぶられるのがなんだか楽しくて、くすっと笑ってしまった。コニーヨさんもぼくの顔を見て、楽しそうに笑い始めた。

「そうだ、優しいノルくんにはご褒美あげないとね
#9825;」

 コニーヨさんはぼくの頭から手を離した。なんだかさみしい、もっと撫でて欲しかった。なんて思う間もなく、コニーヨさんが身を寄せてきてぼドキンと心臓が跳ねた。柔らかな胸がふにゅん
#9825;と腕に押し付けられる。綺麗な緑色の髪が揺れていい匂いがする。さっきまでぼくの頭を撫でていた手が、ぼくの股間へ伸びていく。いけない、逃げなくちゃ。教団の教えが正しければぼくは――。

 でも、体がうまく動かなかった――動かせなかった。このまま彼女から逃げなければ、ぼくは破滅させられる。性の虜にされて何もできなくなる。だから早く逃げなければいけない。わかっているはずなのにまるで魔法にかけられたように、体が動かない。でも、これは恐怖じゃない。この先にある快楽を心のどこかで期待してしまっている。美人のお姉さんとえっちな事ができると期待してしまっている。そんなぼくの心を見透かすかのように、彼女は妖しく微笑んでぼくの股間を撫で上げた。

「ひぁっ!」
「ノル君のおちんちん、気持ちよくしてあげる
#9825;」
「だっ、だめっ。そんなの……」
「どうして? ノル君のおちんちん硬くなってきたよ? えっちしたいってことだよね?」

 コニーヨさんの言う通りだった。ぼくの体はすっかり興奮しきっていて、彼女
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