とある猫の気ままな放浪。そのいち。

 自分は今、夢を見ている。
 唐突に気づいた。しかし、今更どうしようもないことだった。
 何度も夢に見すぎて、妙な諦観が生まれてきている。それは、忘れたくても忘れられない光景。
 内容はいつも同じ。その日の役目が終わり、自室に戻る。やっと一人になれた事を喜びながら、ベッドに近づいていく。

 ――駄目だ。そこに、寝てはいけない。

 分かっていても、どうにもならない。
 これは既に起きてしまったことであり、ただ過去の出来事が反芻されているだけ。
 疲れ果てた自分は、ベッドの上に倒れこむ。柔らかい羽毛製の布団に体を沈めながら、瞼を閉じる。
 そして、気がつくと――

 かちゃり、と耳元で音が鳴る。全身が、総毛立つ。

 全て、いつも通り。この後にあの足音が、そしてあの女の罅割れたような笑みがやってくる。
 早く覚めてくれ――そう願うも、その願いがかなったことは一度もない。
 律儀で恨めしい自分の身体は、この映像を再生し終わるまで目覚めてくれない。
 コツン、と足音が扉の前で止まる。ぎぃ、と扉が軋む音。
 そして視界の端に、あの見るもおぞましい顔が映りそうになった――その時、
 ぺちゃり、と奇妙な感触を顔に感じた。

「ぇ」

 予想外の事に、喉から声が漏れる。途端に視界が暗転し――


 はっとして目を見開くと、そこには透き通った彼女の顔があった。
 唐突に覚醒したアレクの顔を見て、彼女は首を傾げる。

「あれ、く?」
「…あ、れ?」

 マヌケな声をあげながら、アレクはきょろきょろと辺りを見やる。
 山小屋の、壊れそうなベッドの上。布で仕切られた窓から、薄く曙光が漏れてきている。
 顔に、冷たく柔らかい感触。彼女の――メディの手が、顔に張り付いていた。
 顔を撫でられ、強張っていた心が落ち着いていくのを感じる。

「うな、されてた。だい、じょぶ?」

 メディが、心配そうな表情でこちらを覗き込んできた。
 どうやら、彼女に助けられたらしい。

「…ありがと、メディ」

 手を伸ばし、彼女の頭を撫でる。
 名前を付けたのは昨日の今日のことなのだが、彼女はしっかりと自らの名前を認識しているようだ。
 にこり、と彼女は笑う。

「どう、いたし、まして」

 ぎこちないが、はっきりとした言葉が帰ってくる。
 彼女は魔物で、しかもスライム。正直、最初はどうなるかと思った。
 しかし、彼女とのコミュニケーションは思いの外良好。彼女と会って、アレクは自分が持っていた魔物に対する知識が間違っていたことを知った。
 …いや、全てが間違っていたわけではないが。人を食べる、と言う点に関しては。少し、アレな意味で。

「ごほう、び」
「…え」
「ごほうび、ちょうだい?」

 言いながら、メディはするすると後退して、アレクの下半身に顔を近づける。
 アレクの両足にスライム状の体を絡めながら、優しく局部を撫で始める。
 ぎくり、とアレクの心が音をたてる。

「え、えーっと…夜じゃ、駄目?」
「きのうの、よる。もらえ、なかった」
「そ、それは…その。疲れてたから…」

 言い訳を述べるアレクに対し、メディは納得する様子を見せない。
 不満そうに頬を膨らました後、かくなる上は、とばかりに必殺技を放つ。

「…だめ?」

 その顔は、やめて欲しい。本当に、自分が悪いことをしている気になってくる。

「…わかった。でも、一回だけだよ」
「やた!」

 嬉々として、アレクの服を剥くメディ。…甘やかしすぎ、だろうか?
 じわじわと刺激されていた彼の分身は、衣類から開放された時には既に準備完了状態だった。

「〜♪」
 
 メディは、歓喜の表情のまま口を大きく開く。そして、

「ぁむ」
「っ!」

 それを、一気に根元まで口の中へ押し込んでしまった。
 甘美な刺激がアレクの背筋を駆け抜ける。

「…ぅ、く」

 相変わらず、彼女の動きは誰に教わるでもなく巧い。
 しっかりと咥え込まれたまま幹を唇で梳かれ、先っぽの方にはぬるぬるとした舌を絡められる。
 ぐるぐると回転するような動きで亀頭を責めていた舌が、だんだんと半径を狭めて尿道口にたどり着く。
 敏感なその場所をノックされ、アレクは危うく達しそうになる。
 早過ぎるのも情けない。何とも安いプライドが、精液が駆け上がるのを押し止める。

「ちゅぅ」
「あくっ!」

 それならばと、メディは上下の動きを止め、吸い付くような刺激に変えてきた。
 舌を裏筋にぴったりとくっつけ、小さく動かしながら肉棒を吸引する。
 魔物とはいえ、幼い少女に肉棒を吸われるというこの状況。アレクは背信的な気持ちに襲われたが、それが更なる快感に繋がった。
 メディの目が、アレクの方を見る。もう限界が来ていることを、悟られる。

「…ちゅぅっ」

 
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33