気儘な騎士と我儘な姫君。(中篇)

「く、あ……ぁふ…ぁ」

 情けない声が溢れるのを、止める事が出来ない。
 必死で口を閉じてはいるのだが、やはり堪え切れるものではなかった。
 そんなアレクを眺めながら、メディは嬉しそうに行為を続ける。

「ふふ…♪」

 アレクの耳元で楽しそうに声を漏らし、不意を打つように耳の中に舌を流し込む。
 ぞくり、と脳に直接快感を流し込まれたような心地。
 あっという間に力が抜け、アレクはメディに覆い被さるように沈み込む。

 実を言うと、メディの行為は前座にも達しておらず、まだ情事が始まっているわけではない。
 しかしそれでも、アレクは全くと言って良いほど歯が立たない状況にあった。
 一度奪われた主導権は取り戻せず、一方的に高められるのみ。

「ね…アレク。痛く、ない?」
「え? …あ、ああ、全然。むしろ、気持ち良すぎるというか…」

 彼女が何をしているかといえば、アレクの腕に巻かれた包帯を巻き直している真っ最中だった。 
 つい先ほど、例によってアレクは一瞬で服を剥かれたわけだが、その時メディはアレクの怪我に目を留めた。
 ジークら傭兵に傷つけられた腕には、包帯が巻かれていた。彼女はそれを見て一瞬顔を硬直させ、そして行為の前に包帯を巻き直させてくれと申し出た。
 その気持ちは嬉しかった。嬉しかったのだが。

「わ、ちょ、メディ…そこ、くすぐった…」
「我慢、して。…アレク、此処が弱いんだ…」
「っくあ、だ、だからやめてって…」

 正直、この体勢は辛すぎる。
 アレクの右腕は、肩口からメディの身体に埋まりこんでいるような状態にある。
 透き通ったメディの体を覗くと、彼女の中で腕に包帯が巻き付けられているのが見える。

 穏やかに流動する彼女の体内は、とても優しい動きで心地良い。
 腕の傷はほぼ塞がっており、痛むという事は全く無いが、問題は別にある。
 アレクの腕はメディの脇付近にめり込んでおり、アレクは抱き合うような姿勢で彼女と密着していた。
 こちらは身動きがほぼ取れないのを良い事に、先ほどからメディはささやかなイタズラを繰り返している。
 顔に口づけを落とし、脇腹をゆっくりと撫で、そして達しない程度に肉棒に刺激を加える。

「あの、さ。メディ…あ、足の裏くすぐるの、やめてくれない…」
「えー。なんの、こと?」
「だ、だから…って、わ。そっちはもっと駄目だって…!」

 陰嚢を、やわやわとメディの軟体に捏ねられる。
 反射的に身を捩るも、右腕は埋まってしまって動かないし、太ももは彼女の軟体にがっちりと巻き付かれてしまっている。
 そんなこんなで、アレクは先程からメディの生殺しを延々と受け続けている。

(どうにかして、反撃できないかな…)

 決して、彼女にされるのが嫌なわけではない。ただ、一方的に責められるのは何となく良い気分ではない。
 アレクとしては、彼女にも何かしてあげたかった。彼女と快感を共有してみたいと、そう思った。
 しかし、アレクは彼女が快感を感じている様子をあまり見たことがない。
 人間の女性なら性感帯である胸や秘所を撫でられても、彼女は嬉しそうな顔はするものの感じている様子はない。
 メディが恍惚とした時と言えば、不意をつくような形で口づけをしたあの時だけだった。
 
(とはいっても、キスでメディに叶うはずがないんだよね…)

 やはり性技では、圧倒的に不利。
 どうにかして、彼女の弱点ともいえる性感帯が見つけられれば良いのだが。
 メディにまた口づけを落とされながら、アレクは思案に暮れる。
 その時、アレクの視界の端で何かが蠢いた。

「…ん?」

 一定の鼓動を刻みながら、くるくると回る球体。
 それは、メディの核だった。
 彼女の中、包帯が巻かれているアレクの腕のすぐそばで、それはゆらゆらと揺れていた。

「………」

 一瞬だけ、彼女を傷つけてしまった苦い思い出が蘇る。
 それを振り払いながら、アレクはふと思う。
 そういえば、あれから一度も彼女の核に触れたことがなかった。

 メディの核は、彼女の心をそのまま反映するモノ、と言っても良い。
 楽しいことがあった時は高速回転し、悲しいことがあった時は遅々として鈍い回転になる。
 ちなみに、現在の回転速度はやや高速。行為が始まれば、かなりの速度に達するに違いない。
 何はともあれ、彼女にとって重要な器官であるのは間違いないので、出来る限り接触は避けていた。

「…アレク?」
「あ、いや、その」

 とっさに、アレクは核から目をそらす。メディは訝しげに首を傾げる。
 …試してみる価値は、あるのかもしれない。
 ちょうど、包帯が巻き終わった。アレクはゆっくりと彼女の中にある右腕を動かす。
 きょとんとするメディをまじかに見ながら、アレクはくるくると回転す
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