1-3 また会いに

 少々疲れた様子のノルヴィ、ミラ、フィム、キャスの4人の目の前には、巨大な氷塊とそれに閉じ込められた大量のゾンビやグールたちの姿があった。
「で、どうするの?唯一の通路が氷塊でなくなったわけだけど」
 困ったような顔をしながらミラが他の3人を見る。
「僕はもう魔力がほとんど残ってないから転送は無理だよ…」
 キャスが淡々とした口ぶりで言うと、腰を下ろしていたノルヴィが「よっこらせ…」と立ち上がり剣を抜いた。
「ノルヴィ?」
「まぁまぁ、任せなさいって」
 彼は建物内側の方の壁に向き、剣を構えた。
「たぶん、そこまで腕は鈍ってないと…思うからさッ!」
 素早く壁に向かって剣を三振りしたかと思うと、壁に三本の真っ直ぐな傷がついた。そしてノルヴィは三本の傷によって区切られた三角形の範囲の壁を手のひらで押す。
「よいしょっ…」
 ズズズ…と壁が動き、ズシーン…と大きな音を立てて向こう側の部屋の中に倒れ、人1人が余裕で通れる穴が開いた。
「これは見事やなぁ…」
「まあ、これでも元騎士団出身ですからっ」
 思わずフィムが感心すると、ノルヴィは得意げな顔をして言った。
「さて、道も開けたことだし、少年たち達探しに行きますか」
「せやな」
 フィムは魔力を使い過ぎて立てなくなったキャスをおんぶし、壁の穴をくぐって部屋に入ったノルヴィを追った。
 ただ1人、ミラは怪訝そうな表情で壁の穴を見つめていた。ノルヴィが穴をあけた瞬間は驚嘆が浮かんだが、それはすぐにノルヴィに対する疑問に変わった。
(石塊の壁をいとも容易く…普通は熟練の騎士だって無理だわ。剣をコートしている素振りなんて…いえ、でも一瞬だったけど魔力は感じた…え?…じゃあもしかして…)
「おーい、ミラっちー?」
「!」
「どうかしたのー?」
「あ、いえ、ごめんなさい」
 ノルヴィの呼び声に我に返ったミラはすぐに3人の後を追った、頭に浮かんだ考えを思考の隅にとどめて。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 その頃、塔の6階ではフィアが魔物たちを警戒しつつ、トーマやトレアを探して彷徨っていた。
(ぅぅ………)
 壁がわずかに反射したライトの光に映る彼女の顔は眉をしかめていて、少し不快そうだ。それは周りが真っ暗で、いつどこからゾンビに襲われるかという不気味さからだけではない。
(もう…パンツのアソコの部分が濡れてて冷たいし…早く履き替えたいなぁ…)
 ゾンビに襲われ蹂躙されそうになり感じてしまったことを、デリケートゾーンに染み込んだ分泌液の冷たさがフィア自身を辱めるように教えていた。
 せめて拭うぐらいのことはしたかったが、こんなところでパンツと下着を下ろして拭いていて、誰かが来てしまったら拙い。どこか部屋に入り込んでというのも、先ほどの様にゾンビが潜んでいたらアウトだ。
 というよりもそれ以前に拭えるよな物を彼女は持っていないのだが。
 フィアの気が股間からの不快感に向かっていた丁度その時、目の前の通路の角から人影が覗いた。
「ッ…!」
 フィアは思わず身構えるが、その正体がわかった途端に安堵の表情を浮かべた。
「トーマ…」
「フィア…無事だったか…」
 2人はお互いに駆け寄り無事を喜び合った。
「分かれた部屋に行ったら君がいなかったから心配してたんだ」
「ゴメン、あの部屋の奥にゾンビが潜んでて…」
「なっ!?…そうだったのか、悪かった。それでなんともないか?」
「えっ…う、うん…大丈夫」
 彼が訊いた途端、フィアは一瞬たじろいだ。
(まさか…そのせいで濡れちゃったなんて言えない…)
 そしてさらに彼女は気付いた。少なくとも今から他のだれかと出会えるまでは、自分は湿ったままの下着を履いてトーマと2人きりだ。たとえ相手が気付いていなかったとしても、こちらとしては大変気まずい。
 手分けをして、と口実を作って別行動をするにも、単身では危ないというのはその口実を作る原因自体が物語るのだから、なんとも皮肉である。
「そうか、よかった。彼女たちに襲われたなかったのか?」
「襲われたんだけど何とか…あっ…」
「よく逃げられたな。どうやったんだ?」
 もう口が滑ったとしか言いようがなかった。
(しまったぁ〜〜!「何とか一瞬の隙をついて指でイかせて逃げてきた」とか言っちゃうとこだった…誤魔化さなきゃっ…えっと…えっと…)
 彼女は少し天然というか素直というか、要はそう言う性格だ。
「あ〜…え〜と、一瞬の隙をついて………蹴っ…飛ばした?…みたいな?」
 確かに2人のうち片方は蹴り飛ばしてKOを取った、嘘はついていない。
「おいおい、なんで疑問形なんだ?」
「えっ…そ…その、そうっ!無我夢中で抵抗してたから、よくわかんないのよねっ、多分蹴り飛ばした…と、思うんだけど。そう、で、ゾンビが後ろの壁に当たっ
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