「うっふふ、お姉ちゃんたちがここへ来てからずっと見てたんだよ」
そう言って笑ったゴーストの少女に、トレアは「え…?」とベッドの上で困惑した表情を浮かべた。
「どういうことだ…」
「そのまんまの意味だよ。ずっと誰も来なかったこの建物にお姉ちゃんたちが来てくれたの、私の王子さまを連れて…」
「なに…?」
ゴーストの少女はその場で楽しそうにくるくると回った。
「あのおかしな喋り方をするお兄ちゃんもかっこいいし、おじさまも素敵だなぁ…」
そう言うと彼女はトレアの方を見て止まり、手を後ろで組んで赤らめた顔をトレアに近づけた。
「でも、私はあの茶髪のお兄ちゃんが好みだなぁ
#9829;」
「茶髪…トーマのことかっ!」
「あはっ、トーマって言うんだ、あのお兄ちゃん。素敵な名前〜♪」
トレアは険しい表情をした。
「貴様、トーマに何をする気だ…」
「え?何って、私の王子さまになってもらうの。それで…あんなことや、こんなことを…えへへへへ
#9829;」
ゴーストは頬に両手を当てていやらしい笑い方をしたかと思うと、何かに気付いたような顔を浮かべ再びトレアに顔を突き出した。
「もしかして、お姉ちゃん…あのお兄ちゃんが好きなの?」
「なっ…!!!」
「あ、そうなんだ♪あ…じゃあもう付き合ったりしてるの…?」
ゴーストは残念そうな顔になり訊ねる。
トレアは流れで肯定したいと思いながらも、嘘をついても仕方ないと思い正直に答えた。
「…いや、まだ…だが…」
それを聞いたゴーストはコロッと表情を変え、嬉しそうに「えへへ〜」と笑った。
「じゃあトーマお兄ちゃんを私の物にしてもいいよねぇ?」
「な、ダメだッ―!」
トレアはつい強く反対してしまった。
「え〜、だって付き合ったりしてないんでしょ?」
「それは…そうだが…」
「じゃあいいじゃない」
「ダメだ、あいつは…」
(そうだ…トーマはいつか元居た…あいつの世界へ戻らなきゃダメなんだ…)
トーマはいつか彼自身の居場所に戻らなければならない、それなのにこの世界で何かあればトーマは戻りにくくなる。
そうさせてはいけないという思いが、トレア自身の彼への思いを封じ込めていた。
「…あいつにはあいつなりの事情もあるんだ…だから、ダメだ」
「もうっ!私そんなの知らないもんっ、お姉ちゃんのイジワルッ!」
「い、いじわるって、そんなことじゃ…」
「あ〜、わかったっ!お姉ちゃんはトーマお兄ちゃんを誰かに取られるのが嫌なんでしょ!だからそんなイジワル言うんだっ!」
ゴーストはまるで駄々っ子のように怒り、トレアの体を突き抜けて後ろに回り込んだ。
「うわぁッ―!?」
トレアは自分の体をすり抜けられ驚き、ベッドから立ち上がって後ろを振り向くがゴーストはそこにおらず、ぴったりとトレアの後ろにくっついていた。
「な、なにをっ―!?」
「お姉ちゃんは誰かにトーマお兄ちゃんを取られるのが嫌なんでしょ?…しょうがないからお姉ちゃんも一緒にしてあげる」
「な…どういう意味だ…?」
「ホントはお姉ちゃんだって、トーマお兄ちゃんにあんな事やこんな事されたいんでしょ?」
「そんなことっ…!?」
トレアの脳裏に、突然ビジョンが浮かぶ。それは自分がトーマに押し倒されている風景だ。
オレンジ色のライトが照らすベッドルームで、トーマは上の服を脱ぎ、自分は下着だけの状態で彼に覆いかぶさられている。
(な…んだ…これ…こんなのっ…)
トレアは戸惑った。勝手に状景が思い浮かび進んでいく。
「こ、こんな…よせ…」
「ほら、やっぱりそうじゃない…」
(もう、早く堕ちてくれないとグールのみんなに取られちゃうじゃないッ!)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塔9階・西側の一室―
グールと運悪く遭遇し、塔の一室に逃げ込んだトーマだったが、彼女の嗅覚は易々と逃がしてくれるものではなかった。
トーマは彼女と対峙したまま、この状況を脱するための手段を探していた。
だがどうにもこうにもなりそうもない。携帯しているのは剣と超振動ナイフ、ハンドガンとポーチの中に閃光手榴弾が2つ。
ハンドガンはなるべく使いたくなかった、当たり所が悪ければ魔物と言えど危険だ。閃光手榴弾は脅しくらいにしかならない上、ここに逃げ込む前に一度使っているので手の内は読まれている。剣とナイフでは間合いを詰めてしまい、逆に危険だ。
「もう逃げられねぇぞぉ…もう捕まれよぉ…な♪」
「誰がっ…!」
(…こうなったら一か八かだ…)
トーマは姿勢を低くし、グールに向かって突っ込んだ。そう、彼がとった行動は正面突破、真正面から挑むことだった。
「おっ♪力比べかっ♪」
グールは身構えたが、それがトーマには好機となった。
「…なわけあるかっ!」
トーマは彼女の真ん前まで近づい
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