捜索3日目になるこの日、トーマはトレア、ミラとは別行動をとり、ハンソン氏の会社にいるハーピーを訪ねていた。
「彼女はいなくなる前に何か言っていなかったか?」
「何かって?」
休憩所を出た屋上の快晴の下で、綺麗な緑色の髪のハーピーに話を聞いていた。ただ、普通なら暗いような若干の緊迫感を感じるはずだが、そのハーピーの声が高くポワンポワンとした話し方をするおかげで全く緊迫感の欠片も感じられない。
「どこに行く、何をする、というようなことだ。何か聞いていないか?」
「う〜ん…わっかんないなぁ。言ってたよ〜な〜、言ってなかったよ〜な〜」
ハーピーは遠い昔でも思い出すようにじっくり考え込んだが、結局は
「やっぱわっかんない。思い出したらまた話すよ〜」
ということで終わった。
ハーピーは羽根を広げ荷物を持って飛び立っていった。
空を眺めていても仕方ないので、続けてトーマは会社内にいた別の行方不明女性の友人に話を聞きにいく。すると、
「ごめんなさい、私は何も聞いていないわ…」
「そうですか…」
「あ、でも…」
と彼女は続けた。
「あの子、この前地下の倉庫に書類を届けに行ったとき、そこにいた男の子に一目惚れしたらしいのよ。それでたしか付き合うことになったって言ってたわ。だからもしかしたら彼に聞けば分かるかも…」
「わかりました。それでなんという方です?」
「えっと…たしか…アルフレッド…そう、アルフレッドって」
「アルフレッドですね。分かりました」
トーマはエレベーターを使い地下に下りた。
エレベーターを出たところは三段に積まれた木箱よりも少し高い位置にあり、スロープで下に下りられるようになっていた。
地下はすべての空間が倉庫として使われており、木箱が大量に積まれていて、男たちに混じりミノタウロスたちも働いていた。木箱は主に人の腰あたりの大きさのものがほとんどで、荷車を使って移動したり、数人で下に積み下ろしをしていた。
トーマは下を通りかかった男に声をかけた。
「すまない、アルフレッドという男はいるか?」
「ん?アルになんか用か?」
「行方不明事件の捜査なんだ」
「ああ、そう言うことか」
男は三段に積まれていた木箱をヒョイヒョイッと跳ねあがり、辺りを見回した。
「お、いた。おーい、アルー、お客さんだー!」
「客って誰だー?」
「行方不明事件の捜査なんだとよー、いいからこっち来てくれー!」
男が跳ね降りてくると同じくして、箱でできた迷路のような通路の中から男が一人やってきた。
「あれ?事件の捜査だっつーから、てっきり保安だと思ってたんだけど、誰だ?」
「俺はギルドの依頼で捜査してるんだ。あなたがアルフレッドさん?」
「ああ」
アルフレッドは真面目そうな好青年だった。荷積みの仕事もしているだけあってたくましく、誰が惚れても不思議はなかった。
「今ミリアさんの消える前の足取りを追おうとしているんだが、彼女は君に何か言っていなかったか?」
「…そうさな…いや、聞いていない…」
「そうか…」
トーマはふと、そのフロアの奥の方に別のエレベーターを見つけた。
「なあ、あれもエレベーターか?」
「ん?ああ。あっちのは馬車を入れる時のやつだよ。まさか馬車を表から入れるわけにもいかないからな。あとあっちにももう一台あるぜ。動いてるのはみねぇけどな」
アルフレッドの言うとおり、そのエレベーターの真向かいにも同じようなエレベーターがあった。
「使われていないのか?」
「さぁな。動くには動くだろうが、あっちは町の塀の真下だからな。使う意味がねぇだろ」
「へぇ…」
「なんであんなとこに作っちまったかねぇ、不思議だよ。あ、そうそう、不思議っつえばもう一つあってよ」
アルフレッドは腕組みをして話し出した。
「なんだ?」
トーマが訊くと、アルフレッドはそのエレベーターの横にある横開きの扉を指した。その扉は赤く塗装され、壁の灰色のなかでは目立っていた。大きさは三段に積んだ木箱より少し大きく、スロープの上の踊り場からであればすぐに見つけられた。
「あそこのドアは貴族や上流階級の方への荷物かあるらしいんだけどな、あの前を通ると必ず眠気が襲うんだとさ」
「眠気?」
「ああ、らしいぜ。俺は配置が違うからよくわからねぇがあのあたりの配置の奴らはたまになるらしい。んで、この前はそのせいで1人が居眠りしちまって軽い怪我しちまったんだ。中は鍵がかかってて担当しか入れねぇからどうなってるかは知らねぇ」
「へぇ…」
「っと、悪いな。無駄話しちまった」
「いや…」
「…頼む。ミリアを見つけてくれッ…!」
「ああ。最前は尽くす」
「頼む…」
そしてトーマはビルを後にした。
そして次の行動を考えつつ町を歩いていると、ばったりとミラに出会った。
「あら、トーマ」
「
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