来客〜師弟、姉弟〜

 国王・天染尊(アマソメノミコト)こと天宗院子暁(テンシュウイン シギョウ)の別宅で迎えた二日目。ベッドの上には、仲良くシーツにくるまれて寝息を立てている男女二人がいて、女の腰からは黄金色の尾が四本生えていた。
 ノックして幟狼が声を掛ける。
「龍瞳、入るぞ?」
 そう言って幟狼はドアを開けて部屋の中に入り、その二人の恰好を認識する。
「………二人とも、起きろ」

「…ん?なんだ…幟狼か…」

「なんだとは何だ、なんだとは」

「ああ、悪ィ…何時だ?」

「午前9時っ。朝飯もう食えるぞ」

「…そうか」
 龍瞳は眠い目を擦りながらベッドから抜け出した。横では相変わらず寝息を立てる魅月尾が、気持ち良さそうに眠っている。龍瞳は立ち上がると左肩に手をやり、首を左右に曲げてゴキゴキと鳴らした。曲げるたびに解かれたままの長い黒髪がなびいた。
「…幟狼は何時起きだ?」

「7時起きだ」

「早いな…」

「まぁな。つか、お前はまず服を着ろ」
 龍瞳は下着1枚で寝ていたため、色白な体や男性の毎朝の生理現象が一目瞭然だ。彼はまずズボンに足を通し始めた。
「あ、そうだ…魅月尾起こすから部屋から出てくれ」

「なんで?」

「魅月尾の服はあそこだ」
 龍瞳はズボンを履き終って、着物を手に持ったまま指差した。
「あ、そうね…」
 幟狼はそう言って退出した。龍瞳はまだ寝息を立てて気持ちよさそうに眠っている魅月尾に近づき、被っているシーツを取り去った。白い肌、ふくよかな胸、きれいな色の乳頭、金色の少ない恥毛に筋が一本。一糸纏わぬとはこういう事だ。
「…魅月尾、起きなよ」
 反応なし。
「魅月尾っ、朝だぞ?」
 揺すってみたが起きる気配なし。ふと見れば狐耳がヒクヒクと動いているので、龍瞳はその耳をつまんでクニクニとこねた。
「ひゃんっ!」

 魅月尾はビクッとして目を開け、耳の違和感を取り払うように撫でた。
「おはよう、魅月尾」

「…もっと普通に起こしてよぉ…」

「魅月尾が起きないからだろ?」

「だって…龍瞳様があんなに激しくするから…」

「へぇ〜、強請(ねだ)ったのはどこの誰だっけ?」
 龍瞳は魅月尾の耳に顔を近づけ、舌を耳の中に入れた。
「ひゃあっ!
 中…は、だめぇ…んっ………、はぁ、はぁ…」
 魅月尾は目をトロンとさせて息を荒くし、龍瞳は口を離して意地悪く笑った。
「…さて、ご飯できてるってさ。着替えて食べにいこ」

「…はい…」



 二人が服を着て出てくると、丁度使用人の男性が通りがかった。
「あ、おはようございます」

「おはようございます。昨晩は良くお眠りになれましたか?」

「はい」

「それはようございました。もし何かご所望があれば私どもに仰ってください」

「そうさせてもらいます。それから幟狼はどこに?」

「幟狼様はお先に食堂に参られております」

「じゃあ僕たちも」

「ええ」
 二人は食堂へ向かい廊下を進みだしだ。
「今日の朝食はおいしい魚ですよ〜」

「おいしくいただきま〜す」
 後ろから使用人が陽気に言うと、龍瞳がそう言って返した。
 
 食堂に入ってみれば、椅子に一人幟狼が座って先に食事を進めていた。テーブルの上には焼き魚とお吸い物と白米が湯気を上げて、食べてくれと言わんばかりに自らを魅せていた。
「よう、魅月尾」

「おはよう、幟狼」

「夜は楽しめたか?」

「はい、っじゃなくて…あ…えっと…」
 魅月尾は顔を真っ赤にして言い訳をしようとしていたが、楽しんでいないわけではないので否定しきることもできずアタフタした。男二人は「ヒヒヒ…」と笑い、龍瞳は席に着いた。
「………二人とも意地悪です…」

 魅月尾はムスッとして龍瞳の前に座った。しかし、隣の席が空いていて用意された膳の数に人数が釣り合わない。
「あれ、乎弥ちゃんは?」

「あ〜、まだ寝てるのか…
 あんた、悪ぃけど乎弥起こしてきてくれないか?」
 幟狼はそばにいた使用人の女性に頼んだ。
「はい、かしこまりました」

「乎弥は俺の部屋で寝てるはずだから」

「はい」
 しれっと言ったが、龍瞳と魅月尾にとっては驚愕の事実というやつだ。
「ごほっ…けほっ…、幟狼…昨日は乎弥と一緒に寝たのか…?」

「え?あ、あ〜、昨日は…というかいつもだなぁ。乎弥は小さい頃から俺にくっついて寝てて、まぁ年頃ンなれば離れるだろうと思ってたんだが。まぁ別に乎弥が好んでそうしてるなら別に意に介さないし、俺的には何の不都合もないしな」

「…そういうモンか…」

「まぁ、それでも良いとは思いますけど、私は。どちらかというなら越えちゃっても良いんじゃないかしら?」

「………」
 何を?とは訊かない龍瞳の優しさ。最近、魅月尾は無意識になのか大胆な発言をするようになってきた。三尾になっ
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