私の初めて〜サプリエート・スピリカ〜

『お、おかえりなさい』
「ただいまもどりました」
『どうでした、今日の研究の進捗は』
「いつも通りです」
『そうですか……』
「はい」
『…………』
「…………」

私の名前はサプリエート・スピリカ。故郷、ポロ−ヴェで精霊学者をしています。
著書でよく【求人広告】を出していると言えば思い当たる方は多いかもしれません。ダークマターと融合して魔物になった後も男性に恵まれず、切なる思いで書いていました。しかし、それに一向に応える男性が現れず、まだ見ぬ伴侶を夢見ながら、4人の闇精霊たちと研究を重ねる日々が続いていました。

ですが一週間前、そんな私の身に信じられないことが起こりました。なんと、私の助手になってくれる男性が現れたのです。しかも、その方は私が何度も著書で書いてきた【求人広告】を読んで下さったとのことでした。私の努力がようやく身を結んだみたいで、外には出しませんでしたが、心の奥底で飛び回って喜んだことは昨日のことのように覚えています。

【求人広告】を発見した彼は何故かその日の内に荷物を纏めてポローヴェへの旅へと出発したそうです。
彼は道中で未婚の魔物娘に襲われぬよう、魔物娘の嫁さんを持つ夫婦の運び屋に載せてもらったそうです。途中の宿は既婚者が経営する所に止まるなど、魔物娘夫婦の協力得ながらの旅という念の入れようだったそうです。

そしてポローヴェに到着するや否や、血眼になって私を探したそうです。あちこちを走り回って右往左往し、その日のうちに街の大部分を廻って、日が傾いてきた頃やっとのことで閉館間際の図書館にて一人で本を読んでいる私を見つけたそうです。

その時の彼の様子は今でも鮮明に脳裏に焼き付いています。肩で息をしながら、パンパンに腫れた両脚をかばいながら、別に偉くもなんともない私に頭をさげながら息を切らした声でこう言いました。

『あなたの本を読んでここに来ました。好きです。僕を旦那じゃなかった……助手にしてください。』

その時の私はと言うと、それが現実とは瞬時に受け入れられず、彼をみたまま、3分程表情1つ変えずに硬直してしまいました。その後やっと自分の置かれている状況が飲めた私は恥ずかしさの余り、持っていた本に顔を埋めながら呪文のように驚きの言葉を呟いていました。顔と耳から火が出るような火照りを感じました。あとで聞いた話ではそのときの私の顔は誰も見たこともない程、紅潮していたようです。

私の【求人広告】を読んで下さったことは素直に嬉しいのですがそこには私の欲望を赤裸々に綴ってしまいました。そのときの私は男性とそういったことがしたい一心に支配され、後先考えずに書いてしまいました。今振り返ると見るに耐えないような内容ばかり書いていたと思います。それを読まれたことを今更ながら後悔していました。
その時はやっと努力を結んだ嬉しさと【求人広告】を読まれた羞恥で上手く言葉を紡げませんでした。そして虫の羽音のような声で

「こんな私で良ければ……」

と一言つぶやいて応えました。

こうして彼は私の助手として働くことになりました。同時に夢にまで見た男性との同居生活も始まりました。
彼は普段は物静かで優しそうな印象の男性でした。私のように人と話すことが苦手なようで、口数はかなり少ない方でした。けれども、まだ人と話すことが苦手な私にとってとても安心できる方でした。

実際、印象に反せず彼はとても優しく、気の利く方でした。私が苦手としていた部屋の掃除や蔵書の片付けなどを、こちらが何も言わぬ間にやってくださいました。おかげで本が散乱して地震直後のように汚かった部屋が
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#9747;年ぶりに床が見えるほど綺麗になりました。料理の方はあまり得意ではないようですが、基本的なことはできていますし、何より手伝って下さって大助かりです。

学問に関しては得意ではないとおっしゃっていました。精霊学も全くの無知だそうです。けれども、ある日、頭を掻きながら本と向き合っている姿を見かけました。熱意はあるようで私としても嬉しい限りです。

だけど、まだしっかりお話したことがありません。というのも、まだ、男性と共同生活している現実を受け入れられないと共に、男性と面と向かって話すことはどうしても恥ずかしくて私の方から避けてしまっています。それに人との会話は昔から大の苦手でしたので、話そうにも話題が思いつきません。

それから、私が魔物の本性をむき出しにして襲ってしまうような真似をして彼を幻滅させたくありません。彼と初体験をするなら、もう少しお互いの理解を深めて、そして合意してからしたいと思っています。

けれども、魔物である私の身体はそうはいきません。彼が来てからずっと私の身体は欲望に素直です。
彼が側にいると、股間が疼き、じわりと愛液が染み出して
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