魔物娘との学園ラブコメの冒頭っぽいもの

「母さん!父さんとのセックスは僕を起こしてからって言ったよね!もう7時半じゃん!」

 雷鳴のように階段を激しく踏み鳴らして駆け下りてくるなり、雄二は居間でいちゃつく両親に向かって叫んだ。その髪は鳥の巣のように寝ぐせで乱れ、シャツのボタンをかう位置が無茶苦茶、ベルトが閉まっていない故、腰下までずり下がったズボンのウエスト上部からパンツが顔を覗かせていた。

「あら〜ごめんねゆーじ。お父さんの朝勃ち見ていたら我慢できなくなっちゃったのよ〜」

 ソファーの背もたれからひょっこりと彼の母が顔と湿った尻尾を覗かせた。その顔は熟したリンゴのように紅潮しており、小さく息切れしていた。恐らく背もたれの背後にある彼女の身体は一糸まとわぬ姿で、その下には彼女に敷かれた父がいるはずだ。

「文句言うな雄二、これはサキュバスである母さんにとって大事な食事なんだぞ。お前も彼女が出来たらわかるさ」
「だからって大事な息子を放っておく?今日遅刻したらペナルティなんだよ!!」

 彼の予想通り、背もたれの後ろから父の声がした。どうやら起きてくるなり、母に朝勃起を見られ、興奮した彼女に押し倒されたようだった。

「あぁん、待ってねユージ、今ご飯作ってあげるから……まず抜かなきゃ……」
「もう間に合わないからいいよ!母さん!このパン食べてくから!」
「あらそう?じゃあおでこに行ってきますのキスを……」
「ああもう!父さんにしといて!!じゃ、行ってきます!」

 そう言い残すと雄二は片手に菓子パンを持ちながら、家を飛び出した。後にはソファーの上で合体したままの両親が残された。

「あの年ならもう彼女いてもおかしくないのにな」
「大丈夫よ、ゆーじはいい子よ。あなたに似てイケメンだし。今にきっと可愛らしくて素敵な彼女ちゃんを連れてくるわ」
「そうだな、心優しい所はお前似だ。俺たちが心配するまでもないな。それより続きをしようか?」
「じゃ、ユージの言ったとおり、あなたに行ってきますのキスの分、たっぷりしてあげるわね
#9825;……んちゅ……」

 雄二が飛び出し、静寂に包まれた家の中では口づけの湿った水音だけが響き渡っていた。



「全く……あれが少し前まで離婚寸前まで冷え込んでいた夫婦なんて思えないよ……あっみゆきおばさん!おはようございまーす!今日もキレイですね!先週いただいたウナギおいしかったですよ!」
「あら、ゆうくん、おはよう。車とケンタウロス属には気を付けるのよー…………あぁ、旦那さんはあんなおりこうな子がいいかしら
#9825;」

 家の前を掃除していたところを雄二とすれ違い、挨拶を交わしたのはお隣に住むみゆきという女性だった。怒りという感情を知らなそうな落ち着いた雰囲気、未亡人の様な儚げな色気を持つ彼女だが、見かけによらず未婚である。だがそんな彼女の下半身は雄二とは異なり二本の脚ではなく、胴より続く長い尾が伸びており、その先端には鰭があり、ウナギを連想させる造形だった。それもそのはず、彼女は人間ではなく、鰻女郎と呼ばれる魔物である。
 彼の母親も、形こそは人間に近いものの、頭にはヤギのような角、背中には蝙蝠のような一対の翼、うろこのないトカゲのように伸び、先端にはトランプのスペードのようにくびれた尻尾を生やした、男性の精を糧とするサキュバスであった。最も、すべてのサキュバス含む、魔物がそうだが、自身の伴侶となった男以外から精を搾り取ることはない。

 パンを咥え、制服を整えながら走る間にも雄二は何人もの獣耳、鱗肌、不定形の身体、無機物の外骨格、頭足類の脚、節足動物や奇蹄目や蛇の下半身、背中の翼……を持った異形の女性たちとすれ違い、追い抜き追い越されていた。だがそんな魔物の女性たちに、雄二は目もくれることもなく走り続けていた。そう、これが彼らにとっての日常だからである。



 今から数年前、異世界へ繋がる門とともに魔物の大軍勢が現れ、この世界の全人類へと宣戦布告した。大混乱に陥った各国は武力を以てこれを迎え撃つも、魔法を伴う圧倒的力の前になすすべもなく敗北し、瞬く間に征服されてしまった。征服された人類は誰もが魔物による圧政が始まるものと恐れていた。が、そんなことはなく、彼らは人類に友好的に接しこの世界へと溶け込んでいった。
 その一方で異世界よりこの世界へと大量の魔力を流し込み、この世の理を大きく変えてしまった。人間の男性は、姿はそのままに、強靭な肉体と精力を持った生物、インキュバスへとつくりかえられ、人間の女性はサキュバス、ラミア、マーメイド、ハーピィ、ケンタウロスといった、異形の器官を持つ生物、魔物娘へとつくりかえられた。
 おまけにこの魔力、エネルギー保存の法則を無視して無尽蔵に増え続けるという、自然の摂理を根底から覆す恐るべきエネルギー
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