吹き荒れる砂嵐。
もう丸一日、止まない砂嵐の中をさまよっている。
バックパックの中には地図と商売道具と空の水筒だけ か…
「なんで…こんな事に…」
体が重い。足が動かない。熱で意識が朦朧とする。
目の前が霞んで…
「ぅ…」
あれ…生きてるのか…?
「目が覚めたみたいね。私はリトリア。ラミアよ。アナタ、名前は?」
若い女性の声に目を開く。
金髪の美しい、妖艶な女性がこちらを覗き込んでいた。歳は、25歳ぐらいだろうか。
視界の端には、確かに蛇の胴体が見える。
どうやら、彼女に助けられたみたいだ…
「ジェイク、です…」
「ジェイクね。体の調子はどうかしら?」
喉の渇き、脱力感、空腹感。
相当酷いな…
「あまり良くないみたいね」
気取られた。
「パンと水を持ってくるわ、待ってなさい」
と言い、部屋を出て行ってしまった。
「とりあえず、部屋の中でも見渡すか…」
上半身を起こす。
今、寝ているベッドのすぐ側には、テーブルがある。
他に、これといったものは無い。
部屋も狭いし、どうやら寝室っぽさそうだ。
「外は…おぉ」
窓から外を覗く。
暮れつつある太陽。小さなオアシスとその周りに生える植物。
道理で砂漠にしては涼しいのか。
「大したものじゃないけど、食べなさい」
彼女が部屋に入ってきて、テーブルに、パンと水の入ったコップを置く。
「十分過ぎます、リトリアさん」
「リトリア、で良いわ。あと、敬語もやめて頂戴」
「…十分過ぎるよ、リトリア」
「よろしい。 はい、お水」
コップを差し出された。
「どうも」
一気に飲み干す。
「っはぁ…」
生き返った…
ただの水が、美味い。
胃が動いてるのがはっきりと分かる。
それほど、胃が空だったのか…
「いい飲みっぷりね。まあ、砂漠で倒れてたんだから当然と言えば当然かしら。
ほら、もう一杯飲みなさい」
コップに水が注がれる。
「どうも」
また飲み干す。
「はい、パンよ。ナツメヤシのジャムは好きかしら?」
今度はパンを差し出された。
甘い香りがするジャムらしきものが塗ってある。
「食べたことが無いんで何とも… いただきます」
パンを口に運ぶ。
甘酸っぱい味が口に広がり、食欲を刺激する。
「美味い…」
思わず呟く。
「はい、もう一つ」
「あ、どうも」
またパンを差し出された。
うん、美味い。
あっという間に食べ終わってしまった。
空腹は最高の調味料とは正にこの事だなぁ…
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした。しかし、なんで砂漠で倒れていたのかしら?」
ああ、そういえばまだ説明してなかったな。
「東の村に行く途中、あの酷い砂嵐に遭って、丸一日砂嵐の中をさまようハメに…
砂嵐なんて滅多に、ましてや1日じゅう吹き荒れることなんて無いと聞いていたんだけどね
まさか、片道3時間の距離でああなるとは思いもよらなかったよ」
まったく、運が悪かった…
「東の村?随分逸れたわね。 ここ、砂漠の真ん中よ?」
床に置いてあった俺のバックパックから地図を取り出し、砂漠の真ん中のあたりを指差す彼女。
どうやら、地図にここのオアシスは載っていないみたいだ。
「これまた随分逸れた方向に…」
「まったく、ね。 しかし、私が拾ってあげなかったら、間違いなく野垂れ死にしてたわよ?」
「面目無い……ふぁぁ…」
大きな欠伸をする。
腹が膨れたら眠くなってきたなぁ。
日も暮れた、未だ疲れも酷いし、寝たい…
「眠たそうね。まだ疲れてるだろうし、寝た方が良いわよ?」
「それじゃあ、お言葉に甘えて眠らせてもらおうかな」
そう答えて、ベッドに横たわる。
「ええ、おやすみなさい」
明日は、彼女にお礼をしないといけないか。
まあ、とにかく寝よう。疲れた…
「んぅ…」
目が覚めた。
体を起こし、伸びをしてみる。
体の調子は、本調子とはいかないにしても、まあまあかな。
「あら、おはよう。よく寝てたわね。丁度お昼の用意が終わったところだわ」
声のした方に振り向くと、食べ物が用意されたテーブルが見える。
「ん、おはよう… って昼…?」
「ええ、もうお昼よ? 本当に疲れてたのね」
「かたじけない…」
ジャムを塗ったパンと、ナツメヤシのジュース、サンドイッチ。
挟んであるのは、塩漬け肉とチーズか?
「昨日とあんまり変わらないけど、文句は言わせないわよ?
里に食材を調達しに行こうと思ったらアナタが倒れていたんだから」
「申し訳ない…」
「まあ、とにかく食べなさい。お腹、空いてるでしょう?」
「それじゃあ、有り難くいただきます」
ベッドから降り、椅子に座る。
「ええ、いただきま
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