優しい雷に抱かれて

「ん、んんぅ……」

遠くで、雨音が聞こえる。

草薙薫は、頬に伝う水滴の冷たさに目を覚まし、身体を起こした。

辺りを見回すと、そこは洞窟のようである。外では雷鳴が轟き、激しい雨が滝のように降り注いでおり、 彼はその隅に敷かれた藁の寝床の上で寝かされていたようであった。

「僕……どうしてここに?確か……山菜を取りに山道を歩いていたら、雷が近くで……」

そこまでは覚えているのだが、そこから先はスッパリと途切れている。

寝床から起き上がり、薫は洞窟の外を見る。

激しい雨に混じって、雷鳴が時々洞窟の中を照らす。雷が唸るような轟音を轟かせると、薫は反射的に耳を塞ぎ、身体を縮ませる。

雷は、嫌いだ。この音には、嫌な思い出しかない。嫌な思い出がーーー蘇ってくる。

山菜を入れたカゴが見当たらないが、この天気では雨が止むのを待った方がいい。薫は立ち上がると、雷から逃げるように洞窟の奥へと向かって歩き出しーーー突然、洞窟の入口で雷が落ちた。

「うわぁあああッ!?」

眩い閃光と衝撃を受け、薫はその場に尻餅をついてしまう。クラクラと頭が揺れるのを感じながら立ち上がろうとすると、その正面に人影が立った。

「やっと起きたか、少年」

「ぁ、え……?」

顔を上げた薫の目の前には、女性が居た。

第一印象は、絶世の美女。女性にしてはすらりと背が高く、透明感漂う美貌は気品に溢れ、輪とした切れ長の瞳は知的さと妖艶さを併せ持つ。鮮やかな山吹色の帯で結ばれた、濃い藍色の着物はやたら裾の短く、豊満な胸元を強調するように着崩して纏っている。

しかし、あちこち跳ねた癖っ毛の長い蒼髪の上には、大きな二つの尖った耳、そして腰には狼のような尻尾。どことなくだが、彼女の身体は淡い青色の光を帯びているような気がする。

彼女は、紛れもなく魔物。ゴクリと緊張に生唾を飲み込む薫が固まっていると、女性は彼と視線の高さを合わせるように膝を曲げた。

「ほら。これはキミの物なのだろう?」

「あっ、それ……」

女性の手には、今しがた見当たらなかった薫のカゴが抱えられている。彼が頷いてみせると、女性は満面の笑みを浮かべた。

「やはりそうか。山道を歩いている間、ずっと大事そうに抱えていたからな。運んできた甲斐があった」

「あ、ありがとう……ございます。えっと……貴方は、一体……?」

「私か?私は珊瑚。キミ達人間からは……ああ、そうだ、雷獣?そんな風に呼ばれていたな」

雷獣。聞いた話では、このような雷雨の日に雷と共にやってきて、人間を襲うのだという。

話の流れから、彼女が自分を連れてきたのは間違いない。ということは、やはりそういうことなのだろうか。

「あ、あのっ、珊瑚さん。何故、僕はここに連れて来られたんでしょう……?」

「うん?それは、決まっているだろう」

やや掴み所のない感じの雷獣、珊瑚は満面の笑み。カゴを脇に置くと、ポンと薫の肩に手を置いた。

「キミを……夫にするためさ」

バチィッ!!

薫の肩に置かれた珊瑚の手から紫電の輝き。電流は一瞬にして彼の身体を駆け巡り、その無垢な瞳が大きく開かれた。

「ぅあ、ああ……?」

一体、何が起こったのか。グラリと薫の身体が傾き、石の地面に仰向けに倒れ込んだ。時折思い出したように手足はピクピクと痙攣し、身体が全く動かせない。痛み、ではない別の、自分の知らない感覚が甘い余韻となって麻痺した身体に残されていた。

「おやおや、少し強すぎたかな。まぁ、こちらの方が手間が省けていいな」

頬を掻きながらそう呟き、珊瑚は薫の身体を抱き上げると、寝床の藁の上に彼の身体を横たえた。さらに、薫の着物に手を掛けると力を込め、紙でも破るように真っ二つに引き裂いてしまう。

「ほぅ……思った通り、綺麗な身体だ。肌も柔らかく、雪のようで……なるほど、飽きない感触だ」

「や、やめへ……さわりゃない、へ」

雷の余韻が身体の中に残っているのか、口が回らない。むず痒い痺れが身体に残り、身体を捩っていた。

「ふふっ……私の雷は気持ち良いだろう?ここ数ヶ月、キミのためにタップリと蓄電しておいたからな。大切な初夜だ。お互い最高の一夜にしよう……」

薫の裸体を満足げに見下ろし、珊瑚は薫に覆い被さるように身体を倒した。薄い布越しにたわわな水蜜桃が胸の上で潰れ、柔らかな感触と触れた箇所からピリピリとした微弱な電流が薫の身体を撫でるように通りすぎていく。

「んっ……これは、たまらないな。早速、キミの味を味わってみるとしようか」

「んっ、く……っ!い、いやだ、ぁ……」

指一本動かせない薫に向かって、ゆっくりと珊瑚の顔が迫ってくる。彼女の興奮に合わせてか、身体の密着した箇所から流れてくる電流が強くなる。直接快楽神経を掻き回されているような感覚
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