「あー……、つまりこう言いたい訳かなお嬢さん? 『予期せぬアクシデントにより召喚してしまったので、元の世界に戻す方法は分からない』と」
俺は眉間を抓みながら生気の薄い美少女に質問する。
「その通り……」
肯定を返して来た彼女を横目に、俺は頭を抱えた。
――――――――
俺の名前は志戸礼、しがない男子高校生である。どうやら異世界に召喚されてしまったらしい。
正直まだ夢見てんのかな? と疑う気持ちは有るんだが、多分現実だろう。俺の記憶の中にはこんな地下埋葬所(カタコンベ)を改装したいかにもな研究室や、若干露出魔気味の西洋系銀髪セミロング美少女を見た覚えは無い。
露出魔気味なのは体温が低いせいで暑く感じるかららしく(実際触るとひやりと冷たかった)、そう言う性的嗜好が有る訳ではないとは本人の弁。あー、矛盾脱衣的な? と一度は納得したが、人並みの体温にも出来るらしいので単なる横着だろう。
死人だと言われた時には驚いたけど、やや不健康な引き篭もりにしか見えない。
「うーむ、それにしてもどうした物か……。帰る事も出来ないし、大抵の人とは言葉も通じない。はぁ……不安で胸が一杯だな」
俺が一人溜息を吐いていると家主が半眼で睨み付けて来た。
「私の一日分の食事を一食で平らげておいて良く言う……。しかも勝手にシーツを持って来て寝床を作っている……。遠慮の欠片も無い……」
家主である彼女、ロザミアは愚痴っぽく言っているがこれは既に約束を交わした事なので仕方がないだろう。召喚してしまった責任の一端が有るので住み込みの助手として雇ってくれると言った以上、衣食住を用意してくれるべきだ。と言うかそうして貰わないと俺は死ぬ。
「ロザミアの食べる量が少な過ぎるだけだろ。寝る場所についてはベッドが一つしかないんだし、一緒に寝かせてくれるって言うのか?」
「ちちち、違う。分かった……、明日には用意する……」
にわかに血色の良くなったロザミアは慌てて手を振り、フードを上げて顔を隠した。
正直凄く可愛いと思うのだが、見も知らぬ他人の俺を住まわせてくれるって言うんだから邪な心を持っちゃいけないよな!
人付き合い無さ過ぎてそこの寂しさに付け込んだらあっと言う間なオーラ出てる、とか思っても俺なんかが手を出して良い美少女じゃないよな!
「まぁ実際問題、うっかり関係ブレイクしたらマジで明日も知れぬ命となるから滅多な事は出来ないんですけどね」
「……? 何か言った……?」
「何でもない、それじゃお休み」
俺はソファーの上でロザミアに返事をして、首を傾げながら灯りを消す彼女を瞼の裏に焼き付けて目を閉じた。
一日目終了。俺はこの時、まだこの世界と魔物娘について良く知らなかった。そして、リッチである彼女――ロザミア・ルー・バルドゥ――についても。
――――――――
俺達は朝食を食べ終わると、ハーブティーを飲みながらこれからの予定を話し合う事にした。
「まず情報確認……。シド・レイ、あなたはこれから私の研究助手として働く……。期限は取り敢えず一ヶ月……、衣食住保障……、報酬についてはまた後で……」
相変わらずロザミアはゆっくりと喋る。何か妙に艶かしいんだが、素でやってるのだろうから仕方無い。
それにしてもカタカナで呼ばれると俺の名前がファンタジーファンタジーした感じになるな。
「ああ、それで良い。しかし一ヶ月でこっちの言葉を覚える事が出来るのだろうか」
「翻訳魔術を覚えるには十分……。それに、魔力の濃い所なら言葉を覚えなくても伝わる……、あなたがこの世界の魔力に馴染んでも言葉を覚えられる……」
俺の疑問にロザミアはじっくりと説明してくれた。
「……えーと、濃い魔力は俺の思考を伝播するので言語を介す必要が無い? しかも伝えたい事だけ伝わる? また、俺自体に魔力が馴染んでも同時翻訳的に言葉が分かるようになるから自然と言語を習得出来る?」
「その通り……」
専門的且つ複雑な説明を自分なりに噛み砕いて理解する。
ロザミアさん! ちょっと分かり辛いよ! にしても便利だな。
「うわー、ズリィ! 勉強しなくても分かる様になるのかよ!」
「私の場合は勉強した……。生きている人間相手でなければ通用せず……、翻訳魔術も万能ではないから……」
そう言ってロザミアは様々な物を宙に浮かせて見せた。
それらは俺の知っている漫画であったりゲームであったり……、つまりは地球で作られた物だ。
ロザミアは召喚魔術を研究している魔術師であり、異世界の文化に知的好奇心を持ったらしい。その頭脳をフルに活用して此方の言葉を学び、そしてクールジャパンに染まった様だ。
彼女の召喚術は所謂勇者≠召喚する為の物とは違い、本来は非生物にしか作用しない物だと
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