竹獲物語

ここは山中にある小さな一軒家。
一家は竹細工を売って生計を立てている。


そこにあるのは何処にでもある、ありふれた家族団欒の風景。

しかし、今この瞬間は張り詰めた空気が場を満たしている。

卓上に並ぶは136の牌。

一家は毎月のお小遣いの金額を決める麻雀大会の真っ最中だった。

起親 、一家の大黒柱 父・竹蔵(36歳)32000点
南家 、家計簿の支配者 母・よしこ(34歳)30000点
西家 、長男であり跡取り・燐(12歳)24000点
北家 、居候 レンシュンマオ・林杏(リンシン)(19歳)14000点

「立直(リーチ)!」

燐が仕掛ける。

切ったのは3索。

ドラは東

手牌の構成は
東東
5索6索
一ニ三四五六七八九

上がれば逆転

だが、ーーーー


「ローン!」

北家の林杏、ここでロン。

「げっ!!?」
青ざめる燐。それもそのはず、彼女はこういう土壇場で悪魔のような和了を見せることが多々あるのだ。

娯楽に対する興味が並外れて大きいレンシュンマオ。そして、林杏はそれらを最大限楽しむことのできる豪運を持ち合わせていた。

生粋の博徒である。

カタカタという音と共に林杏の手牌が開かれる。

「ヒィイイ.........ッ!!!!」
「うわ、これは.....。」
「たまげたなぁ......。」

發發發
索子の222、3、666、888

待ちは3索。

緑一色・四暗刻単騎のトリプル役満。

「えーと、点数計算は〜....。」
自らの手を覗き込んで確認を図る林杏。

「やめろ〜!!そんな傷口に塩を塗るような真似!!」
それを燐が必死に止める。もはや計算するまでもなく飛ばされたのは燐が一番わかっていた。

「いやぁー、相変わらず林杏ちゃんは土壇場で強いわねぇ〜。」
「本当にな。天賦の才って奴だな。」
夫婦のあっけらかんとしか会話をよそに、トリプル役満の直撃をくらい飛ばされた長男・燐は悔しそうにむくれる。

「今日こそは勝ってやろうと思ってたのに.....!」

「でも燐。あそこで索子は普通切らないよ。」
確かに林杏の捨て牌は索子が殆ど無く5索、1索が少しあるだけだった。
「赤ドラの5索を切った時点でかなりクサかったぞ今回のは。
まぁ、あんな鬼手が出るとは思わんかったが。」

「元気出して、燐ちゃん。次は勝てるかもしれないでしょ!」
林杏の慰めも、燐には逆に辛かった。

「う、うるさい!林杏のバカ〜!!」

「燐ちゃん!」

そのまま居間を飛び出し、自室にこもってしまった。

「ごめんなさい。私のせいで燐ちゃんが.....。」

「そんなぁ、林杏ちゃんが気にすることないわよ。」
「おうよ、女の子に負けていじけるくらいじゃまだまだだ。」

「燐ちゃん、私を嫌いになっちゃったんでしょうか?」

最近の林杏に対する燐の態度は随分とよそよそしいものだった。
昔はもっと素直で甘えん坊な子だったのだ。

「昔といえば、林杏ちゃんが来てからもう6年になるのね。」
「あの時は本当にびっくりしたよ。竹細工を取りに行ったらレンシュンマオが山の中に倒れてたんだからなぁ。」

「本当に、みなさんには感謝してもしきれないです。怪我をして倒れていた私を介抱していただいたうえに、こんな幸せな家庭においていただけるなんて私は世界一幸せ者です。」

「いいんだよ。きみ以上に良い竹を選別できる者はいないんだ。」

「ふふ、長年食べているものですからね。」

林杏は山中の竹の中から匂いや艶、肌触りの微妙な違いを敏感に感じ取り、最も良いものを選ぶことができた。

「そういえば丘の上の家族に頼まれてた籠が出来ていたんだ。配達に行かんとな。」
竹蔵の視線の先には、真新しい竹細工の籠があった。
「それなら私が届けてきますわ。
あすこの一人娘にも最近会ってなかったですし。」
「あら本当?悪いわねぇ。お願いできる?」

「ええ。たまに彼女を見ていかないとまた部屋に篭りって変な研究に没頭し続けますからね」





林杏が籠を配達に向かう家は、小高い丘の上に立つ一軒家だ。
この地域では珍しい、洋風の館だ。

「はぁああああ〜」

「なによ、大きな溜息ついて。」

ここは白蛇とその夫、さらにその娘の三人家族で切り盛りしている丘の上の小さな診療所でもある。竹細工に使う竹が採れる山から比較的近く、山の中なので他の人との付き合いも多くないため自然と交流が出来たらしい。

目の前にいるのはその一人娘の白蛇だ。ここでは貴重な同年代の友人である。

「燐ちゃんの様子が最近おかしいのよ。私なんか悪いことしたのかな?」

「うそぉ?あの元気だけが取り柄のわんぱく坊主が?」
白蛇が形の良い眉を吊り上げる。
彼女も竹細工屋の一人息子のことはよく知っていた。
なにせ、彼を母親か
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