変調と欲情


「お姉様ァアアアアアアアアアアアーー!」

背後から浴びせられるけたたましい呼び声に聞き覚えがあるような気もするが、私はきちんと無視します。
何も見えない。聞こえない。

「お姉様!!無視しないでくださいませ!」

しかし、なぜかこの戦乙女は回り込んで私の目の前に立ちはだかるのです。

「チッ!」

「お姉さま!!こんなところで会えるなんて!
このティナ、あなた様のことを片時も忘れたときはごさいませぬ!
そしてついにこの日、再び相見えることが叶いました!
あゝ、わたくし達はやはり運命の赤い糸で結ばれているのですね!」

私のわざとらしいくらい大きな舌打ちも、一切効き目がありません。

その赤い糸とやら、貴方の血で染めてやりましょうか?

「誰これ?アンジュの妹?」
「断じて違います。冗談キツイですよ。
学生の頃の後輩です。」

あの頃からティナは可哀想なくらい何一つ変わっていません。
馬鹿と同じで死ななきゃ治らないんでしょう。

「そちらの可愛らしい殿方が、お姉様の担当する勇者様ですか?
初めまして。わたくしティナと申します。
......お姉様とは一つ屋根の下で長い一夜をともにした仲でございます///。」

「ひ、一つ屋根のしたで......ッ!!?」
「たまたま寮部屋が一緒だっただけです。語弊のある言い方はやめていただけませんか?名誉毀損で訴えますよ。」

「あぁん!お姉様、相変わらず辛辣!でも、貴方のその罵りが気持ちイイッ!!」

「うわ、キモ。」
こらこらオグル君。事実とは言え、もっとオブラートに包んで言ってさし上げないと。

「ヒィン!!流石お姉様の愛弟子!!
初対面なのに辛辣ゥッ!!」

「うわ、キモいですね。」
暫く見ないうちに変態に磨きがかかったようですね。

キャラが濃すぎて消化しきれません。

この調子では、新キャラの勇者様のインパクトが薄れかねませんよ。

ティナのせいで話が始まってから全く彼に触れてあげていませんからね。

当の勇者様は、私の勇者様に話かけています。
「あんたも勇者なの?俺はオグル。
アンジュのパートナーだ。」

ああ、年上に敬意のかけらもないウチの勇者様ったら。
ごめんなさいね。敬語も使えないガキンチョなんですけど、実はすごくいい子なんです。勘弁してあげてください。

「あぁ紹介が遅れてしまいまったね。
その通り、僕も君と同じ勇者候補さ。」

そんな糞生意気なオグル君に対して、彼はきちんと腰を落として同じ目線になってから話かけます。

なんてできた殿方なんでしょう。
ティナには勿体無いくらいです。

「僕の名はジャスティス。

ジャスティス・ヒーロー。宜しくね。」

キラキラ☆ネーム。

勇者様、キラキラ☆ネーム。

本名ですか、それ。

顔は割とハンサムなのがまた笑えます。

私は吹き出しそうになるのをなんとかで堪えました。
親からもらった名前を馬鹿にするのは流石に失礼極まりますからね。その辺の社交辞令はわきまえているつもりです。

そこはオグル君も察しているのか必死で笑いを誤魔化すために俯きますが、肩がプルプル震えています。

「ヨ、ヨロシク。」
オグル君の笑いをこらえる必死の形相をジャスティスさんは子供特有のはにかみ顔だと判断したようで、勇者同士固い握手を交わします。

「初めまして。ご紹介にあずかりました。わたくし戦乙女のアンジュと申します。」

あぁお腹が痛い。腹筋鍛えられそうです。
でも大丈夫。私の口角はつり上がっていません。

「こちららこそ。貴方のことはティナから毎日毎日聞かされておりました。」
そりゃあお気の毒様。同情しますよ。

「いやぁ、彼女の話は何度聞いても飽きませんね!!そして今日、ついに本人にお会いできた!
私はなんて幸運な男だろう!!」

ガシッと手を握られます。

ヤベェ。こいつも重症だ。キャラが濃い。
おまけに若干暑苦しいです。顔は爽やか系イケメンのくせに。


「ジャスティス様。そろそろ......」

「あぁ、そうだ。もうそんな時間だったね。
お祈りをしなければ。」
そう言って彼は天に向かって神の祈りを捧げます。

そういえば教団の定める祈りの時間は今頃でしたね。このご時世にそんなものを律儀に守る糞真面目な人間がいるとは思いませんでした。

ちなみにこの時間帯の神は、天界の食堂で夕飯食べてます。食べるのに夢中で下界の声なんて聞いちゃいません。

「天に召します我らの神よ、
明日も世界が平和でありますように!
みんな幸せに生きられますように!」


「なに?どしたのアンジュ。なんで顔抑えてるの?」
「いや、眩しすぎて。」
素面で言っているのですかねこの人。
この人には、正論ばかり言う人は効率良く人に嫌われるということを知ってほしい思います。

「で
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