Last Dinosaur

レーヴィが死んで、私がレーヴィになった。

そこからの私の行動は早かった。着物や家財や社、そして土地をすべて売り払い、金を作った。
その金を情報屋に渡し、あの男の所在や動向を突き止めさせた。情報屋は私が金を払うとニヤつきながらそれを受け取る。言い値を払ったのだが、恐らくかなり盛られた額なのだろう。だが、どうでもいい。金はもはや私にとっては無用の長物だ。

次にあの子が使った薬の残りを調べて成分を突き止め、量を増やした。復讐に足る量になるまでに一月を要した。準備は整った。

今あの男は家族とキャンプに出掛けている。
その場所が見渡せる丘で、私は一週間前から雨乞いの舞を舞っていた 。本来山頂で火を炊き、我が主である龍神が如く舞うのが常だが、あの男には湖に獣の臓物を投げ込む忌わしの術を使った。

岩山に立ち、私の自らの怒りを舞で表す。そして、雨を呼ぶ。恵みの雨ではなく災いの雨を。

青い空が灰色に染まり、ポツリポツリと雫が垂れる。

だがまだ足りない。もっとだ。

私の怒りはこんなものじゃない。

目には目を。歯には歯を。外道には外道を。

舞は激しさを増す。髪を振り乱し、悪魔の形相の蛇が舞う。

怒りが天へ昇っていく。
私の思いを汲み取ったかのようなどす黒い暗雲が立ち込める。

私は舞の中に水の魔術の動きを混ぜ始める。それに合わせて岩山の麓の古井戸が水柱をあげた。古井戸にはあの薬をありったけ投げ込んである。
こいがたきを昇るが如く、水柱は天へ向かう。

雨音が段々と激しくなる。私は雨水を操り、結界を自らの周りに作る。周りの草花は徐々に朽ち始めている。

奴らもそろそろ浴びた雨水からひりひりとした痛みを感じ出したようだ。テントの中へと逃げ込んでいく。

だが、逃がさない。

雫が絶えず落ち、空が哭く。私が盛った毒を受けた雨を落した。あの男の元へ、災いを落とす。

小さな悲鳴が聞こえた気がした。空耳だろうか。さぁ、最後の仕上げだ。

私はありったけの魔力を悲鳴の元へ飛ばした。魔力は雨水を集め疾風の如くそこへ向かい、強烈な雨風と成って吹き込む。

雨に溶けた災いがテントを溶かし、穴を開けた。その中に容赦無く雨水を叩き込む。
今度の悲鳴は空耳ではなかった。三人分の悲鳴が私の元へと届く。

「うふふ、ふふふ....。
はは!あはははあああははははは、はははははははは!!
あははははははははははははははははは!」

わたしは舞をやめ、蛇腹を岩場に下ろして狂ったように笑う。きっと私はこの世のどんな悪魔より悪魔的な笑顔をしているんだろう。

「....ねぇ、見ているレーヴィ?貴方の仇.....とったよ?
今から、あいつのところに行って謝らせるからね?
その後で、私も貴方の処へ行くからね?」


私はよろよろと立ち上がると、甘くて黒い薬を飲んだ。そして傍に置いてあったレインコートに、雨を中和する薬を垂らして袖を通す。
二股に別れた脚までをすっぽり覆えるコートだ。これならあの雨の中歩ける。私は岩山を下り、あの男の元へと向かった。あの男に自らの罪を思い知らせる為に。


あの男はテントの中で妻と共に虫ケラのように倒れていた。クズには相応しい最期だ。

「うあ....ああ。」
うずくまる奴の元に、私は屈み込んだ。

「痛いか...?思い知ったか...?
あの子の痛みを......!」

そして、蛇特有の長い舌をちろちろと出してあざ笑う。
それを見てこいつもわたしの正体に気づいたようだ。なぜこんな目に合っているのかも。

だが、今更もう遅い。お前達はこのままボロ雑巾のようになって死ねばいいんだ。

「助かりたいか?」
私は男の髪の毛を掴んで顔を向けさせる。

「た、助けてくれるのか?」
「助けるわけないでしょう?」
男の顔を殴りつける。引っ張られた男の髪の毛は、皮膚と一緒に剥がれて私の指にとどまる。

痛みで絶叫する男の首を私は締め上げた。
「あの子が死んで!!お前みたいな奴が生きている!!そんなの!!許されるはずが!!無い!!」

私の指が、男の溶けた首の皮に食い込み穴を開ける。血液の流れが血管から直接伝わる。

「た、助けて......
俺はどうなってもいい...。ただ、妻と子どもだけでも.....!」

自分を犠牲に、家族を助けたいらしい。だが、その姿は私の怒りにさらに火をつけた。
私の脳裏に、生まれてこれなかった小さな命と絶望し命を絶った母親が浮かぶ。

「.........なんでよ?なんでその気持ちをあの子とお腹の赤ん坊に分けてあげられなかった!!?
こいつらとあの子たちのなにが違うっていうのよ!!!!?」

あんな事、許されるはずが無いんだ。

「すまなかった......!
でも、お願いだ。悪いのは...俺だけなんだ。妻と子供に罪はないんだ.
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