眠たい。
とても眠たい。
なんだろうか、生気が奪われている気がする。
ふむ、妹達には生気も精気も渡していない筈なのでこれは勘違いなのだろうか。
何も考えずにガラスに写った自分を見つめる。
そこに写ったのは、、思ったよりもというか、想像以上にやつれ、検査などしなくともハッキリと疲れていると分かる、
目に光の灯っていない自分だった。
ーーーー
「こりゃ、どういうことだよ…」
厳密には、自分の眼球には、世界を映すための部位には白い部分が。
白目が存在していなかった。
全て黒。
光を映していない、真っ黒な、闇。
怖い。
何もわからない中で唯一把握できたのは、怖いという感情だけだった。
病院か?眼科か?
違う、多分、これは、そんな医学的なものじゃない。
身に起こっている異変を考えても、心なしか視力が高くなっている気がするだけである。
まぁ、何はともあれ、妹達に見せるわけにはいかない。
幸い今、目が覚めたのは深夜である。
上手く抜け出そう。
抜け出して、解決しよう。
一応通行人にも見られないように、フード付きの服を選択する。
サングラスなどあればいいのだが、残念ながら俺は持っていなかった。
さて、気は進まないが背に腹は変えられない。
ちゃっちゃと行ってちゃっちゃと帰ろうか。
俺を殺した奴のとこへ
ーーーー
「はいはい、家が24時間営業でよかったね。」
「…恩に着ます。」
殺し屋である。
まさか自分を殺した人と、二度も会いにいくとは思うまい。
若干体が震えている気がするがまぁ。
そりゃ、正直怖いわ。
「で?何用?流石に僕達は妹を殺してずっと一緒に居たいんですぅ、なんていう仕事は受けられないよ。」
「いえ、そんな、馬鹿げた依頼じゃなく…というか、依頼じゃなくて。」
フードをゆっくりと下ろし、彼に目を見せる。
「この、俺に起こっている異変のこと、分かるかなって。」
「…ほう…」
まじまじと見つめられ、人差し指と親指でまぶたを上げられる。
目を無理矢理オープンさせられた気分である。
「…確かに、普通の、生きてる人間の目じゃあないね。こりゃ。」
「じゃあ、俺は、死んでるっていう」
「いやいや、そんな簡単に結論を出すのはナンセンスだろう。」
パッと手を離される。
目がしぱしぱする。
異常なくらいに瞬きをする。
いてぇ。
「シオリ、分かるかい。」
「しばしお待ちを…お茶を入れましたらそちらへ向かいますので。」
「だそうだ、休むといい。随分疲れきっている様子だしね。」
立っていた自分は半強制的にソファーに座らされた。
しかしまぁ、自分はちゃんと寝ていたし、飯も食べていたし、それなりに健康的に過ごしていた筈なのだ。
しかしまぁそれでも眠たい。
寝てしまおうか、とか思ったけれど、それはお茶を入れてくれているシオリさんに無礼というものである。
「はい、終わりましたよ。」
「あぁ、ありがとうございます…」
ハーブティー、ということは分かるがそれ以外はわからない。
紅茶とかコーヒーとか嗅ぎ分けれる人って尊敬する。
「…さて、失礼しますね。こちらにお顔を向けてくださいますか?」
「あ、あぁ、はい。」
言われたとおり伏せていた顔を前に向ける。
見やすいようにかるーく目も大きく開く。
「あら…これは…」
「分かるかい?」
「えぇ、一応。近いものは。」
「ほんとですか!?」
救いの手に感情が高ぶってしまった。
声を荒らげてしまったあたり、本当はかなり参っていたのかもしれない。
「これは瘴気目ですね。」
「…なんですか、その、写輪眼みたいな、厨二病臭いやつ。」
「あら、私達が魔法を使う時点で大分厨二病ではありませんか。」
ごもっともである。
「それもかなり重そうです。瘴気目は本来少しだけ白目が残るものなんですけどね。」
「重そうって…これ、戻せるんですか?」
「えぇ、戻せますよ、強制的にですが。」
そう言うとシオリさんは俺の目に手を当て、良く把握は出来なかったけれど詠唱のようなものをした。
「目を開けて構いませんよ。」
「……いや、まぁ、目を開けても分からないんですけどね、違い。」
「ほら、鏡、自分の顔を見ればいいんじゃないかな。」
殺し屋から鏡を受け取り、自分の目を見る。
…あぁ、いつも通りの目だ。
「いつかは自分でコントロールできるようにならなければいけませんね。これは。」
「…その、質問ばかりで悪いんですけれど、瘴気目って一体…」
「軽く言うとその人が善か悪か把握できるようになるんですよ。オーラの可視化っていうんですかね。」
「…そんなもの、俺には、見えませんでしたけれど。」
「それは開眼していきなりパッと能力を使える程この世界は
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