「ねぇにぃ。」
「んー?」
「キスしよ?」
「ぶふっ」
ーーーーキスーーーー
夕時、リビングでバイトの求人誌を読みつつコーヒーをすすっていると隣にマユが這うように寄ってきてそう言った。
何を、コロ助でも見たのか、あいぎびゅーほーまいらぶ。
「何を考えてんだ…」
「いや?まぁ、そのね?作品コンセプト的にね?贔屓って良くないと思うんだよ。」
「作品コンセプトとか言うな、口を慎め。」
メタネタを使えるキャラクターは俺だけでいいのだ、この世界がパラレルだと知っているのは俺だけでいい。そうさ、俺だけがこの世界の真理に気付いているのさ。
真の理に気付いているのさ。
「というか贔屓ってなんだよ、してないだろ?」
「シズクにはキスしたことあるんだよね?」
「ぶはっ」
本日二度目の吹き出しだった。
いや、そりゃもう盛大に吹き出しましたよ、コーヒー。
シミ取りめんどくせぇなぁ、コーヒー。
というか当の本人が忘れてること蒸し返すなよ、恥ずかしいだろうが、いやん。
「な、なんで知ってる…」
「シズクが教えてくれたんだよ、私はキスしたことがあるって。」
「何でまた急に。」
「私はお兄さんに抱き締められながら強引に唇を奪われたことがあるって教えてくれたんだよ。」
「熱い風評被害だ!!」
どちらかといえば被害にあったのは俺だ、強引に唇を奪われたのは俺なんだ。
もうとっくに黒歴史として忘却していたのに何故思い出させるか。
「まぁそれは冗談としてさ、やっぱりね?私にも、私達にもキスしないと釣り合い取れないでしょ?」
ジリジリと俺に体を寄せ付け、目をランランと輝かせ俺の頬に唇を近付ける。
それを左へ受け流す。
「俺に魅惑は効かんぞ。」
「うぐっ、ほんとなんで効かないの!?」
体質的なあれか、それとも妹はダメと本能が告げてるのか。
悪いな読者!妹とアンアンしてるのを見たい場合は別のとこへ行くんだな!!
「うー、でもほんとそうだよ、シズクにだけってのはずるいんじゃない?」
「なんだよ、私にもしてくれ、って事なのか?」
「ざっつらいと。」
鳴らない指を鳴らそうとし、こちらに指を指してくる。
ちなみに頬近くまで来たのを遠ざけた後こいつ俺の膝の上に対面で座りやがった、ぬかりねぇ。
何も思わないけどな。
膝に座られるって結構羨ましがられるシチュエーションではあると思うのだけれども、相手が妹だからな、しかも発展途上。
何か思ったら色々負けだろ、多分。
「キスすりゃいいんだな?」
「えっ、えっ?嘘、そんなすんなりしてくれるの?」
首に腕を回して、こちらを見上げるように見てくる。
こんなキラキラした目見るの久しぶりだなぁ…
この前遊びに誘った時くらいだろうか、こんなキラキラしたマユを見るのは。
「…まぁ、確かに贔屓は良くないしな。」
「…やったぁ。」
本気で嬉しそうな顔をし、こちらに微笑みかけてくるマユさん。
まぁ多分こいつが望んでるのとは違うことをするわけだけども、うん、罪悪感は若干あるけども、しょうがない。
いくら魅惑が効いてないといえど正直サキュバス種とキスをして耐えられる気は………やめておこう。
「目、瞑れよ。」
「うんっ」
目をきゅっと瞑り、こちらに唇を寄せてくる。
…悪いな!キスをしてとは言われたが唇にとは言われてないぜ!
「ん…」
「んっ…ん…ん…………?」
ゆっくりと手で横に顔を向け、頬にキスをする。
案の定マユは不思議そうな声を上げたがまぁ…まぁまぁ。
ちなみに頬は親愛やら厚意やらの意味合いを持っていた気がする。
額にしようかとも思ったが敬愛、友情、ではないしな、妹相手ならやっぱり頬だろう。
いや妹相手ならっていうか妹相手にキスすんのおかしいんだけどな!!
あと頬なら極度のブラコンシスコンじゃなくてもやるだろう、という気休めである。
おで、しすこん、ちがう。
「…にぃ?」
「うん?キスしただろ?」
「何で頬?」
「指定はなかっただろ?」
「……意地悪っ嫌いっ!」
ポカッと俺を叩いて凄い勢いで膝の上から降りてしまった。
あー、機嫌損ねたかぁ…いや仕方ないだろ、俺も貞操ががが…
ポケーっとやっちまったなぁみたいなことを考えてると、マユは途中で立ち止まってからこちらに振り向いてから…
「…バカにぃだけどやっぱ大好き。」
…可愛い奴である。
ーーーー
「えへへへぃえへへへへへへぃ」
「どうしたのよマユ…」
「にぃにキスしてもらっちゃったぁ…」
「うそっ!?マユまでっ!?」
in女子会。
えへへ、やったね、1番乗り。
この前の会議後、それぞれキスしてもらおうってなったのだけれど、どうやら私が一番早かったみたいだね。
「はぁ…お兄様
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