ナデナデ。

ラミア種ってのが嫉妬深い事で有名ってのは、図鑑をあんまし読んでねぇ人も知っと思う。

白蛇なんかは、もう被害報告全てにヤンデレ要素が含まれてるしな。

ヤンデレっつーのは、好きな人中心に考え過ぎて病んでいくっつー、まぁ、たまらねぇ人には恐ろしく可愛いし、メンドクセェって奴には凄まじくメンドクセェ性格ってこったな。

ちなみに俺の場合はメンドクセェ、と思ってる。

まぁメンドクセェとか思ってたって、そんなん本人には言わねぇし、気になるところといえばそこだけで、他のは文句つけらんねぇくらいに最高なわけで。

何がいいてぇのかっつーと、ウチのかみさん、ミヤっつーんだが、これがまたラミア種の枠に外れず嫉妬深いのである。

大体の旦那さんは、嫉妬の炎が燃え盛った時点で押し倒され絞り尽くされするのだろうが…

俺ァ違った。
押し倒されねぇし、焼かれもしねぇ。

つまり俺がこのかみさんよりも圧倒的に強いっつーことである。

誘惑されて尻尾で巻き取られ捕食される、みたいなこと図鑑には書いてあったんだけど、俺がかみさんと出会った時、尻尾で巻き取られはしたもののキツくなかったので脱出。

…は?みたいな顔してたミヤを腹いせに褒め殺した所、なんかこれまた好かれちまったみてーで、ストーカー的アピールをされなし崩し的に交際に発展したわけである。

つまりこのラミア、発散ができていない

そしてこれまた嫉妬してる所が可愛いので、俺も俺で意地悪しちまう。

悪循環である(俺にとっては天国)

そんな悪循環の末に…

「主人様主人様主人様主人様主人様主人様主人様主人様主人主人主人主人主人主人主人様様様…」

こうなった。

いや、まさかここまでなるとは思ってなかった。

「…お、おい、ミヤ?」

「なんでしょう…」

「ちょっと…拗ね過ぎじゃねぇか?」

「ふん…主人様には分からないのです…私は貴方様の事が大好きですのに…それが…分からないのです…」

ちょっと拗ねすぎてる。
アカン。

事の発端は近所に住んでる家族の娘さんとばっか遊んで(意味深ではない、マジで)やってたのが問題だったらしい。

まぁ俺的にもちょーっとばっか構ってやれてなかったかなー、みたいな所はある。

「…ごめんって、許せよ…」

「……」

「その…遊んでやるから…」

「………」

「…なんでもするから。」

「わかりました許しましょう」

き り か え !

「確信犯だなお前」

「何のことでしょうか?」

すげぇいい笑顔してやがる。
許さざる負えねぇ。

「さて、では、なんでもしてくれるのですよね?」

「…あー」

「し て く れ る の で す よ ね ?」

「……ぉぅ」

「ふふ、それでは…」

あー、性欲から逃げてたのもここで終わりかー。
いい人生だったなー、もうちょい別の女の子とも触れ合いたかったなー。

「…ナデナデを、所望します。」

「……はっ?」

予想と全然違った。
いやもっとキスしろくっつけずっこんばっこんあはぁんいやぁんくらいは覚悟してたんだけども。

「な、ナデナデ?ナデナデでいいの?」

「えぇ、ナデナデがいいです。で、じゃなくて、が、いいです。ナデナデ。」

どうやら謙遜とか遠慮とかではなく、真面目にナデナデをして欲しいらしい。

「うん、まぁ、お前がそれでいいなら…いいけど…」

「宜しくお願いします…」

シュルシュルと近付いてきて体に尻尾を巻き付けて来る。
甘えのポーズである、苦しくはない。

「…やはりここが一番落ち着きます…」

「あぁ…そう…」

俺の胸に顔を埋めて、うっとりとした表情でそう呟く彼女。
ちなみにこのままほっとくと寝るか欲情する。
猫かよ。
蛇だろお前。

「…はやく、はやく撫でてください」

「…おう」

ゆっくりと手を乗せ、彼女の髪に手櫛をかける。

「ん…っ」

目を細めて撫でを受ける嫁さん。
いつ触っても柔らけぇ髪してるよなぁ、手櫛かけるっつーか、櫛かける必要性を感じねぇもんなぁ。

「…気持ちいいか?」

「はい…とても………」

あー、これは欲情じゃなくて寝るパターンだな。
良かった。

「…でもなんで急になでてくれなんて。」

「…貴方様が近くの子供のことを何度も何度も撫でていたからです…」

「…あー。」

なるほどね、つまり自分もして欲しくなったわけだな。

「ので…私をなでてくれれば貴方様の手に着く香りはあの娘のものでなく私のものになりますから…。」

「…」

違った。
全然違った。

予想以上に病んでた。

「…今日は私が良しと言うまで撫でてもらいますから…」

「…それ、今日中に終わる?」

「…………」

「答えて??」

…これは一日潰れるな…確実に…。


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