さて、と、いきなり本題に入ろうか。
俺が努めているのは土木工事の仕事である。
何をしているかといえば、石どけたり森整備したりではない。
人間、力では大体魔物には到底叶わないので力仕事などは大体任せるしかないためである。
では何をしているかというと、電動ドリル磨きである。電動ドリル磨き。きゅっきゅって。
まぁ、整備士というやつなのだが。
この仕事、聞こえでは簡単そうなのだが。
無駄に綺麗にしないと怒る上司はいるわ、一日に回ってくる量は300ちょいとかで、もう、なんか、目が回る感じなのである。
そしてもちろん定時に帰りたい俺は、たかが電動ドリル磨きに超絶集中するわけである。たかが。
さらにいきなりだがたとえ話をしよう。
例えば某配管工が桃を助けるゲームで、敵キャラや邪魔なものがなければとてつもなく簡単に終わると思うのだ。
これを俺に置きかえよう。
俺がドリルを磨く仕事で、後輩さえいなければ、簡単に終わるはずなのだ。
なにが嫌かって、なにが面倒かって、それをひとつずつ区切ってお伝えしようと思う。
あと後輩ってところに釣られた人は演劇部入るといいぞ、演劇部。女子多め男子少なめだから上手くいくとハーレムになる。マジで。
青春時代をやり直せないまで育っている大きなお友達は…そうだな、近くの小学校にマスクとサングラスにフードかぶって突撃するといい。
それでは、見せ付けよう。
ーーー
まず朝、職場の扉を開けると同時に社員は皆挨拶をする。いい事だ。
その中で一人だけ挨拶をせずに無言で寄ってきてぶつかって来る奴がいる。
「あっ、すいません、見えませんでした。(棒)」
頭には触覚が生えていて、下半身は虫のそれ。
ジャイアントアント、という魔物である。
直訳すると大きなアリ。ジャイアントアントってネーミングセンスはなかなかいいと思う、ほら、ジャイアント、アントで、駄洒落というかそのすg(以下略)
いつもならグリグリでもしてやるところだが、今日の目標はスルーである。
うん。
「そうかそうか、ちっこ過ぎて俺がなんだか分からなかったんだな。」
「ちっこくないです!!先輩くらい!先輩くらいすぐ越します!!」
「あー、そう、そりゃ楽しみだ」
「うぅー!」
…これスルーできてるのであろうか。良くわかんないけど、多分大丈夫。
俺は後輩をスルーして自分の持ち場につく。
ちなみにこのジャイアントアント、ちっこいが個体的には基本的怪力なので、重機的扱いである。
ちなみにお姫さまだっこされたこともある。
死にたい。
電動ドリルが何本も回ってくるとはいえど、それは使った後の話なので基本的朝は暇である。
そんな時はコーヒーでも職員に注いでやったりもする。
あぁ、この会社、割と緩い所があるので、ノルマさえ達成できれば遊んでようが何してようが許す、という風紀なのだ。
なので、俺と同じで仕事がないと…
「…先輩いい匂いしますよねぇー」
「背中にくっつくな、暑い。」
こうなる。
十中八九こうなる。
「またまたぁ、クーラー着けてるんですから暑くないでしょうに。」
「訂正、暑苦しい。」
「性格は冷たいですね…」
後いかにも「今日」スルーしているような話をしてきたが、これを毎日である。
正直そろそろ嫌ってくれてもいいんじゃないかとすら思う。
嫌われたいわけじゃないが、好かれるのも、うん、ごめん、邪魔なのだ、俺はそもそもに人が苦手である。
年下も苦手である。
そして女子が苦手である。
虫は平気だけど。
なんでそんな苦手のエレクトリックパレードなので、どう扱っていいかわからないし、この冷たい反応のせいで傷つけて居ないかと内心ヒヤヒヤなのである。
冷たい反応をしてヒヤヒヤとはこれまた面白い言葉遊びみたいになったな、小説にでも使えるだろうか。
「…いい匂いっていうか、もうこれ女子の香りですよ、女子臭。」
「変な事言うな…そんなわけないだろ、柔軟剤だ柔軟剤。」
「えーっ、女子臭しますよ!」
他愛もなすぎてなんか何かに申し訳なくすらなってくる。
許されてるとしても仕事をしてない罪悪感ががが。
取り敢えずこの背中にぴっとりとくっついてる後輩を引き剥がす。
「ぅぁー」
気の抜けた声を出して剥がれた。
離れた、というより剥がれた、という感じなのが状況をうまく伝えられていると思う、うん。
「なんでそんなに離れようとするんですか。」
「いや…それは…」
「なんでですか…」
苦手だから、なんて率直に言えないし、傷付けたくないから、なんて臭いセリフも言えないので、適当にあしらっておく
「職場だからな、休憩っぽい時間とはいえ、けじめだよ、けじめ。」
「じゃあ外ならいいんですか?」
…これは確実にデートの誘いに
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