狼とわたくしのおはなし。

「さぁ、飯ができたぞ。」
「うーっす」
「今日はレバーの炒め物だ」
「おーっす」
「骨風味」
「うぃーっs!?」

そんなどこか抜けた会話をしているのはワーウルフの『月』。
そして俺、『海里』。

「え、骨風味ってなんなの?」

「その名の通りだ、骨粉を混ぜてみた。」

「…それ、大丈夫?おもに俺の胃袋的な意味で。」

「まぁ大丈夫だろう、苗木がもの凄い勢いで成長するタイプの骨粉ではないから。」

「なにその骨粉怖い」

そして俺は食卓に着く。
テーブルの上にはレバーの炒め物の他に、冷奴(勿論ネギはない)味噌汁、サラダ、と、バランスの良い食事が運ばれていた。

え、手伝えって?
甘いな…爪にホイップクリームと餡子を乗せてその上からハチミツをかけたくらい甘い。

このワーウルフ、すげぇ奉仕タイプなのだ。

もうメイドなんじゃねぇかなってレベルの。紅い館の時を止めれるタイプのメイドといい勝負できるレベルの。

とまぁここまで言ったら分かってくれるだろうが、手伝おうとすると彼女、声を大にして
「貴方はそこに座っていろ!私が全てする!大丈夫だ!安心して待っていてくれ!!」

、と。

なんだよ、どこのファンタジー世界のやられちゃうキャラだよ。

安心して待っていてくれは死亡フラグだよ姉さん。

「ごちそうさまでした。」

と、彼女の性格を知ってもらったところでご飯は食べ終わった。

骨粉は…まぁ、想像に任せる。
不味くはなかった、とだけ言っておこう。

「それじゃあ私は食器を洗うとしよう。
貴方はどうする?」

「んー、俺はちょっとすることがあるから」

「なんだ、することって…。
…あっ、溜まっているのなら私が相手するぞ?」

「溜まってねぇよ、そーいう事簡単に言うんじゃねぇ」

「…んむぅ、仕方ない。またの機会にしよう…」

そう言うと彼女は宣言通りキッチンへと食器を運びに行った。

…ちなみに溜まっている、クッソたまってる、ひとつ屋根の下で美人と二人で暮らしてて、尚且つパンツやシーツやゴミ箱までその美人に片付けられているのだ、自慰の1つも出来やしない。恥ずかしい。非常に。

ちなみに(part2)月と俺は幼なじみで、月の両親が不在のため、我が家に居候しているのだ。

ちなみに月曰く、
「ちょっとジパングで浅漬けの作り方教えてもらってくるわー、ナスの。」
とだけ書き残したメモが机の上にポツンと残っていたという。

あぁ、そうだ、さっき言ったするべきこと、をしなくては。

するべきこと。

それは。

…ブラッシングである。

ブラッシング(進行はまだしてない系)である。

月の毛はもっふもふでふっわふわでふっかふかでもう触り心地が素晴らしいのだ。

しかし触ると何故だか顔を真っ赤にして怒ってしまう。

ので、俺は考えた。
どうしたら合法的に月の毛を触れるか、と。

その結果がこれだ

「ブラシーぃぃぃぃ」

ドラえもん風に、部屋の真ん中で一人ブラシを取り出す高校生がそこに居た。
というか、俺だった。

説明するまでもない、月はワーウルフだ。
ウルフだ。

狼だ。

つまりワンコなのだ。

ブラシの誘惑に耐えられる筈がないのだ。

多分。

という事で俺は自分の部屋に戻り、ガサゴソとブラシを取り出したのであった。

準備は完了した。

俺の右手にはエクスカリブラシ(定価520円)が握られている

「おーい、月ー」

平常心を保ちながら月に話しかける。
ブラシを持った右手は背中の後ろに隠しながら。

「なんだ、まだ皿洗いが終わっておらん、もう少し待ってはくれんか」
「いやいや、話を聞いてくれるだけでいいんだ」
「ん、なら、聞くだけなら。」
「月、いつも家のために働いてくれてありがとう。」
「な、なんだ、急に…」
「俺はそんな月が好きだ」
「 」ガッシャーン!!
「!?」

月が手に持っていた皿を落とした。

「ど、どうした!?大丈夫か!?」
「大丈夫だ!!せ、洗剤をかけ過ぎてしまってな!!少し滑ったんだ!!さ、幸い割れていない!続けろ!!」

らしい。
洗剤で滑ったらしい。

声裏返ってるけど大丈夫かな。

「お、おう…でな、そんな月にプレゼントを買ってきたんだ」
「ぷ、プレゼント?」

耳がピクリと動いた。
ふっ、食いついてる食いついてる。

ちなみに尻尾はブンブンブンブン横に振れている。
後ろにおいてある胡椒がぶつかって吹っ飛んでった、哀れ胡椒。
後で拾ってやるからな。

「そ、そのプレゼントとはなんだ?」
「ふふ、それは皿洗いが終わってからな?」
「お、お預け…と、言うわけか、よかろう、こんなもの2秒で片付けてやる」
「もうちょっと丁寧に洗って欲しいなぁ!?」

彼女は意気揚揚と皿洗いを再開した。

ふっへっへ、次は
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