普段喋らない子は行動が凄まじかったりするわけで。

あぁ、俺だ。お兄さんだ。

今は買い出し中だ。

そして帰り道。
木に登って降りれなくなっている子猫を見つけた。

「あー…こーいう猫良くいるよなぁ…」

買った卵が割れないように床にレジ袋をゆっくりと起き、木の枝に手を掛ける。

木登りは得意だ。
消える足場に挑戦してすぐに下に落ちるような某岩男の様なヘマはしない。

「よっ、と…怖かったな…もう大丈夫だぜ。」

太平洋のトビウオと言われた俺の木登り能力を舐めるな。

いや、言われてないけど、太平洋ってどこだよ、ジパングだっけ?

「…っとと、抱えながら降りるのって結構ムズイな。」

子猫を抱きしめながら一歩一歩慎重に降りてゆく。

へへ、後少しだ。

と、つい後少しだからと細い枝を踏んでしまう

「やっば……っ!?」

案の定枝は「ばきっ☆」という音を立てて地面へ落ちて行く。

アイテム二号があれば楽に行けたのに…

ただ猫は助けなければ。
なんとか、なんとか背を下に…

地面まで爪楊枝一本分くらいという距離。
結構痛いだろうなぁ…

「…っ………………?」

ドス、という鈍い音は鳴り響いたが痛みは何故かない。

「…なんで…あっ、ね、猫、大丈夫だったか?」

うなーん、とひと鳴きし、手にすり寄ったあと猫は歩いていってしまった。

大丈夫そうである。
猫はこうでなくては。

「……なんで痛くなかったんだ?俺の体はアイアンへと進化していたのか?」

背中が妙に湿っぽいが、多分冷汗だろう。
怖かったし。
そんな事を考えながら体を起こす。

「…うへぇ、俺も年なのかねぇ。」

地面に置いたレジ袋を手に取り、また家路に戻る。

オホーツク海のナメクジが聞いて呆れる。
あれ?東シナ海のマグロだっけ?

ま、なんでもいいか、全て嘘だし。

「…今日は卵閉じでも作っかなぁ」




家に着いた。
普段通りに扉を開けるとこの頃は…

「おかえり!にぃに!」

こう…目の前に女の子が待ち構えている。

「おう、ただいま。」

こう返答するのもほぼ日課と化してしまった。

「………おかえり」

「おっ、お、おう、ただいま。」

「……」

まさかアヤからもおかえりが聞けるとは思っていなかった…が、別に気を許してくれた訳ではないらしい。
いつも以上の仏頂面である。

不機嫌そうだなぁ…

「…んぁ、あれ、シズクは?」

「シズクは散歩しに行ってるー」

散歩か、そうか、魔物娘だもんな。
ずっと家にいるわけもないか。

「あー…散歩…ねぇ…えっ、あいつ、あの学生水着以外に持ってたか?」

「んー、あれ、服じゃなくて皮みたいなものだからなぁ…どうだろ、なんか着てるんじゃない?」

皮?え、あれ皮だったの?脱皮とかするの?
っと、本題はそこじゃねぇ。

「……誘拐とかされねぇかな。」

「シズクに限って大丈夫だよー、あの子の魔力、サキュバスの私よりも高いし。」

「えっ」

えっ

「遠距離なのに水の膜とか玉とか作り出せるんだよ?凄いよね、そんな強い魔物でもないのに。」

「…強いのか?」

「そりゃあもう、にぃになんかイチコロだね」

「……」

実に複雑な心境である。
男の俺よりも小さい女の子のが強い、というのを魔物娘だからと言ってどうも受け止めきれない。

いや、まぁ、誘拐されなそうで…良かったけど…。

「…ただいま。」

「おっ、シズクお帰りーっ」

噂をすればなんとやら、シズクが帰ってきたようだ。

というかこのサキュバス、俺以外の時はお出迎えしてないんだな、いいのか?いいのか。

「…お兄さん。」

「んぁ、なんだよ?」

「ただいま。」

「えっ、あ、うん、お帰り?」

なんだなんだ、今までこんな事なかったぞ

「…シャワー浴びてくるね。」

「あ、あぁ…行ってらっしゃい?」

「一緒に入る?」

「!?」

「ふふ…冗談。行ってきます。」

……い、いや、マジで何だ、昨日までは意に介せずというか、眼中に無い感じだったのに…

「あー…シズクもにぃにに惚れましたなぁ…」

「何言ってんだ…後、も、ってなんだも、って。」

「片恋第一号は私で、結ばれるのも私だよ?」

「…兄妹は結婚できねぇよ。」

「義理だし?」

「義理でも…あ、あれ、義理でもダメだよな?」

ダメじゃなくてもダメってことにしないと押されそうだ。

「俺は料理作ってくるよ。」

「あっ、手伝う手伝うっ」

シズクのことは気になるが…まぁ、何とかなるだろう。
というか多分関係ない。
関係ないと信じたい。

ーーーーー

「ごちそうさまでしたーっ!」

「ごちそうさまでした…」

「お粗末さまでした…っと。」

いつの間にか一緒にご飯を食べるようになった。

ちなみにマユが俺の膝の上に座ると聞かなかったのをなんとか制止
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