どこからか鳥の囀りが聞こえてくる
優しげな木漏れ日が照らす山の中、一人の青年が手際良く薪を集めていた
「こんなもんか、んぐぐ…」
大きく背伸びをして腰を鳴らしさあ帰ろうという正にその時ふっと辺りが暗くなる
ポツ…ポツ…
細かな水滴が空へ向けた手の平に落ちるのを感じるとすぐにざあざあと本格的に雨が降り始める
あいにく青年は傘を持っていなかったが慣れ親しんだ山を下るだけだ
濡れてしまった薪は乾かさねばならないが問題ないだろう
しかし青年は慌ててしまったのか石に躓いてしまう
そのままの勢いで急斜面に身を乗り出し────────
「ぁ」
息を呑んだ青年は薪をばら撒きながら盛大に転がり落ちるのであった
「クソ痛ぇ…」
元居た地点を見上げると4
#12316;5m上にある
幸い目立った怪我は無いが泥塗れで薪も拾い直しだ
今は帰ることを優先しようと辺りを見渡した目に岩の割れ目が映る
そこそこの大きさだが周りの木々に埋もれるようにひっそりと目立たない
かなりの頻度で山を訪れていたが今まで気付かなかった
また落ちるのもごめん被りたい、雨宿りでもするか、と洞窟の入り口付近に座り込む
暇つぶしに歌でも歌おうかと思った矢先、雨音に混じって変な音がすることに気付く
重い何かを引きずるような不気味な音
それも自らが身を休めている洞窟の奥から聞こえて来る
青年は立ち上がりジリジリと後ずさる
すぐにこの場を離れた方が良いと本能が告げているが同時に一体何が潜んでいるのか確かめたいという好奇心が首をもたげて来た
しかし悲しいかな、そんな思考を巡らせる間に音の主がすぐ近くまで迫っていることに彼は気付かなかったのだ
暗闇が割れたのかと錯覚するほど白い肌、全長を視界に収めることが困難と思われる長大な蛇体、何よりも両眼を覆う仮面が眼前の存在こそ毒蛇の王たるバジリスクなのだと嫌でも思い知らせてくる
何秒経っただろう
それはきっと刹那、しかし青年の脳は自らを生かす為極限まで時間を引き延ばす
…完全に腰の抜けた状態では何の意味も無いが
『ここ、私の住処』
薄い桃色の唇が小さく開き、か細い言の葉を紡ぐ
その一言に侵入を咎める意図を読み取りどうにか立ち上がった青年は洞窟の主に背を向け逃げるように、実際に逃げる為に走り去ろうとする
「す、すみませんでしたっ」
結果から述べると逃走は失敗した
走り出そうとした青年の手首は鱗の生えた腕にガッチリと掴まれている
痛みは無いがびくともしない、力の差は歴然と言えよう
「勝手に入ってすみません、助けてください…」
動転した青年は只々懇願する、べっとりと濡れた背中の原因は雨か汗か
『雨で困ってる…んだよね…?そっちは出口、だよ?』
対するバジリスクの少女は珍しい来客に浮かれていた
そのまま少女は自分の家に案内しようと青年の手を引き洞窟を奥へと進んでいく
灯りの無い洞窟を手を引かれながら移動する
しばらくするとうっすらと明るい空間に出た
奥に見える小さな家は少女のものなのだろう
「なあ、俺は食われるのか」
平静を取り戻した青年は、不意に立ち止まり不安そうに疑問を口にする
『ど、どうして…?そんなこと聞くの…?』
美味しそうな匂い…
#9825;と考えていた少女は図星を突かれて内心穏やかではいられなかったがそれはすぐに否定される
「麓の村にたまに来る教団連中が蛇の魔物は人間を丸呑みにすると言っていた」
正直なところ青年も疑いを持ち始めていた
一時は死を覚悟したが目の前にいる少女はとてもそんな怪物とは思えない
しかし長年の刷り込みはそう簡単に消えるものではなく
故に不安を取り除きかったのだ
『それなら…私の口、見て』
あ
#12316;ん、と口を広げるがどう見ても青年のものより一回り小さい
現状行える安全確認は済んだが別の理由で目を奪われてしまう
湯気のたつほかほかと温かそうで唾液が糸を引く真っ赤な口内を甘い吐息が鼻にかかるほどの距離で見せつけられゆっくりと男性器が膨らんでいく
と、少女が口を閉じて離れる
『もう、怖くない…?』
「あ、ああ」
女の子の前で勃起するなどあってはならない
それなのに名残惜しく感じてしまう自分がいることが恐ろしい
また頼めば見せてくれるだろうか───────────────
いけない、と浮かんでくる煩悩に蓋をして再び歩き始める
『ここ、だよ…私の家。お風呂、入ろうとしてたから沸いてる』
「ありがとう、服は…」
『桶が置いてある、その中に入れて。着る服は…私、下は持ってない…知り合いに、男物の服を頼んでおく』
「そこまでしてもらうのは申し訳ないな」
『は、裸で過ごすの…?』
ボッと少女が赤くなる
考
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