極みとは
剣を持ち、武に生きる者ならば誰もが目指す頂点とも言える高み
俺もその極みを目指す剣客の一人のはずだった。
-Human-
ジパングにいた頃の俺は武士の名家に生まれ
その才覚から100年に一人の逸材と呼ばれ持て囃された
確かに乾いた砂に水が染み込むがごとく技を身につけ
10の頃には道場に並ぶ者が居ない程の力をつけていた。
気付けば自分の周りには自分を畏怖の目で見る大人ばかりになっていった
その頃からだろうか、満たされない、乾きのようなものを感じるようになったのは
極みの境地に居る者は一度刀を振るえばその一太刀で千の敵を斬るとも
槍を持てばその一突きは海を割るとも
弓を持てばその矢は千里離れた敵の心臓を穿つとも
そんな絵空事のような境地、そこに立ちたい
その願望だけが膨れ上がり、ジパングを離れ大陸に渡りまだ見ぬ強者と戦いたい
そしてその戦いの中で極みを目指したい
そこに至る事でこの渇きは癒されると
そう思うようになった
そこから行動は早かった。
家督を返上し、大陸行きの船を捜した
もちろん家からの反対はあった、母には泣かれ、父には親不孝者と罵られた
そんな事も自分には遠い出来事に感じられ、心動かされることも無かった
大陸に渡ってからは日雇いで用心棒をやり、行商の護衛で路銀を稼いで旅をしていた。
ジパング出身で腕の立つ剣士とくればそこらで噂されるようになった
ぜひ俺に仕事を頼みたい、という者も出てくるほどだ
そうして食うに困ることも少なくなってきた頃、リザードマンの彼女に出会った
-Lizardman-
修行と婿探しのための旅をしていた。
住み慣れた故郷を出て2週間程だろうか
風の噂でジパング出身の腕の立つ剣士が居るという話を聞いた。
ジパングは人と魔物が良き隣人として共存しているため魔物に対して偏見を持つものが少なく
その上ジパング出身の男は気立ても良く、夫として申し分無いと魔物の間でも評判だ
そんな男を婿にできるチャンスがあると聞いてじっとしている事ができるだろうか、いや、できない(反語
そんなこんなでまだ見ぬ婿殿への期待でその豊満な胸を膨らませながら街道を歩いていた。
すると腰に2本の剣を下げたジパング特有の服を着た男が見えた。
運命を感じずにはいられなかった。
-encounter-
男は正面から歩いてくるリザードマンの女とぶつからないように街道の隅に寄って歩く
するとリザードマンの女も自分の真正面に寄ってきた。
立ち止まって困惑する男に向かってその女は告げた
「貴様が最近噂になっているジパングから来た剣士だな?」
「……噂と言うのは知らんが俺がジパングから来たという事は間違いない」
答えると女は満面の笑みを浮かべて予想外の言葉を続けた
「…私と勝負してもらいたい。」
「は…?」
男にはリザードマンの女から恨みを買った覚えは無く、誰かから刺客を送り込まれる所以も無い
(そういえば港町で読んだ魔物図鑑にあったな……)
リザードマンという魔物は腕の立ちそうな男を見つけては勝負を挑む、と
戦いを挑まれて断る理由は無かった、臆して立ち止まったり道半ばで倒れるようなら極みの境地など到底辿り着けるわけも無いのだから
「わかった、相手になろう。」
短い思考の後にそう答える
「ふふ、そう言ってくれると信じてたよ…なら早速……」
背中の剣を抜こうとする彼女をあわてて制止する
「待て、往来で刀を抜くわけにもいかん、場所を変えよう」
「……それも、そうだな」
目先の事に心を奪われ、周りに気を回せなかった自分を恥じるようにリザードマンは頭を掻きながら視線を泳がせた
「……と、言ったものの俺もこの辺りの地理には疎い
どこか刀を交えるにふさわしい場所を選んでくれないか?」
男が言うと、リザードマンはどこか誇らしげな表情を浮かべ
「ああ、いい場所を知ってる、着いてこい」
と言って手招きしながらわき道に入っていった
(ふふ、周囲の地理を下調べした甲斐があったというものよ)
悪い笑みを浮かべながらリザードマンは道を進んでいく
数分歩いたところに所々風化した石畳の敷き詰められた場所があった。
「ここは……遺跡……か?」
「うむ、この辺の遺跡は大体発掘も終わってるからな、邪魔が入ることも無いだろう」
一呼吸置いて互いに獲物を抜く
腰に挿した二本の刀の内の一本、肉厚で切れ味よりも頑丈さを優先した刀――蛮刀を抜いた
リザードマンは背負った幅広の大剣を構えた
「――いざ」
「――勝負!」
先手を取ったのはリザードマンの方だった
リザードマンは大剣を背負うように構えて踏み込んでくる
素早い踏み込み、そして
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