後編



『さーて、始まりました、『第一回、最強竜騎士決定戦』! 会場のアナウンス及び実況担当の魔女っ子で僕っ子の、モイガナがお送りするよー!!ちなみに解説役はホテルのオーナー兼、この大会の発起人であるこのお方』
『数筋の白銀髪を持つサキュバス。本名は旦那様以外には秘密よ♪』
『という二人でお送りしマース!』

 バンバンと花火代わりの弱体化させた炸裂魔法が空に木霊するのは、開催地であるヴォルカ・フリュードの中でも一番の大きさを誇る――前魔王時代の過去から今に至るまで竜騎士の試合を行ってきたという、由緒正しき闘技場。
 そこに魔法で拡声された魔女の声が木霊している。

『さて本名不詳のサキュバスさん。何故この大会を開こうと思ったかお尋ねしてもー?』
『この街は昔から名だたる竜騎士を輩出してきた街なの。だけど、最近はこの辺り平和でしょ。だから『竜騎士って何やってんの?飛んでるの見た事な無いんだけど』って声も多くてね。この際だから、竜騎士の凄さとかを見せつけようって、この大会を企画したのよ』
『ホウホウ。で、本音は?』
『ぶっちゃけて言っちゃうと、街興しよ。最近は各地の魔界化が進んで、温泉が各地に作られてきたから、温泉街もテコ入れが必要なのよ。それで街興しの面倒な役目を、私が押し付けられちゃったって訳』
『うわーい。世の中のしがらみと、世知辛さが見えちゃったゾ』
『良いのよ私の事は。今回の主役はホラ』
『そうですよー!今回の主役は、ワイバーンおよびドラゴンの背に跨って、雄姿を披露する竜騎士の皆さんです。では会場の皆様、壇上に居らっしゃる竜騎士様たちに盛大な拍手をー!!』

 会場の二人の会話を聞いて苦笑顔だった観客から、ぱちぱちとの拍手が闘技場内に木霊する。

『はい。ストーップ、煩いですよー!あんまり大きな拍手だから、耳塞いじゃったじゃないですか。僕が』
『でね、選手の紹介なんだけど――』
『ボケ殺しとは恐ろしいですね!でも、めげませんよー僕は。後でお兄ちゃんの膝の上で泣きますけどね!!』
『ねぇ、話続けても良いかしら?』
『一度ならず二度までも!今回は「めげてるじゃないの」と「座位でするのかしら」の、二つの突っ込みが出来るのを用意したのに、見事にスルーですか!!あ、どうぞお話続けてください。あと、睨むと皺増えますよ?』
『自分が一生ロリだからって、皺の話を出すなんて――あ、褒めて無いから、無い胸張らなくていいのよ?』
『ふふーん。無い胸こそ、サバトの誇りですから。それで僕を貶そうと思っても無駄ですよー!』
『……で、選手の紹介なんだけど、面倒だから試合の前の入場で出てきたときにするわ。隣の魔女がね』
『おおーっと、ここで行き成りのキラーパス!――って本当に聞いてませんよ。原稿はありますよね。え、その場で考えろって、プロフィールとか貰ってないんですけど。あ、あの……無茶振りキター!!』
『ホラホラ、あんまりはしゃいでいるから、闘技場の竜騎士様たちが困惑顔よ。それに会場のお客さんに手を振り続けて、疲れてないかしら?』
『半分は貴女の所為ですからねー!あ、竜騎士様たちはスタッフの指示に従って一度お下がりを。会場の準備が済んだら、係りがお呼びに参りますので〜。ソレまでは暫しの、愛しい奥様との語らいを、きゃ♪』
『ハメを外し過ぎて、大会に影響しなければ許可します』
『会場のお客様たちは、是非ともこの間におトイレを済ませたり、おつまみ飲み物を買って置いて下さいね。ちなみに僕のお勧めは、まかいもフリッターとエールです。フリッターの塩気とエールが最高。さらにケチャップつけて食べるとなお良し!』
『見た目に反して、好みはオヤジね』
『ハッ、うっかり本音が!あわわ、バフォ様に怒られる〜……』

 などと喧しい会話が続く中、騎士たちは割り当てられた控え室へ、観戦客は闘技場内に設置された売店へと向かって行った。






 闘技場の中央でガギリと金属と金属が噛み合わさる音が響き、古の姿に戻ったワイバーンが咆哮を上げ、周りの観客が熱狂の声を上げている。
 その闘技場の観客席の一番上の段に、シュラーキとウィードが居た。
 二人とも何時も任務をこなす時に身につけるものを着て立っている。つまりは、シュラーキはウィードの足が掴む取っ手が肩に付いたハーネスと航空用防寒着を、ウィードは薄いビキニ状の布だ。
 シュラーキの手の中には、朝食時に気に入ったのかまかいもフリッターがあり、ウィードは彼に後ろから手を回して抱きついた格好で、竜騎士の戦いを観戦している。

「古の姿のオオトカゲが二匹居たら、流石に大した迫力よね〜。あのサキュバスも良い所に目を付けたと思わない?」
「うーん。僕としては、普通に温泉の効能とか種類とかを宣伝したり、何処に出しても恥ずかしくない名物を作った
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