ぴんぽーん、と自室のチャイムが鳴る音が聞こえた。
「うぐぐぅ〜……」
朝が弱い俺は呻き声を上げながら、枕元においてあった携帯電話に手を伸ばす。ボタンを押して日時を確認。
時刻は午前七時。会社が休日である土曜日。
幾らなんでも、休日の午前のこんな早くにチャイムを鳴らすなんて、どう考えても非常識極まりない。
このボロ屋の大家ですら、家賃の取立てにこんな無茶はしない。
それに昨日から今日の明け方にかけての飲み会での酒が抜けきっていないのだから、ここは無視して寝て、訪問者にはまたあとで来てもらうことにしよう。
ぴんぽーん、とまた鳴った。居留守だ居留守。
ぴんぽーん、ぴんぽーんと二度連続で鳴った。いい加減にして欲しい。
ひんぽーん、ぴんぽーん、ぴぽぴんぽーん、と今度は少し調子を変えてきた。
このまま放って置いたらどうこのチャイムの鳴らし方が変化するのか興味が湧いたが、このままでは某名人バリの十六連射などされるかもしれないため、泣く泣く俺は布団から抜け出し、寝癖が付いているであろう頭に手櫛を入れつつ、玄関までの短い距離を歩いた。
「はいよー、朝っぱらからどちらさんっすか?」
「どうもー、いつもニコニコ、黒猫魔女の箒便でーす。お品物をお届けに参りましたー」
玄関を押し開くとそこには一人の少女。
いや少女といっていいのか、頭に三角帽子手に箒を持っていることから察するに、最近メキメキと宅配業の市場規模を拡大しているサバト系金融資本の宅配業者なのだから、もしかしたら少女と言い表してはいけない歳――俗に言うロリばばぁの可能性も捨てきれない。
「あのー、受取書に判子かサインが欲しいんですが〜……」
「ああ、申し訳ない。どうも朝が苦手なもので」
俺の脳内で巡らせていた考えを悟らせないために、そう苦笑しつつ目の前の少女(?)に話しかける。
「判ります。ウチのバフォ様も少々朝が御得意ではなくてですね、不用意に起こそうものならば鎌が飛んできますから」
宅配業と言えども客商売。俺だけに恥をかかせないために、身内の恥を曝してくる辺り流石である。
逆に俺は魔女娘の言葉に笑えばいいのか、それともバフォメットのご高名はかねがねと言えばいいのか少し悩み、とりあえず愛想笑いだけして受取書に視線を落とした。
しかし受取書にサインをしようとして、ふと違和感を覚えた。
田舎の両親から届く野菜は基本的にハーピー飛翔便だし、俺が良く使う通販大手の密林アマゾネスはお抱えのマッスル猛牛便。
黒猫魔女の箒便を好んで使用するような相手に覚えが無い。
そこでよくよく受取書に視線を向けて見ると、品物欄に『愛玩道具(生もの)』の表記。
ああなるほどね、愛玩道具ね。むしろ愛撫道具だろうか。ストレートな表記だなこりゃ。俺がもし実家住みなら、家族会議間違いなしだ。
「って、こんなもの頼んだ覚えは無いので、受け取り拒否していいか?」
「えー、困りますよ。受け取り先はここで間違いないですし」
「いやだってよ、誰とも知らないやつからこんなもの貰っても……」
「受け取ってもらえないと、わたしがバフォ様にこんがり肉にされてしまいます」
うるうると涙目で見上げる見た目ロリ少女に、大の大人が抗えるはずも無く、着払いじゃないし良いかと受取書にサインをして、魔女娘に渡してやった。
「ありがとう御座いました。また魔女の箒便をよろしくデス!」
最後の『です』だけ異様に英語っぽい発音で退散していく見た目ロリ魔女。
さってと、まずは廊下に出したままだと通行の邪魔になるなと部屋に入れてみたものの、その魔女が持ってきたダンボール箱なのだが、異様に大きい。
人間の子供一人ならば、悠々入る事が出来るほどの大きさだ。
というかこんなにデカイ箱になにが入っているのか。いや愛玩道具なのは間違いないが、一体どんな道具なのかと言う話。
とりあえずビリビリとガムテープを剥がし、『天地無用』と大きくステッカーが貼られた箱の上部を開いてみる。
するとダンボールの中には、そこにきっちりと納まるように一回りだけ小さなダンボール箱が入っていた。
「あれか、マトリョーシカみたいに、最終的には小さなダンボールが出てくるってパターンか?」
そんな予想をしつつベリベリとガムテープを剥がして、ダンボールを明けてみる。
そこには俺の予想通りの光景が……
「広がっていた方が良かったなこりゃ」
そこにあったのは普通の配達物の用に端の空間と箱の底に、発泡スチロールの緩衝材が入ってはいたが、横向きにで膝を抱えて丸まったままダンボールにスッポリと収められた女性――しかも見た目だけならば、先ほどの魔女並みのロリっぽい幼女みたいなものが入っていた。
付け加えて申し訳なさそうなぐらいに小さな
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