俺の名前はジャッカル。
昔は冒険者として方々の遺跡を制覇し、全ての宝を根こそぎ持っていくことから、『蹂躙のジャッカル』なんて呼ばれていたんだぜ。
しかし今じゃそんな俺も、嫁さんの尻に敷かれる街道沿いにある宿屋の主人だ。
本当に人生ってのはわからないもんだぜ。
「あなた〜。あなた〜」
おっと、俺の可愛い嫁さんの声が聞こえてきた。
「どうしたんだイーベル。今日は別段用事は無かったはずだよな」
「あっ、あなたそんな所に居たの。今日は食材の買出しと細々としたものを買うから、馬車出してって言っていたでしょ!」
このぷりぷりと可愛らしく怒っているのが、俺の嫁であるイーベルだ。
ん?つるーん、ぺたーん、すとーんな幼女じゃないかって?
ちっちっち。違うんだなこれが。
イーベルは『魔女』っていう魔物なのだ。これでちゃーんと成人しているのだよ。
しかも俺より年上なんだぜ。
金の靴で探せっていう年上妻と、普通じゃ逮捕されるロリ嫁が合わさり、最強な嫁だろう?
あ、ちなみに歳のことは内緒にしろよ。本人は結構歳の事気にしてんだからな。
そんな俺と愛しいイーベルの出会いは、とある廃墟。
そこに眠るお宝を求めて侵入した俺に、そこを単身守っていたのが俺の嫁になる前のイーベル。
二人ともその時に一目惚れをして、その日のうちに恋人の関係になり、その後でじっくりと愛を育み、サバト式の結婚式を挙げて夫婦になったのだ。
いやー、あの時の新婦姿のイーベルは何時思い出しても惚れ惚れする。
後で映像を記録している魔水晶で、あの姿を見直そう、そうしよう。
「何ニヤニヤしてるの?」
「俺たちが出会ってからの事を思い出してね」
「もう、そんな事を思い出す暇があるなら、用意してよ……」
呆れたように呟いてそっぽを向いたイーベルだが、俺は知っているのだ、これは恥ずかしい彼女の照れ隠しの動作だという事を。
その証拠に耳元までが真っ赤っ赤になっている。
本当にこんな可愛らしい嫁をもらえて、俺は大陸一の幸せ者だな。うん。
「で、今日は何を買うんだ?」
「もう、何であなたはそんなに切り替えが早いのかなぁ……」
ぶつぶつと文句を言うイーベルをなだめながら、二人で街へ買い物へ行くぜ。
もちろん馬車の上でも街中でも、手を恋人繋ぎにして俺たちのラブラブっぷりを周りにアピールする事は忘れずにな!
――キングクリムゾン。時は吹き飛び、結果だけが残る!
ああ、今日も良く働いたな……って、客は居ないんだがな。
つーかあの勘違い勇者野郎、俺の宿に来るなり人の嫁に向かって、『魔女め!』て叫んで剣なんぞ抜きやがって。
いや確かに俺の嫁は魔女ですよ。
ですけどね、人様に行き成り剣を突きつけられるような、そんな悪女じゃねーっつーの。
そんで人の嫁を貶しやがってムカついたから、ついついぐうの音も出ないほどに蛸殴りにして、たまたま目に入ったたんまり金の入った財布と金になりそうな装備品を全て奪って、ついでに嫁が所属するサバトに転移ゲート使って放り込んじちまったじゃねーか。
サバトに居る未婚の魔女からお礼の手紙が来るだろうが、これでまた俺の宿に悪評が出回って、そんで客の入りが悪くなるんだぜ。やってられねーよな。
「こういうイライラした時は、腹に何か入れるに限る!」
「そう言うと思って、特性のシチュー用意したよ」
「おお!流石だ俺の嫁!」
ふわりと優しく良い匂いのする俺の嫁のシチューは、保存の魔法が掛けられた魔女の大鍋で作られる、野菜と肉のバランスの良い見た目も味も最高のシチューだ。
おっと、色眼鏡じゃないぜ。
このシチューは、この宿屋の客寄せになっているほどに、物凄く美味い。
それこそ用事が無いのに月一で泊まりに来る客や、このシチュー目当てにここで夕食を食べてから、危険を冒して夜道を歩いて帰る奴までいるほどだ。
「はぐはぐはぐ……うめぇー!やっぱりイーベルのシチューは最高だな!」
「そんなに慌てて食べなくても、まだまだあるから大丈夫だよ」
最高に可愛いだけでは無く、気立ても良くて美味い飯を作れる年上ロリ妻。
はー、俺って本当に大陸一の幸せ者だよな……。
「って、イーベルさん何時の間に、俺の膝の上に座っていらっしゃってますか?」
「いいでしょ。偶には」
まあ大して重くもないし、むしろ幸せな重みなので、普段からドンドン座って欲しいぐらいなんですけどね。
でも俺の嫁が膝の上に座るのは、何か欲しい物があった時か、それでなけりゃ……。
「今日は助けてくれて有難う。惚れ直しちゃったな、おにいちゃん♪」
こうやってデレた時だけなんだよね〜。
しかも『おにいちゃん』って、イーベルが極度にデレないと出てこない単語なん
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