ケース02:悪魔化+αの場合(前編)

最近は、サキュバスの間で「夫魔物化」というトレンドが流行っている。
具体的に何かというと、インキュバスの夫をただ魔力を有する人間だけではなく、ちゃんとした悪魔の角、尖った耳、羽根と尻尾を持たせることだ。これで正真正銘のインキュバスになって立派な魔物夫婦になれるという。
サキュバスさんたちによると、「角と羽根の付いている夫が最高にイケメンだった」とか、「夫とお揃いになれて、尻尾が絡めるのがめちゃくちゃ嬉しい」とのことである。
そして、夫からは「角と羽根が付いてから自分がサキュバスの女房を持つイケメンという実感がグッとくる」や「魔物の美男子になって自信が付ける」好評していると、「角はシャンプーや寝る時はめんどくさい」や「尻尾は服の中に締まりにくい」など、ごく一部だが不評の声もあるようだ。
それに対し、レスカティエの高級洋服屋も段々、悪魔化したインキュバスに適した紳士服を売り出していた。
ちなみに魔王陛下やる気満々だけど、魔王王配殿下はそれに興味がないらしい。
しかしこのトレンドは実際、どこから流行っていたのだろう?
反魔物領、聖ケルビアの街。
一人の少年が当地の冒険者ギルド、「ケルビア・クエスト」へ向かっている。
扉を入った瞬間、彼はギルド中の全ての人に注目される。
「ほら、ロシヤ、見ろ。噂の天才少年だぜ」
「うわっ、ちっこいな、こいつ。こんなちんちくりんが冒険者をやるの?なぁ、シェリエ」
「だけど、この子すごくかわいいわ。どこかの坊っちゃまかしら。キンバリーはどう思う?」
「あたしはごめんだわ。噂によると、性格が悪いって。才能が優れても性格に難があったら、なぁ、ロシヤ」
戦士のロシヤ、魔法使いのシェリエと、アーチャーのキンバリーは、こそこそと少年の噂を語っていた。
彼は、クリス・オーピスと言い、この地域随一の天才少年である。
10歳で当地の魔法学校を卒業し、12歳ですでに校長すら実力を上回り、そして2年後の今、聖ケルビアの魔法学院さえも卒業し、魔法使いの超新星とも言われる。
彼は、炎の扱いが長けていて、そして独自の格闘術も合わせて、優れた戦闘センスを持つものである。人呼び「炎のクリス」という少年。
とはいえ、格闘の稽古を怠けた故体付きは細く、肌も白くて大変華奢である。顔もまだ幼くて、稀代な美少年である。
同時に、魔物娘の大好物である。
「こんにちは、お姉さん。僕はギルドに参加したいんだ。登録をお願いね。」
受付嬢はクリスの制服を見て、軽く驚いた。
名門魔法学院の生徒が、宮廷魔術師ではなく、ギルドに身を投じるとは。
しかし、あまりにも幼く見える故、もしかして落ちこぼれで学校から追い出されたのかもしれない。
「あの...君、おいくつ?」
「僕は今14。飛び級で卒業したんだ。」
クリスは、自分の卒業証明書を受付嬢に見せた。
彼女は、驚きの表情を隠せず、目の前にある子供の才能に驚愕した。
「ええと、クリスくんは確かに強いけど、しかしギルドの最低年齢は16ですので、申し訳ないけどあと二年でまた...」
クリスは、意地悪な笑みを浮かべた。
「さっきから、お姉さんが僕のことを舐めているかな?僕がチビだから?」
「いえ、そんなことは...」
「えーとね、確かに、このギルドは最近財政難をしているよね。依頼を受ける人もなければ頼む者も来ないし、みんな隣にあるギルドに行ったことも。僕は今、こことあそこを迷っているが、どーしよーかな?」
この人を食う言動からわかるが、この少年の性格は、狡猾で極度な自信家であり、むしろ少しナルシストなところもある。
「しかし...ギルドマスターが決めたルールなんですから...私も...」
「もし僕を追い出したら、この推薦状を書いた人はどう思うでしょうね?お姉さん」
受付嬢は、卒業証明書の下にある推薦状に気付き、取り出すや否や、なんとその推薦状はギルドマスター本人が書いたものだった。
「ギルドマスター自らの推薦状!?失礼しました!すぐ手配いたします!」
聖ケルビアは、今二つの冒険者ギルドが争っている。
「ケルビア・クエスト」は古くから営業していた正統派冒険者ギルドだが、最近はある乞食のギャングにより「ベガーズ・カフェ」という格安ギルドが開業し、入会金・依頼金などが大変安くて、しかも雰囲気も評判が良く、全く新しい庶民派冒険者ギルドである。「ケルビア・クエスト」は、ギルドメンバーがなくなりつつあり、段々と経営難に陥っている。
間もなく、手続きが済んで、満足げにクエスト掲示板を見に行くクリス。
「どれどれ...あら、これ面白そう。お姉ちゃん、僕はこのクエストを。」
彼はるんるんと一つの依頼書を取って、受付嬢に渡した。
「はい、これですね。クリスくんはこれでいいんですか?もう少し難しいものを挑戦してみたら?」
「なんだ、一発でけえ
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