鬼平犯科帳
いつの世にも、悪は尽きない……
「大変だ! 魔物どもに我々主神教団特務部隊の潜入が露見したっ!」
「なんだとっ!? おのれっ、これではこの親魔物領にある幼稚園の送迎馬車を襲って、攫った子どもらに反魔物思想を教え込むという作戦が──」
どっぱああああああああんっ──!!
次の瞬間、アジトにしていた廃屋の雨戸が勢いよく吹きとばされ、武装した魔物娘たちが一斉に駆け込んできた。
「くそっ! 手が回ったっ!」
「早過ぎるだろっ!? チクショウっ!」
「これが話の都合ってやつかああっ!」
たちまち取り囲まれる男たち。
ずらりと居並ぶ魔物娘騎士。漆黒の鎧を身に纏って腰に大刀を佩き、首がポロっと外れ落ちないように専用のチョーカーを巻いた、デュラハンたちだ。
そのセンターに立つ、ショートヘアの凛々しい美少女が、剣を片手に名乗りを上げる。
「コホン、火付盗賊改方、長谷川──もといっ、魔王軍親魔物領派遣隊でああ〜るっ! おとなしく縛につけ! …………歯向かう者は、お婿さんだっ!」
「「「…………」」」
残念な子を見るような周囲の視線もなんのその。ノリノリで剣の切っ先を教団兵らに突きつける。
「くううっ、一度言ってみたかったのよね〜このセリフっ♪」
「隊長、首の繋ぎ目ずれてますよ……」
「おとなしく縛についてもお婿さんだろ……」
このあと全員三々九度ののち、嫁に連れられ市中引き回しと相成った。
銭形平次
「大変だ! 魔物どもに我々主神教団特務部隊の潜入が露見したっ!」
「なんだとっ!? おのれっ、これではこの親魔物領の貯水池に、住人を反魔物思想へと目覚めさせる聖水を投げ込むという作戦が──」
どっぱああああああああんっ──!!
次の瞬間、アジトにしていた倉庫の鉄扉が勢いよく吹きとばされ、スク水着の上から羽織を着て、腰に巻いた帯に十手を手挟んだ河童娘が、スキュラに海和尚、サハギンといった水陸両用魔物娘の捕り方たちとともになだれ込んできた。
「ちょっと水陸両用魔物娘って何っ? アタシらはゴッグか? ズゴックか?」
「スキュラどのスキュラどの、今回のテーマは時代劇だから、そういうの置いといて」
「…………アッガイ(ぼそっ)」
ひそひそ言い合う後ろも、とりあえず置いといて。
河童娘は腰を浮かした男たちをぐるりと睨みつけ、一歩前に踏み込むと、
「おうてめえらっ、こそこそ隠れて悪だくみしてんじゃねえっ! たとえ魔王様が見逃しても、あたしらの目の黒いうちは、ここの水辺に好き勝手な真似はさせねえぜっ!」
威勢よく啖呵を切り、流し目とドヤ顔で見得を切った。
「……ちっ!」
教団兵のひとりが舌を打ち、それを合図に他の連中が腰の剣に手をかける。
それに気づいた河童娘は、腰に吊るした穴あき銭を素早く抜き取ると、彼らの手首に向けて投擲した。
水切り石の速さで投げつけられたそれは、教団兵たちの手をことごとく打ち、同時に背後の捕り方たちが得物の刺又や大槌を振りかざし、一斉に襲いかかる──
……と思ったら、いきなり横から人影がとび込んできて、投げ銭を口や手足の指の間ではっしと受け止め、勢いのまま床でくるっと一回転して膝着いた姿勢で両腕を翼のように広げてポーズをきめた。
「な……っ!?」
「ま、まさか勇者かっ!?」
「いや違うっ、奴は──」
その人影はゆっくりと立ち上がり、河童娘の顔をビシッと指差すと、
「あんた何さらしとんねんっ!? ええか、一銭をムダにするもんは一銭に泣く! 小銭やからゆうてポンポン放ったりするなんて真似、たとえ魔王さんが見逃しても、ウチの目ぇの黒いうちは絶対に許せへんでぇっ!」
威勢よく啖呵を切り、流し目とドヤ顔で見得をきめた。
「…………」
「…………」
「……と、ゆうわけでコレみんなもろとくわな〜♪」
「「「空気読めこの守銭奴狸っ!!」」」
「「「緊迫感返せコノヤローッ!!」」」
ホクホク顔を浮かべる通りすがりの刑部狸に、敵味方から一斉にツッコミが入った。
水戸黄門
「大変だ! 魔物どもに我々主神教団(以下略)」
「なんだとっ!? おのれっ、これではこの親魔物領の魔物娘に変装して子どもらのお菓子を奪い取り、その罪をなすりつけるという作戦がっ──」
どっぱああああああああんっ──!!
次の瞬間、アジトにしていた廃教会のドアが勢いよく吹きとばされ、三つの小柄な人影がゆっくりと入ってきた。
ひとりはもふもふロリッこファミリア、もうひとりはセクファンシーな衣装に身を包んだお子さま魔女。
そしてその二人の間で、杖を片手に仁王立ちしているのは──
「えーいものどもひかえーい! ひかえおろー!」
「え、えっと……(ごそごそ)こ、こちらにおわす
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