「チナツのゆるふわラジオカフェテリア」、続いては更紗市のラジオネーム・ウルトラ鬼姫さんからっ!
「こんにちは! チナツさんっ!」
はいこんにちは。メッセージありがとうねっ。
「突然だけど、チナツさんはどんなタイプのオトコが好きなんだ?」
おっと、またどストレートな質問っ。
そうだね〜、そりゃイケメンとかスポーツマンとかもいいと思うけど、やっぱり付き合ってて楽しいヒトがタイプかなぁ。
「アタシ、自分では強くてたくましいオトコが好きだと思ってたんだけど、最近知り合った年下の子がなんか気になってるんだ」
ほうほう、続けたまえ……読むのあたしだけど。
「そいつはアタシよりちっちゃくて、当然背も低いし、アタシが一発殴ったらあっさり伸びちまいそうな奴なんだけど──」
って、ちょっとちょっと殴っちゃダメでしょ(笑)。
「けど、なんか夢中になったらまわりが見えないトコがあるし、アタシが目を離したらイヤな目にあうんじゃないかとかいろいろ考えて、ちょっとモヤってるんだ」
うーん、無鉄砲な後輩男子くんの世話を焼く先輩お姉さんって感じかな? でもそういうの、チナツさんめっちゃ好きだわ♪
「アタシに結構懐いてくれてるし、お節介かもだけど、今はあいつが夢中になってるコトを全力で応援して守ってやるつもり。それでアタシのこの気持ちがなんなのか、わかるような気がするんだ」
答えはもう出ているかと思うんだけど……鬼姫さん自身が納得するまで、その後輩くんに付き合ってあげたらいいんじゃないかな?
……あ、でも逆に後輩くんから、好きです、付き合ってとか真顔で言われたり真剣に告白されたりしたら、その気にさせた責任、ちゃんと取らなくちゃねっ♪
─ cerulean ─
二十四時間後の近未来。季節は夏。
「おいおまえらっ! 何やってんだっ!?」
背後からそう呼びかけると、一人を取り囲んで笑い声を上げていた少年たちはビクッと肩を強張らせ、あわてて振り返ってきた。
放課後の、ヒト気のない通学路。知り合いの家を訪ねようとした彼女がそこを通りかかったのは、たまたまだった。
「げっ」
誰ともなく漏れるつぶやき。そこから滲み出る驚きと嫌悪感。
そんな空気を物ともせず、明緑館学園の夏用女子制服を着崩した赤髪浅緑肌二本ツノの鬼娘──オーガ娘のサキは彼らの横を通り過ぎ、取り囲まれていた男子の前に立った。
まわりの少年たちより、頭ひとつ低い背丈。水筒に入った飲み残しのお茶を頭からぶっかけられたらしく、髪の毛やTシャツが濡れていた。
半眼で軽く凄んでやると、その身体を押さえつけてハーフパンツをずらそうとしていた二人はあわてて手を放し、おずおずと後ずさった。
「…………」
「大丈夫、そうだな」
歯を食いしばって見上げてくるその目に視線を合わせ、首に掛けていたスポーツタオルを投げ渡す。
「で、どう見てもイジメにしか見えねえんだが──」
そう言いながら、サキは肩越しに後ろを睨め付けた。「……おまえら、アタシが止めなかったらコイツに何する気だったんだ?」
「「「…………」」」
長身のオーガ娘にびびって、あるいはちっと舌打ちして目をそらす少年たち。だがその中の一人がハッと気づいて彼女に人差し指を突きつけ、小馬鹿にしたような口調で言い返してくる。
「あ〜っ、魔物オンナは人間のツレがいないと外に出れないんだぞ〜っ! ホウリツイハンじゃ〜ん!」
「はっ! コイツで定期的に居場所知らせたら、一人でも外出がOKってなったんだよ。ガキがアタシの心配するなんざ二万年早えってのっ!」
そうだそうだと言いかけた彼らの機先を制して振り返り、手にしたスマホを振ってニヤリと笑みを浮かべるサキ。
そばにあるマンションの集積場に置かれていたゴミ袋が、故意か元からかわからないがいくつか破られて中身が見えていた。この場でイジメがエスカレートしたら、次に彼が浴びせられるのはそれだっただろう。いや、ハーフパンツに手をかけられスマホのレンズを向けられていたから、あるいは──
「「「…………」」」
そして、そんな行為ですら「おふざけ」で済ませてしまう。だから無言で彼女に恨みがましい目を向けていた少年たちは、互いに目配せし合い、一転、白けた表情を浮かべると、
「くだんね」「遊んでただけだし」「カンケーねえし」
「カラまれた。あ〜気分わるっ」「ほっとこうぜ」「行こ行こ」
などと悪態をつきながら、踵を返して逃げ去っていった。
そもそも往来で一人を取り囲んでイジメていた時点で罪悪感なんか欠片もないし、見咎められた(止めてもらった)なんて意識もない。あるのはいきなり魔物娘に脅かされたということだけ。
明日は親を通して学校に、ないことないこと
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