12「ゆにぴょい伝説(前編)」

 「チナツのゆるふわラジオカフェテリア」、本日のテーマは今チャレンジしてること=I まずは更紗市のラジオネーム・白馬のプリンセスさんからのお便り〜っ!

「こんにちは! 初めてお便りします」

 はいこんにちは。よろしくね〜♪

「突然ですがチナツさんは、自転車に乗れますか?」

 乗れるよ〜。このスタジオに来るときも、家から駅までは自転車だし。

「実はわたし、今まで自転車に乗ることができませんでした。友だちが自転車に乗って買い物や遊びに行くのを、いつもうらやましく見送ってました」

 うーん、わたしも子どもの頃、乗れるまで結構時間かかったかなぁ。何度コケて膝擦りむいたことか……

「口の悪い友人は『アンタがガチで走ったら自転車より速いじゃん』なんて言ってくるのですが、そういう問題ではないと思います」

 ……え? い、いや、それはそれで凄いと思うけど。まあ得手不得手はヒトそれぞれだよねっ。F1パイロットでも自転車乗れないヒトがいるって聞いたこともあるし。

「ですが、他の仲間がいろいろ助けてくれて、わたしも自転車に乗れるようになりました! まだバランスが上手く取れなくてふらふらするし、ペダルもしっかり漕げないけど、みんなと一緒に自転車でお出かけできるようがんばってます」

 以前テレビで見たんだけど、バランスとペダル漕ぎをいっぺんにやろうとするからコケちゃうんだって。まずはペダルを取り外して、誰かに自転車を押してもらったりして、バランスを取ることだけを練習してみたらいいと思うよ。

 白馬のプリンセスさんのチャレンジ、応援してるねっ。がんばって!

 ではではっ、次のおたよりは〜っと──



─ centaur hunting ─

 二十四時間後の近未来。
 季節は初夏。放課後のひとコマ。

「大丈夫かしっかりしろ出尾池ぃ〜っ!」
「立てっ、立つんだ加眞瀬ぇ〜っ!」
「お前の犠牲は無駄にしないぞ立河割ぃ〜っ!」
「どっどうじでもおおおおおおおお〜っ、ぢ、ぢぎゅうぼぅえぃたいに入っでえええええ〜っ! ばっばけ化け物女をををっ! どにがぐ化け物女ををををっ! わだ、わだしじゃなぐでえええっ、誰がやるんだっでいうううううっ!」

 揃いのレザースーツを身につけ、両耳のあたりにアンテナが付いたヘルメットを被った集団が、わめき声やら泣き声やらを上げながら警官たちにずるずると引きずられるように連行されていく。
 毎度おなじみ(自称)地球防衛隊NTRの隊員たち。そんな彼らをジト目で見送り、絡まれていた三人の女生徒たちは安堵の息を継ぐ。

「二人とも、大丈夫?」

 髪をポニーテールに結った少女──文葉が、隣に立つ友人たちに問いかけた。

「……だ、大丈、夫」

 一人は水色の肌と額の一本ツノ、そして顔の真ん中にある蒼い一つ目が特徴の魔物娘、サイクロプスのホノカ。若干涙目。

「……ったく、毎度毎度だけど何考えてんだアイツらっ」

 もう一人は黒髪ツーテールの先から目玉のついた触手が生えた、生牡蠣色の肌と赤い一つ目の魔物娘、ゲイザーのナギ。ぷんすか憤慨中。
 二人は制服のスカートに着いた砂埃を払い、乱れた襟元を整えながら口々に返事して、同時に溜め息を吐いた。
 今日は文葉に誘われて駅前のスイーツ屋台に寄り道していたのだが、付近を徘徊もといパトロール中?だった連中の目にとまり、難癖つけられていたのである。
 ナギたちにとっては「またか」といった感じで怖さやうっとうしさよりも先に呆れ顔が浮かんでいたのだが、はたから見ればウ◯トラ防衛隊風のコスプレしたおっさんらが女子高生につかみかかっている以外の何物でもない。すかさず警察に通報され、手を振り上げたところで全員御用となったわけだ。

「あ〜、やっぱ永野と海老原についてきてもらった方がよかった、かも?」
「ん、まあ……」「どう、だろ……?」

 スクールリボンを留め直し、バツが悪そうに顔を見合わせる単眼娘たち。イチャモン避けには有効かもだが、女子同士の買い食いに自分たちだけ彼氏連れてくるのもいささか気が引ける。
 そして事情聴取を終えた警官たちが引き上げ、周囲が少しずつざわめき始めた。

「魔物娘への接近禁止命令出されてるのに、よく懲りずに絡みにいくよな」
「嫌な顔されただけで『向こうが先に近づいてきた! 攻撃してきた!』とか喚いてたしな。自分らの都合いいように解釈してんじゃないか?」
「まあさすがにつかまれようとしたら、抵抗するよな普通」
「ポニテの子はただの人間でしょ? 区別つけられない時点でアウトじゃん」
「ていうか、今どき某号泣氏ですか……」

 口々に言い合いながら散っていく野次馬たち。文葉は警察に通報してくれた人物──小太りで額が広い背広姿の男性に、「ありがとうございました」と頭
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