「チナツのゆるふわラジオカフェテリア」っ! 更紗市のラジオネーム・恋する瞳さんからのメッセージ!
「こんにちは、チナツさん」
は〜い、こんにちは〜。いつもメッセージありがとねー。
「実は今度、付き合っている彼氏の家にお呼ばれされて行くことになりました。これで家族公認です! 勝ったッ! 第三部完!」
ほーお、それで次回からは誰がこのチナツさんの代わりをつとめるんだ? ……って、ここで終わっちゃダメでしょが。
「で、相談なのですが、お家に行く時は学校の制服とかをちゃんと着ていった方がいいのでしょうか? 他にお土産とか、何持ってけばいいでしょうか?」
ま、まあ、私服でも失礼のない格好していったら大丈夫じゃないかな〜。恋する瞳さんは高校生みたいだし、お土産も自分で買える範囲のもので充分だと思うよ。
「それと、お家の人に『一緒にお夕飯作りましょう』とか『今日は泊まっていきなさい』とか言われたときのために、エプロンやお泊まりセットとかも持っていっといた方がいいでのしょうか? 将来のこともありますので、チナツさん、ぜひぜひ教えてください」
いやいやいや、さすがに最初からそこまで親密なこと言われるなんてないと思うんだけど──
……あ〜もしかして「そうならないかな」って、ちょっと期待しちゃったりしてる?
─ family history ─
二十四時間後の近未来。
ナギたち十七人の魔物娘が、職場体験に行く少し前の話。
「こ──これなんかどう、かな?」
撫子寮の自室でゲイザー娘ナギは、ルームメイトで幼馴染のサイクロプス娘ホノカが見ている前で、くるりとターンしてみせた。
今週の土曜日、ウチに来えへんか?
放課後、パートナーの彼方からそう誘われた。口では「あ、あーまあ来てくれってんなら行ってやらんでもない」とか言いながらナギは背中の触手を嬉しそうにうねうねさせて寮へ戻り、さっそく着ていく服をあれこれ迷って……今に至る。
「ん〜いいんじゃないかなー」
「なんだよ〜ホノカぁ、その言い方ぁ……」
いつもとは違う親友の棒読みな口調に、ゲイザー娘の顔の真ん中にある大きな一ツ目が、わかりやすく半眼になる。
しかしホノカは溜め息を吐き、同じように一ツ目をジト目にして、口を尖らせるナギを見返した。
「ナギちゃんもう十回目だよ、このやりとり」
「そ、そうか?(汗)」
まわりの床には脱ぎ散らかしたブラウスやらスカートやらワンピースやら。ホノカがナギの服選びに延々付き合わされたことがよくわかる光景だった。
「でもさぁ、やっぱちゃんとして行きたいじゃん。初めてのお呼ばれなんだしさ」
「それは、まあ、そうだけど──」
今着ているのは、襟元に紫色のリボンが結ばれたピンク色のワンピース。スカートの裾を左右に翻してつぶやくナギに、相槌を打つホノカ。
付き合っている相手の家族に紹介される……魔物娘でなくても一大イベントなのは間違いなく、現に──
「ホノカだって、こないだコースケんちにお呼ばれしたとき『おしゃれして行きたいけどサイクロプスの自分が必要以上にめかし込んで、ご両親に引かれたらどうしよう』とか、ベッドの上でゴロゴロしながらずっと迷ってたじゃん」
「そ、そうだった、っけ……?」
視線をついっとそらすホノカ。本人はさりげなくやったつもりなのだが、目が大きいのでめちゃくちゃわかりやすかった。
と、ここでナギが口角を上げてきししっと笑った。「ま、結局は余計な心配だったけどな。まさかあんな格好で帰ってくるなんて思ってもなかったし」
「なっ!?(超赤面) な、ナギちゃん、それ言わないでぇ……」
…………………………………………
……………………
…………
二週間前の日曜日──
「あなたがホノカちゃんね。はじめまして、こうちゃんの母の知世(ともよ)です。よろしくねっ」
「あうっ、は、はぃ、ほっ、ホノカでっ、こっコースケくんと、お、お付き、合い、させて、よ、よろしひゃぁうっ!?」
「ほんとに肌が水色で、目がひとつなのね……でも、かわいいっ♪」
「ひぅっ!」
いきなりゼロ距離に詰め寄られ、両頬に手を当てられる。元来ヒト見知り気味なサイクロプス娘は、瞳をぐるぐるさせながら悲鳴を上げた。
「うみゅぅうううう……っ」
「ちょっと母さん、ホノカちゃん困ってる──」
「え〜いいじゃない。家に来てくれるのずっと楽しみにしてたんだからっ」
呆れ気味にたしなめる甲介だが、そんな程度で遠慮するような性格でないことは息子である自分が嫌というほどわかっている。まあ、単眼種の彼女を怖がったりせずに受け入れてくれているのは、素直に嬉しいが……
「あ、あのっ、ほ……ホントに、私の、こと、きっ、気味悪く、ないん
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