「チナツのゆるふわラジオカフェテリア」、続いては更紗市のラジオネーム・ホワイトプリムさんからのおたより〜!
「こんにちはチナツさん。初めておたよりします」
こんにちはっ。おたよりありがとうねっ♪
「来週、学校で職場体験学習があり、私のグループは近所にある幼稚園に行くことになりました」
へえ、懐かしい……あたしも中学生の頃、行ったことあるなぁ、幼稚園の保育士さん体験。
「子どもたちが私たちに懐いてくれるのか、どんな遊びをすれば喜んでくれるのか、先生方のお邪魔にならないか、みんな今からとても心配しています……」
だ〜いじょうぶ! 子どもたちは、実習のお兄さんお姉さんが来たらすっごく喜ぶから。教室に入って五分もしないうちに、人気者になること間違いなし♪ 遊びも具体的にどんな──っていうより、子どもたちが誘ってきたら一緒に仲よく楽しめばいいと思うよ。
「それと、特技があれば披露してくださいって言われています。ちなみに私は、料理、洗濯、裁縫、掃除、接客が得意です」
…………いや、それだけできれば充分じゃない? 子どもたちにおやつとか作ってあげたらどうかな?
あと、単に体験するだけ、実習するだけって気持ちで行ったら逆に迷惑だからね。笑顔と元気! ぼーっとしてないで子どもたちにどんどん話しかけて一緒に遊ぶ! わからないことは自分で判断せず先生にちゃんと聞く! 経験者からのアドバイス♪
ホワイトプリムさ〜ん、来週の体験学習がんばってね〜っ。ほんじゃ、ここで一曲……
─ happy birthday ─
二十四時間後の近未来。
季節は六月。衣替えの頃──
「みんな〜、今日は明緑館学園の魔物娘さんたちが、はなまる幼稚園に遊びに来てくれました〜」
「「「こんにちはっ! みんなよろしくね〜っ!」」」
笑顔であいさつは基本中の基本。照れと緊張から二人ほど声がうわずっていたが、それはそれでご愛嬌。教室にいた年長組の園児たちも、「こんにちは〜っ」と元気よくあいさつを返してくれる。
前もって先生が言い含めていたのか、それとも近所で見かけたことがあるのか、人外の見た目に怖がって泣き出す子がいなかったのはありがたい。
明緑館学園に寄宿する十七人の魔物娘たちは四つのグループに分かれて、今日それぞれ図書館、水族館、ホテル、そしてここ──はなまる幼稚園で職場体験学習を行う。本来なら中等部(中学生)で実施するカリキュラムなのだが、彼女たちがこの世界に適応する手助けになれば……と、学園長自らが受け入れ先を探し出し、特別に枠を設けたのである。
もちろん、この取り組みを通して魔物娘に対する偏見を少しでも払拭したいという側面があるのは言うまでもない。今回この幼稚園での職場体験に参加しているのは、ゲイザーのナギとサイクロプスのホノカ、ヴァルキリーのルミナ、オーガのサキ、キキーモラのイツキの五名。
影で「イツキ以外は人選ミスだろ」とかなんとか囁かれているとかいないとか──
「つ、つかれたぁ……」
そうつぶやくと、教室に戻ってきた体操服姿のナギは、床にぺたんとへたり込んだ。髪の中から生えた目玉付き触手もダラけたように垂れ下がっている。
ついさっきまで、中庭で元気いっぱいな男子園児たちのヒーローごっごに(怪獣役で)付き合わされていた彼女。おざなりに相手するわけにもいかず、かといって触手で縛り上げたりして怖がらせるわけにもいかず、体力的にではなく精神的に疲労困憊。気づかれというやつだった。
子どもたちに「胸ちっちゃい」と言われたときはさすがに本気になりかけたが、ヴァルキリーのルミナがいつもの調子で割って入ってくれたおかげで、大事?には至らなかった。
……で、その当人はというと、
「ルミナおねえちゃん、おひめさまごっこしよう!」
「え? あ……いや、私はお姫さまではなく戦天使であるから、あいつらを監視する役目が──」
「ここがおしろ! おねえちゃんがおひめさま!」
「じゃあ、あたしおひめさまのおねえさん!」
「えー、あたしもおひめさまのおねえさんがいい!」
「あたしもおひめさまのおねえさんする〜!」
「あたしも〜!」
「ち──ちょっと待てっ、私にはいったい何人お姉さんがいるんだ〜っ!?」
金髪碧眼な見た目と、体操服の上から装着した白銀色の胸甲のせいで、なぜかお姫さま#F定されていた。
天界に住まうエンジェルやヴァルキリーにとっては、互いが姉であり妹である。しかし、元勇者候補生を父に、受肉した戦天使を母にもち、人界で生まれ育ったルミナにその感覚はあまりない。
余談だが、こちらの世界のとある宗教関係者に「天界とはいかなる場所なのか」と尋ねられた彼女は、次のように答えたという。
「私は実際見たことはないし、
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6 7]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録